「プライベートクラブ」って「メンバーシップ」とは違うの!? 一部で“会員”じゃなく“社員”と呼ぶ理由は?

日本には多くのゴルフ場があり、なかには「プライベートクラブ」と呼ばれる場所が存在します。一体どのようなゴルフ場を指すのでしょうか。

多くのゴルフ場で「プライベートクラブ」の意味は薄れてきている

 最近ゴルフを始めた人にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、「プライベートクラブ」と呼ばれるゴルフ場が存在します。

なんとなく憧れる響き…「プライベートクラブ」 写真:PIXTA

なんとなく憧れる響き…「プライベートクラブ」 写真:PIXTA

 では、プライベートクラブとは一体どのようなゴルフ場を指すのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「プライベートクラブとは、誰もが気軽に利用できるパブリックコースの反対となるゴルフ場のことで、いわゆる『メンバーシップ制』と似た意味で使われています」

「プライベートクラブは、会員資格を持つメンバー同士でラウンドしたり、クラブハウスで会話を楽しんだりする『社交の場』として古くから存在していました。会員権や年会費が必要となるため、金銭的に一定の余裕がないとずっとメンバーでい続けるのは難しいですが、一人ひとりがゆったりと過ごせる環境が保障されているのが大きなメリットです」

「ただし、例外的に一般の人もそのゴルフ場のメンバーと親しい関係性にあれば、人数制限のうえでメンバーの同伴を条件にプレーすることが認められる場合もあります。その際メンバーと一緒に回る人は『ゲスト』として扱われます」

 なかには「完全会員制」としているゴルフ場もありますが、それでもメンバー同伴であれば、会員資格を有していない人でも回れる場合が大半です。近年は「同伴でなくてもメンバーからの紹介があればプレー可能」「同伴も紹介もなくてもプレー可能」の順に、運営方針の変更やインターネット予約の普及に合わせ、ラウンドできる人の門戸を段々と広げていくゴルフ場が増えてきています。

 日本のゴルフ場は大半がメンバーシップ制ですが、メンバーの同伴・紹介がなくても回れる場合は、「メンバーシップ」ではあっても「プライベートクラブ」とまではいいづらいでしょう。

 なお、日本では「クラブの仲間同士で横のつながりを大切にしていこう」という気持ちより、「会員権を購入してステータスをゲットする」という点に、メンバー資格の意義をとらえている人が多い傾向にあるようです。

名門コースがプライベート感を残している唯一の存在?

 では、本来の姿に近い「プライベートクラブ」を維持しているゴルフ場は、まだ国内に存在するのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「小金井カントリー倶楽部や霞ヶ関カンツリー倶楽部をはじめとした『関東七倶楽部』や、関西の鳴尾ゴルフ倶楽部なども含めた『9大ゴルフ倶楽部』といわれる名門コースとしても名高いコースは、どちらかといえば旧来のプライベートクラブの性格を色濃く残しています。これらのゴルフ場は社団法人制である場合が多く、メンバーのことを『会員』ではなく『社員』と呼ぶ場合もあります」

 これは社団法人の構成員を「社員」と呼ぶことに由来し、一般的に使われる「従業員」という意味の「社員」とは異なります。

「新たに社員として加入したメンバーが1年間は胸元にネームプレートを付け、他のメンバーに顔と名前を覚えてもらうところからクラブライフを始めるというしきたりがあるゴルフ場もあります。メンバー同士の横のつながりやコミュニティーの維持を非常に大切にしているため、日本のゴルフ場の中でも本来のプライベートクラブとしての性格が比較的残っているといえるでしょう」

 関東七倶楽部や9大ゴルフ倶楽部と呼ばれるゴルフ場でも、メンバー以外の人がラウンドすることは認められている場合が多いです。しかしメンバーの同伴が必須であったりプレー料金も3万円台からだったりと、ハードルはそれなりに高くなっています。

 メンバーでなくても行けるゴルフ場が増えることは、多くのゴルファーにとって喜ばしいことです。しかし従来のメンバーの安心感やステータス性を維持するためには、本来の意味での「プライベートクラブ」を守ることも必要なのかもしれません。

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