筑豊ラーメン「山小屋」のワイエスフードが米社買収 ラーメン業界にM&Aの波は広がるか

筑豊ラーメン「山小屋」を展開するワイエスフード<3358>が2024年12月に、米国とメキシコでラーメン中心のレストランチェーンを展開するTajima Holdings(カリフォルニア州)を子会社化することになった。

買収価格は15億円。年商15億円、営業利益3000万円ほどの同社にとっては、大きな買い物といえる。

ラーメン上場6社によるM&Aは、横浜家系ラーメン「町田商店」を展開するギフトホールディングス<9279>が、2019年7月に適時開示したラーメン店運営の「ラーメン天華」と、中華麺や餃子などを製造する「ケイアイケイフーズ」の子会社化以来5年ぶりとなる。

各社ともにコロナ禍の影響で落ち込んだ業績は回復傾向にあり、海外でのラーメン需要は今後拡大が見込める。コロナ禍後の成長戦略としてラーメン店によるM&Aは増えるだろうか。

ワイエスフードを上回る業績

ワイエスフードが子会社化するTajima Holdingsは、米カリフォルニア州地域で6店舗、メキシコで合弁4店舗の合計10店舗を運営している。

現地のニーズや商慣習に合わせた店舗展開を行っており、アジア人だけでなく幅広い顧客層を持つ。

2023年12月期の売上高は約17億6600万円(前年度比0.2%増)、営業利益は約3億5500万円(同11.2%減)で、売り上げ、利益ともにワイエスフードを上回る。

ラーメン上場6社が2010年以降に適時開示したM&A

次の成長戦略の柱に

ワイエスフードはコロナ禍の影響で業績が悪化したが、さまざまな対策を講じ2024年3月期は、9期振りに営業損益が黒字化した。

今後も黒字の確保が見込めることから、次の成長戦略の柱として、M&Aに踏み切り、ラーメン人気の高まりにより高い成長が見込める米国市場と、米国同様に成長が見込めるメキシコ市場に進出することにした。

2025年3月期の売上高は15億7300万円(前年度比10.6%増)、営業利益は3700万円(同3.4%増)と増収営業増益を見込む。

同社では今回のM&Aが「中長期的に業績に与える影響は大きい」とするとともに、米国進出を機に「さらに高い成長率を実現する」としている。

「一風堂」「町田商店」にM&Aの実績

ラーメン上場6社が2010年以降に適時開示したM&Aは7件で、このうち4件が買収案件で、残りの3件は譲渡案件だった。

2019年のギフトホールディングスの買収案件の前は、博多ラーメン「一風堂」を展開する力の源ホールディングス<3561>による、2018年の台湾一風堂の子会社化、2017年のインドネシアの飲食店運営会社の子会社化の2件だった。

北海道を拠点に「ラーメン山岡家」を展開する丸千代山岡家<3399>、福島を拠点にラーメン店「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス<7554>、京都を拠点に「ラーメン魁力屋」を展開する魁力屋<5891>の3社には企業買収の適時開示はなかった。

各社とも業績には回復の兆しが現れており、現決算期の業績見通しは、幸楽苑ホールディングスが3.0%の減収となるほかは、いずれも増収増益を見込んでいる。

これまでM&Aとはあまり縁がなかったラーメン上場6社だが、業績の好転に伴って、コロナ禍後の成長戦略としてM&Aを選択する可能性は小さくはなさそうだ。ワイエスフードに続くのはどこのラーメンだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一

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