【クリエイト・レストランツ・HD】次のコアブランド獲得に向けM&Aを活発化

「磯丸水産」「しゃぶ菜」「かごの屋」「あずさ珈琲」「いっちょう」など25のコアブランドを持つ外食チェーン大手のクリエイト・レストランツ・ホールディングス(HD)<3387>が、次のコアブランドとなる新業態の開発に向け、国内外のM&Aを活発化させている。

9月3日に、米国社からベーカリーレストラン事業を取得したのに続き、10月にはラーメン店「えびそば一幻」を手がける一幻フードカンパニー(札幌市)を傘下に収める予定だ。

同社はコロナ禍後の戦略として、2025年2月期を最終年とする3カ年の中期経営計画を策定し、最終年となる2025年2月期を、初年度のホップ、2年目のステップに続くジャンプの年と位置付けている。

2件のM&Aはこの方針に沿ったもので、コロナ禍で100億円を超える赤字に陥った後、回復傾向にある業績が後押しした。

2025年2月期は「創業25周年の飛躍の一年」と定めた節目の年でもある。大きなジャンプを狙って3件目のM&Aに踏み切る可能性は低くはなさそうだ。

一気にアクセルを踏み込み

クリエイト・レストランツ・HDはM&Aによって成長してきた。1999年の創業から8年目の2007年にクリエイト吉祥がグループ入りして以来、相次いで企業買収を決行。

2012年のルモンデグルメ、2013年のSFPダイニング、イートウォーク、2014年のYUNARI 、上海美食中心、2015年のKRフードサービス、アールシー・ジャパンといった具合で、次々とグループ企業を増やしていった。

ところがコロナ禍で、2021年2月期に141億8100万円もの営業赤字に陥り、M&Aにブレーキがかかった。2022年2月期は各自治体による協力金制度の下支えもあり、営業損益は黒字化したものの、コロナ禍前の2019年に、いっちょうをグループ化したあとはM&Aから遠ざかっていた。

それが、コロナ禍が落ち着いてきたタイミングで「アフターコロナを見据えたポートフォリオの見直し」を柱に据えた中期経営計画を策定。

初年度の2022年9月にベーカリー事業を展開するサンジェルマンと北海道サンジェルマンをグループ化したあと、2年ほどの間をおいて仕上げの年となる2025年2月期に一気にアクセルを踏み込んだのだ。

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ベーカリーと麺を次のコアブランドに

M&A再開の口火を切ったのは米国子会社を通じて、現地のWildflower Bread Company (アリゾナ州)からベーカリーレストラン事業(16店舗を展開)を取得した案件。

中期経営計画で掲げた「アフターコロナを見据えたポートフォリオの見直し」の方針に沿って、サンジェルマンに続けてベーカリー事業を拡充した。

また同社では北米でのM&Aによる事業基盤の拡大を成長戦略の柱の一つに据えており、今回のベーカリーレストラン事業の取得は、2019年に買収した米カリフォルニア州を中心にイタリアンレストラン19店舗を展開するIl Fornaio (America)に次ぐM&Aとなった。

この事業取得からわずか1カ月後に傘下に収めることになったのが、ラーメン店「えびそば一幻」を手がける一幻フードカンパニー(札幌市)。

同社は、甘エビのうまみと風味を凝縮したスープが特徴のラーメンを北海道や東京、台湾、香港の11店舗で提供しており、土産用ラーメンやカップ入り即席麺の販売も手がけている。

この案件は麺事業を拡充することで次のコアブランドの育成につなげるのが狙いで、今後はグループ内フランチャイズなどによるシナジーの創出に取り組むという。

両案件とも、クリエイト・レストランツ・HDの2025年2月期の業績予想には反映させていないが、少なからずプラス効果があるはずだ。

取得した米国のベーカリーレストラン事業の2023年12月期の売上高は4390万ドル(約62億7700万円)、営業利益は280万ドル(約4億円)で、一幻フードカンパニーの2024年4月期の売上高は10億5800万円(前年度比16.2%増)、営業利益は2億100万円(同14.2%増)だった。

クリエイト・レストランツ・HD は、2025年2月期に売上高1530億円(前年度比5.0%増)、営業利益93億円(同31.4%増)の増収営業増益を予想しているが、この数字はどう変わるだろうか。

新・中期経営計画でもM&Aの出番が

中期経営計画ではM&Aを活用して次のコアブランドとなる新業態の開発に積極的に取り組むほかに、ゴルフ場内レストランの新規開拓や、全国農業協同組合連合会(JA全農)との連携強化なども盛り込んである。

すでに、JA全農とは2024年1月に包括業務提携契約を結び、両グループの事業拡大に乗り出した。

これまでもJA全農が運営するレストラン、カフェ、焼肉店、総菜店などの店舗の運営体制の確立や、外食店舗での国産農畜産物の取り扱いの拡大などを進めてきたが、今後はより関係を強化し、JAグループと連携した店舗の運営や、JAグループからの食材の調達拡大、国産食材のPRなどを進める。

このほかにも人手不足への対応として、下膳用ロボットの拡充や、モバイルオーダーの拡大、電話予約でのAI(人工知能)活用などに取り組むとしている。

同社ではこうした現行の中期経営計画の達成に力を入れるとともに、新たな成長ステージに向けた2026年2月期、2027年2月期を対象とした新・中期経営計画を策定中だ。

詳細な内容は2025年4月に発表する予定だが、両年の売上高や営業利益の目標は定めており、最終年の2027年2月期には、売上高1630億円、営業利益121億円を目指すという。

売上高は2025年2月期予想比6.5%増、営業利益は30.1%増となる。この目標を達成する手段として、同社が新・中期経営計画の中にも、現中期経営計画と同様のM&Aの活用策を盛り込む公算は極めて高いと言えそうだ。

クリエイト・レストランツ・ホールディングスの業績推移

2025年2月期は予想、2026年2月期、2027年2月期は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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