"うなぎ上りの成長"を目指す横浜ゴム、実現のための戦略とは

横浜ゴム<5101>は、米国のタイヤメーカーであるグッドイヤー(オハイオ州)が展開している鉱山用車両や建設用車両向けタイヤ(OTR=オフザロードタイヤ)を手がけるオーストラリアのグッドイヤー・アースムーバーと、日本ジャイアントタイヤ(兵庫県たつの市)を買収するとともに、米国やドイツ、ブラジル、インドネシアなど世界各国のグッドイヤーグループの生産拠点にあるOTR関連資産を取得する。

2026年12月期を最終年とする3カ年の中期経営計画「Yokohama Transformation 2026(YX2026)」の中で、成長ドライバーとして位置付けているOHT(オフハイウェイタイヤ=農業や鉱山、産業用などのタイヤ)事業の成長戦略の一つである「プログラマティックM&A」(複数の中小規模の企業を継続的に買収する手法)戦略に沿ったものだ。

今回のM&Aによって、シェアの低かった鉱山用車両や建設用車両向けタイヤを強化し、グローバル展開を加速させることで、「うなぎ上りの成長」を目指すという。

2026年12月期の目標を上方修正

取得するグッドイヤーグループのOTR事業の2023年12月期の売上高は6億7400万ドル(約1000億円)で、取得の時期は各国の競争法に基づく承認の取得が必要なため未定という。

横浜ゴムは、グッドイヤーの事業が加わることで、当初1兆1500億円としていた2026年12月期の売上高を、1兆2500億円に引き上げ、合わせて事業利益(売上高から売上原価と販管費を差し引いた額)も、当初の1300億円から1500億円に引き上げた。

これによって、2026年12月期の売上高は2023年12月期に比べ26.8%、事業利益は同51.1%それぞれ増加することになる。

横浜ゴムの業績推移

2024/12は予想、2026/12は計画

大型、超大型タイヤの商品開発力と生産力を獲得

世界のタイヤ市場は乗用車用を中心とする「消費財タイヤ」と、農業、鉱山、産業用(OHT)や、トラック・バス用の「生産財タイヤ」からなる。

消費財タイヤ市場の成長率は年2%程度とみられているのに対し、OHTの成長率は年6%と予測されている。

横浜ゴムは、OHT需要の約4割を占める農業・林業用機械向けタイヤでは1位のシェアを占めており、約25%の産業・港湾用車両向けタイヤでも2位のシェアを持つものの、約35%を占める鉱山・建築用車両向けタイヤでは、わずかなシェアしかないため、同分野を拡充することで、成長を加速させることにした。

また今回のM&Aでは、横浜ゴムが保有していない大型、超大型タイヤの商品開発力と生産力を獲得できるため、新たな顧客の開拓などが可能になるとしている。

2010年以降7件M&Aを実施

横浜ゴムが公表している沿革によると、2010年以降に実施した主なM&Aは、2015年の不二精工からタイヤビード専門会社「亀山ビード」を買収した案件を手始めに7件(今回のグッドイヤーの案件を含む)ある。

2021年に自動車や建築用のシーリング材やウレタン防水材などのハマタイト事業をスイスのSikaグループに譲渡した以外はいずれも買収案件で、M&Aによって事業を拡大してきた経緯がある。

直近の2023 年 5 月に買収したスウェーデンの農機用タイヤ大手のトレルボルグ・ホイール・システムズ(現Yokohama-TWS)とは、原材料、生産体制、物流などの分野でシナジーが現れているほか、トレルボルグの戦略を参考にして「プログラマティックM&A」を取り入れるなどの効果も生まれている。

うなぎはどこまで上ることができるだろうか。

横浜ゴムの2010年以降の主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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