ガス器具の「リンナイ」3年ぶりのM&Aで、太陽光発電事業に参入

ガスコンロなどのガス器具メーカー最大手のリンナイ<5947>が3年ぶりにM&Aに踏み切った。

同社はオーストラリアの子会社リンナイオーストラリア(ビクトリア州)を通じて、家庭用の太陽光発電システムなどを販売するオーストラリアのSmart Energy Group(ニューサウスウェールズ州)を買収した。

2026年3月期を最終年とする5カ年の中期経営計画「New ERA 2025」で掲げている事業規模拡大の目標に沿ったもので、リンナイグループとして太陽光発電事業はこれが初めて。

同社では、M&Aや資本提携などの機会逸失を避けるための機動的資金と、大規模災害を想定した復旧費用などとして、合計700億円の枠を設けており、さらなるM&Aの可能性もありそうだ。

非ガス機器事業を強化

Smart Energyは、家庭用の太陽光発電システムや蓄電池システムなどを専門に取り扱う企業で、初期費用のかからないスマートソーラーシステムを売りにしている。

同システムは、発電によって節約できた電気代からシステム代金が支払われる仕組みで、発電した電気を蓄えることのできる家庭用バッテリーを加えると、さらに電気代を削減できるとしている。

オーストラリアではカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる取り組み)の流れにより、太陽光発電が広まっており、戸建住宅への普及率は急速に高まっているという。

こうしたオーストラリアの状況を踏まえ、同社では以前から太陽光発電事業の取り込みを検討しており、今回の買収を機に、太陽光発電事業を非ガス機器事業の一つの柱として拡充する。

海外事業の成長を加速

中期経営計画「New ERA 2025」は、創業101年目となる2021年からスタートするため、この期間を新時代(New Era)と捉え、これに事業規模の拡大(Expansion)と企業体質の変革(Revolution)、社会課題解決への貢献(Advancement)の三つの目標を盛り込んだ。

「New ERA 2025」では国内の戦略商品の拡販や海外での事業成長を加速し、2026年3月期に売上高4500億円(国内2000億円、海外2500億円)、営業利益500億円を目標としている。

2024年3月期の売上高は4301億8600万円(前年度比1.2%増)、営業利益は393億6200万円(同5.0%減)の増収営業減益だったが、2025年3月期は売上高4500億円(前年度比4.6%増)、営業利益450億円(同14.3%増)と増収営業増益を見込む。

リンナイの業績推移

2025年3月期は予想、2026年3月期は計画

M&Aについては2015年に冷暖房機器の製造、販売を手がけるオーストラリアのブライビスクライメイトシステムズを、2016年にガス給湯器の製造、販売を手がけるガスターを、2021年にメキシコの業務用給湯器メーカーのインダストリアスマスを買収した。

今回のSmart Energy Groupはこれに次ぐもので、次はどのような一手となるだろうか。

リンナイの沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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