配膳ロボットや農薬散布ドローンも!? デジタル化が進むも人手不足は依然として課題 ゴルフ場の「働き方改革」は発展途上?

日本では「働き方改革」の推進が叫ばれて久しく、今年度からは運送業界や医療の現場でも適用されるようになりました。では、ゴルフ場でも働き方改革はしっかりと推し進められているのでしょうか。

ゴルフ場の仕事は体力的にも精神的にも過酷

 日本では、労働環境の抜本的な改善を図る「働き方改革」の推進が叫ばれて久しく、今年度からはトラックドライバーといった運送業界や医療の現場でも適用されることとなり、大きな話題を呼びました。

 一方で、ゴルフ場は体力的にも精神的にも過酷な現場で携わる人も多く、古くから「3K(きつい・汚い・危険)」の代表的な仕事の一つと言われてきました。

 では、ゴルフ場でも働き方改革はしっかりと推し進められているのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。

ゴルフ場では慢性的に人手が足りないという 写真:PIXTA

ゴルフ場では慢性的に人手が足りないという 写真:PIXTA

「最近はゴルフ場のスタッフが週休2日に加えて有給休暇も取れるように、ゆとりを持ったシフトを組んでいるところも段々と増えています」

「しかし、ゴルフ場は長年慢性的な人手不足に陥っていることからも分かるように、十分な働き方改革を達成できているゴルフ場は相対的に見ればまだ完全に広まっているとは言えず、通常の企業と比べると労働環境を一気に変えるのは難しいのが現状です」

「また、資格が必要ないシンプルな仕事に関してはアルバイトやシルバー人材で求人を応募していることもよくあり、フロントやキャディーマスター室でのキャディーバッグの積み下ろし作業を正社員でないスタッフに委託している場合も見受けられます」

「さらに、冬場になるとグリーンの芝が凍結するのを防ぐために表面に被せるカバーの設置や取り外しの作業を、コース管理者に代わって行うアルバイトやシルバー人材を募集しているケースもあります。特に人手が不足しているゴルフ場は、このようにして正社員のスタッフを配置すべきところに配置できるように工夫しています」

 ゴルフ場では、アルバイト社員の雇用以外にもフロントでの自動精算機の設置をはじめ、レストランでのスタッフの負担軽減を図るためタッチパネルを介したオーダーシステムや、配膳ロボットの導入など「デジタル」の側面からも人手不足への対策を取っているようです。

 その新たな一例として、コース管理における芝への農薬散布をドローンで行うケースも次第に定着しており、曲線や起伏に合わせて自動で飛ぶことで時間短縮やスタッフの負担軽減だけでなく、農薬の過剰投与も防止できるとされています。

定休日を設けているゴルフ場が増えているのはなぜ?

「ゴルフ場は年中無休」というイメージを持ちがちですが、昨今は「定休日」を設定しているところも増えたように感じる機会もあるかもしれません。そのことについて飯島氏は以下のように話します。

「特に、週明けの月曜日はほとんどの人が仕事に行くので、1週間の中でも利用者数が少ない曜日と言われています。そのため、『どうせ数組しか入らないのであれば、いっそのこと閉めてしまおう』と、月曜日を定休日にしているケースは確かに増えています。さらに、定期的にクローズすることによって、その日は一日中コース管理に充てられるので、定休日を設けるとスタッフはもちろん、コースにとってもメリットが生まれる可能性があります」

「しかし、最も稼働率が低いとされる日にラウンドをしたいというニーズも少なからずあるとともに、設備の固定費や維持費は休みであろうと変わらずかかってしまいます。そのため、なかには『完全セルフデー』としてクラブハウスの営業を休止したり、キャディーバッグの積み下ろしといった作業も全てゴルファーが自らやってもらうようにしたりしているところも多いです」
 
 ほかにも、定休日や完全セルフデーを利用してクラブハウスの老朽化した設備の更新工事をしたり、サービス向上を目的にスタッフに研修を受けさせたりしているゴルフ場もあるそうです。

 ゴルフ場は「手厚いおもてなし」を大きな売りの1つとしているため、「人」の存在が非常に重要になってきます。人手が足りていない中、適切な場所にスタッフを配置してサービス品質を良くするには、デジタル化やコストカットもどんどん推し進めて行かなければならないのかもしれません。

ジャンルで探す