産業チェーンの「椿本チエイン」がアグリビジネスを強化 事業譲受で生産倍増 

産業用チェーンを手がける椿本チエイン<6371>は2024年9月19日に、新設した子会社のツバキベジムーブ(福井県小浜市)を通じて、木田屋商店(千葉県浦安市)から植物工場を中心とするアグリ事業を譲り受ける。

現在、木田屋商店の支援を得て植物工場「福井美浜工場(福井県美浜町)」を建設中で、事業譲受によって関係を密にし、アグリ事業を一気に拡大することにした。

3工場と従業員を譲り受け

椿本チエインは、植物工場向け自動化システムを手がけており、これら技術を活かして建設している福井美浜工場は人工光型植物工場の次世代モデルで、2025年7月に完成する予定。

工場完成後は福井県内では最大規模となるレタスなどの葉物野菜を1日当たり2.2トン生産する。

一方、木田屋商店は江戸時代の1781年に米問屋として創業した老舗で、アグリ事業のほかに、「スーパー木田屋」などのスーパー事業や、格安弁当の「ニコ丸弁当」などの中食事業、東京都や千葉県を中心とした不動産管理の不動産事業などを展開している。

植物工場事業は2013年に小浜第1工場(福井県小浜市、生産能力1日当たり0.8トン)を建設したのが始まりで、現在は小浜第2工場(同、同0.6トン)、富士工場(静岡県富士市、同1.6トン)の3工場を保有する。

これら3工場と従業員を譲り受けるツバキベジムーブは、木田屋商店の小浜第1工場内に本社を構え、自社の植物工場でのレタスの生産のほか、提携植物工場からの農作物の仕入れや、植物工場事業者へのコンサルティングなどを行う。

生産能力は一気に2倍以上に

椿本チエインは2026年3月期を最終年とする5カ年の中期経営計画に取り組んでおり、最終年に売上高3000億~3200億円、営業利益は270億~355億円を目指している。

この目標の実現のために新規事業展開のための投資として300億~360億円の予算を設けているほか、これとは別枠で外部からの資金調達によるM&Aを含む成長投資を計画している。

今回はM&Aは、次世代のビジネス領域として掲げている「植物工場拡大」の方針に沿ったもので、生産規模は一気に、福井美浜工場の2倍以上となる1日当たり5.2トンとなる。

M&Aの貢献度は

椿本チエインの2024年3月期は、チェーン事業が好調に推移したほか、半導体不足解消に伴うモビリティ事業の持ち直しや、円安の影響などもあり、売上高は2668億1200万円(前年度比6.1%増)、営業利益は212億6200万円(同12.0%増)の増収営業増益となった。

2025年3月期は売上高 2800億円(同4.9%増)、営業利益230億円(同8.2%増)を見込む。

椿本チエインは今回のM&Aによる業績への影響は公表しておらず、どれぼどの効果があるのかは不明だが、次世代のビジネス領域として掲げている植物工場事業の拡大には、少なからずプラスとなることは間違いなさそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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