「セガサミー」M&Aを活用しゲーミング事業を第3の柱に

セガサミーホールディングス<6460>が経営の第3の柱の入れ替えに乗り出した。

大型のリゾート施設フェニックス・シーガイア・リゾートを中心とするリゾート事業に代わって、スポーツベッティング(スポーツを対象にした賭け)やオンラインカジノなどのゲーミング事業の育成に力を入れる。

すでにフェニックス・シーガイア・リゾートを運営するフェニックスリゾート(宮崎市)を売却(全株式譲渡後、フェニックスが発行する種類株式を取得して20%所有)し、オンラインカジノ用コンテンツを手がけるオランダStakelogicの子会社化に踏み切った。

2025年3月期からは、セグメント(部門別)情報からリゾート事業を外し、ゲーミング事業を新たに入れる撤退ぶりだ。

セガサミーは、ゲーミング事業を経営の柱に育てるために、どのような戦略を描いているのだろうか。

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リゾート事業を大幅に縮小

セガサミーが大幅縮小の方針を打ち出したリゾート事業の2024年3月期の売上高は123億8900万円(同6.6%増)で、全売上高4678億9600万円(同20.1%増)の2.6%を占めた。

一方、利益の方は経常段階で1800万円となり、前年度の32億1700万円の赤字から黒字に転換した。

フェニックス・シーガイア・リゾートで団体客が想定以上に回復したほか、韓国・インチョンのパラダイスシティが好調に推移したことで、黒字化を達成した。

このリゾート事業の縮小に向け2024年5月に、フェニックス(2024年3月期の売上高115億6300万円、営業利益6194万円)を、米投資ファンドのフォートレスに売却した。

売却後もフェニックスの20%の議決権を保有し経営に関わるものの、主力事業の位置づけからは外れることになる。

ゲーミング分野で2社を買収

このリゾート事業に代わって主力の座に就くのがゲーミング事業で、2025年4-6月にオンラインカジノ用コンテンツを提供するStakelogicを買収し、本格参入を目指している北米のオンラインカジノ市場での競争力を一気に引き上げる作戦だ。

ゲーミング事業については、すでにオンラインカジノの運営者向けに利用者データの統合管理システムなどを手がけるGAN (英領バミューダ諸島)を2024年中に子会社化する計画で、StakelogicとGANの両社を連携させることで、北米でのゲーミング事業の立ち上げを加速する。

Stakelogicの取得価格は未定だが、企業価値約216億円をもとに算定するという。GANの取得価格は160億円ほどのため、両社を合わせると、当期利益が330億円(2024年3月期)ほどのセガサミーにとっては大きな投資となる。

スポーツベッティングは米国の多くの州で合法化されており、オンラインカジノなどについては合法化している州は7州にとどまるものの、解禁に向けた議論が進んでいるという。

こうした状況を踏まえ、米国でのスポーツベッティング市場は、2023年以降は年平均15%、オンラインカジノなどの市場は同11%で成長することが予想されており、セガサミーでは「合法化のタイミングに合わせて市場参入できれば有望な事業機会となる可能性がある」としている。

3年間で成長投資に1000億円を

セガサミーは2027年3月期を最終年とする3カ年の中期経営計画で、ゲーミング事業の業績見通しを公表している。それによると、2024年3月期に19億円だった売上高を、2027年3月期には50億円に拡大する。

一方、2024年3月期の営業損益は17億円の赤字で、2027年3月期の段階でも5億円の赤字を予想しており、この3年間では経営の第3の柱にまでは成長できない見込みだ。

セガサミーホールディングス部門別業績推移

2025年3月期、2026年3月期、2027年3月期は計画

この中期経営計画では、M&Aを含む成長投資に1000億円(GANの買収費用160億円を除く)の資金を見込んでおり、Stakelogic、GANの両社に次ぐ、ゲーミング分野の企業買収の可能性は高いと言える。

すぐに収益につながるようなM&Aであれば、ゲーミング事業の業績予想も大きく変わってくるはずだ。

同社はパチンコ機やパチスロ機などの遊技機事業と、ゲームソフトやクレーンゲーム機などのエンタテインメントコンテンツ事業が経営の2本柱。

2024年3月期は、遊技機事業が売上高1368億6200万円(前年度比44.3%増)、経常利益418億7700万円(同2.02倍)、エンタテインメントコンテンツ事業が売上高3183億4300万円(同12.4%増)、経常利益307億8100万円(同25.3%減)だった。

セガサミーでは「遊技機事業から創出されるキャッシュフローをゲーミング事業などに投資し、企業価値の向上を実現する」としている。

戦略は明確だ。次のM&Aはそれほど先のことではなさそうだ。

【セガサミーホールディングスの中期経営計画の売上高と営業利益の目標】

セガサミーホールディングスの中期経営計画の売上高と営業利益の目標

2025/3、2026/3、2027/3は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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