Vチューバーグループ運営の「ANYCOLOR」が企業買収に舵

Vチューバ―グループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR<5032>が、企業買収に舵を切った。

2024年6月に公表した2027年4月期を最終年とする「中期的な成長に向けた経営方針」の中で、M&Aに関する財務方針を公表。この中で「負債の活用も含めて最大500億円」のM&A枠を設けたのだ。

同社は東京証券取引所グロース市場に上場した2022年6月以降、これまでに適時開示したM&Aはなく、公表している沿革でも企業買収の実績はない。

初の適時開示M&A案件はいつになるだろうか。

ライバーの獲得や育成、収益化のシステムなどが対象

ANYCOLOR はM&Aの対象として「IPパイプライン(キャラクターなどの著作権候補)の獲得」「新しいIP(著作権)マネタイズ(収益化)機能の獲得」「IPを成長させ得る機能の獲得」の三つを上げる。

Vチューバーは、バーチャルユーチューバーのことで、ユーチューブ上でアバター(分身となるキャラクター)を利用して動画を配信する人たちを指す。

2024年8月13日には、「にじさんじ」からカフェレストラン「Speciale(すぺしゃーれ)」に勤めるという設定の「七瀬すず菜」たち5人のライバー(ライブ配信を行う人)がデビューした。

現在、ライバーは1万人ほどのオーディションから選ばれ、半年から1年半ほどの育成期間を経て、数人がデビューする。

こうした新しいライバーの獲得や育成、収益化のシステムなどに関わる企業が、今後実施されるM&Aの対象となる。

これまでに無い領域のVチューバーを増員

「中期的な成長に向けた経営方針」では、2027年4月期に売上高600億円(2024年4月期比88%増)、営業利益240億円(同94%増)を目指す。

この増収増益のための方策として、これまでに無い領域の個性豊かなVチューバーの増員をはじめ、マネジメントや企画を行う社員の増員や、スタジオへの投資などを計画している。

Vチューバー数については年平均10~15%の増加、Vチューバー一人当たり収益についても年平均10~15%の増加を目指すという。

今回の経営方針では、こうした目標を達成するための一つの施策としてM&Aを盛り込んだもので、500億円ほどとするM&A枠については、手元現預金で200億円ほどを予定しており、最大300億円の借入を見込む。

2ケタの大幅な増収営業増益を

ANYCOLOR の2024年4月期は、日本国内で活動するVチューバー数は前年度より1人増え127人となったほか、海外でも同1人増え31人となっており、同期の売上高は319億9500万円(前年度比26.3%増)、営業利益は123億6100万円(同31.4%増)となった。

2025年4月期は、Vチューバーのユニット展開を加速し、既存ユニットの成長と新規ユニットの輩出を目指すことで、売上高390億円(同21.9%増)、営業利益148億円(同19.7%増)といずれも2ケタの大幅な増収営業増益を目指す計画だ。

それでも2027年3月期の目標にはまだ開きがある。M&Aの出番は少なくなさそうだ。

ANYCOLORの業績推移

2025/4は予想、2027/4は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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