ゴルフ場が「キャンセル料きっちり徴収」に舵を切った!? ビジターからの“取りっぱぐれ”を防止する秘策とは?

昨今はゴルフ場の予約が取りにくくなっており、直前キャンセルは他のゴルファーのプレー機会を奪い、ゴルフ場側には経済的損失も負わせることになります。ゴルフ場は“ドタキャン問題”にどう対処しようとしているのでしょうか。

PGMがキャンセル料の規定を10月から改訂

 ゴルフ場にとって予約のキャンセルは頭の痛い問題です。特に直前キャンセル、いわゆる“ドタキャン”です。

 これはネットで予約を取ることが当たり前になり、プレー枠を押さえることが容易になったことも影響しています。事前に同じ日にちでいくつかのコースを押さえておき、一つを残して、それ以外は直前でキャンセルする例も見られます。また、天気で雨予報が出ると、一気にキャンセルが増えてしまいます。

直前キャンセルの多さにゴルフ場は頭を抱えている 写真:AC

直前キャンセルの多さにゴルフ場は頭を抱えている 写真:AC

 特に昨今はゴルフ場の予約が取りにくくなっています。土日祝など予約が一杯で新規を断らざるを得ない状況での直前キャンセルは、プレーを希望する他のゴルファーの機会を奪うだけでなく、ゴルフ場側の経済的損失も大きくなります。ゴルフ場にとってはプレーフィー売上の減少だけでなく、来場者数に合わせて配置した人員やレストランで準備した食材などが無駄になるマイナス面も看過できません。

 ゴルフ場は“ドタキャン問題”にどう対処しようとしているのでしょうか。

 キャンセルフィーを徴収することを利用案内で明記しているゴルフ場もあります。太平洋クラブ・営業企画部担当部長の西島太一氏に聞くと、次のような回答がありました。

「御殿場コースではプレー7日前の16時以降のキャンセルは1名様につき5000円を頂戴しています。太平洋クラブ内でもコースによってキャンセルフィーの金額や対象期間は違いますが、御殿場コースはメンバーが予約するので、いろいろな事情はありますが、メンバーの方々にご理解いただいております。キャンセルフィーは10年以上前から頂いています」とのことです。

 一方、大手ゴルフ場予約サイトの担当者に聞くと「キャンセル料は取りづらいのが現状で、案内に書いてある場合もありますが、実際に取れるところは少ないでしょう」といいます。また、千葉県のパブリックゴルフ場の支配人は「キャンセルフィーを取りたいのはやまやまですが、近隣のゴルフ場が取っていないとお客様がそちらに行ってしまうので、なかなかお願いできません」と苦しい実情を明かします。

 こうした現状のなか、全国で140カ所以上のゴルフ場を保有・運営するパシフィックゴルフマネージメント(PGM)グループがこの夏、キャンセル規定の改訂を行い、対象ゴルフ場のメンバーに一斉通知しました。

 改定理由については書面で次のように訴えています。

「コロナ禍が明け、会員様からプレーのご希望が増加している中において、早期にプレーの予約を押さえていながら、プレー日の1週間前から前日までの直前にご予約をキャンセルされる方が少なくなく、会員様のご要望にお応えしかねる状況が発生しております。多くの会員様にプレーをお楽しみいただき、プレー機会の損失を減らすため、キャンセル規定を改定することにしました」

 キャンセルフィーはゴルフ場により異なりますが、一例として2組以下の場合、プレー当日含む7日前から土日祝1組当たり8000円、3組以上の場合、平日はプレー当日含む7日前から1組当たり4000円、土日祝はプレー当日含む14日前から1組当たり8000円です。ビジターは2024年10月1日、会員は25年1月1日のプレーから適用になるとのことです。

 改訂に至った経緯、事情ついて、PGM営業推進部部長の門伝正広氏は次のように説明します。

「キャンセルフィーの改定理由は書面でご案内した通りですが、キャンセルによる機会損失は予約全体のおよそ8%です。グループ全体で年間約900万人にご利用いただいているので、直前でのキャンセルは70万人以上に上ります」

 一人当たりの単価を1万円と見積もっても70億円以上の損失になります。甚だしい事例としては、10枠を押さえて実際にプレーしたのは2枠といったケースもあり、現場で個別にお願いはしているものの、そうした事例はなかなか減らないといいます。キャンセルポリシーに違反しているわけでもなければ、顧客に対してそうそう強く言えないのが実情でしょう。

 早めに多くの予約枠を押さえ、一部を残してキャンセルする行為は、コロナ禍でのゴルフブームに近年の異常気象が組み合わさって出てきた傾向のようです。こうした機会損失が常態化したことに対する、やむにやまれぬ措置というところかもしれません。

外部のキャンセル料回収システムを活用

 一番の課題はキャンセルフィーをどのように回収するか。海外のホテル等のようにデポジットやクレジットカード情報をあらかじめ押さえられればいいですが、日本ではそうした慣習は根付いていません。頻繁に来場する会員はともかく、“いちげんさん”のビジター客には請求しても無視されてしまう可能性が少なくないでしょう。

 しかし、門伝氏はDX(デジタルトランスフォーメーション)化により、そうした課題をクリアできるようになってきたといいます。

「キャンセルフィーを請求できるツールを持つシステム会社と連携しています。具体的には、予約時にお客様のお名前、携帯電話番号、予約日時等が分かっているので、キャンセルした場合、システムで自動的に請求のショートメールをお送りする方式です。支払いは電子マネーやクレジットカードでお願いすることになります」

 ショートメールはキャンセルフィーが実際に支払われるまで自動で定期的に送られるといいます。実際にどれくらいキャンセルフィーを回収できるのか、10月以降にシステムを稼働して状況を確認していくとのことです。キャンセル料の回収業務をゴルフ場が自前で行うことはスタッフの負担になりますから、代行してくれるシステムがあることはメリットが大きいでしょう。こうしたキャンセル料請求システムはホテルなどで既に導入され、徐々に広がりを見せています。

 ゴルフは個人競技ですが、同伴プレーヤー、前後のプレーヤー、ゴルフ場にも配慮しながらするスポーツです。ゴルフ場の予約についても、他のゴルファーやゴルフ場側への思いやりがあってしかるべきでしょう。キャンセルフィーを支払うのは最後の手段として、ひとりひとりの心がけで多くのゴルファーが気持ち良くプレーをスタートできるようにしたいものです。

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