2万円以上の差が出る場合も!? ゴルフ場にも続々導入される“変動するプレー料金”「ダイナミックプライシング」

ゴルフ場のプレー料金は実際には日や季節などによって微妙に調整されています。では、ゴルフ場のプレー料金はどのような仕組みで変えられているのでしょうか。

現在はかつてよりも頻繁に料金が変わっている

 現在、都心から近いゴルフ場でラウンドする際に支払うプレー料金は、おおむね1万円~2万円というのが一般的な相場かもしれません。しかし、実際は価格が10円単位で調整されていたり、同じコースでも日や季節によって微妙に異なっていたりします。

 では、ゴルフ場のプレー料金は、どのような仕組みで変えられているのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「ダイナミックプライシング」ってなんだ!? 写真:PIXTA

「ダイナミックプライシング」ってなんだ!? 写真:PIXTA

「以前は、年間を通した基準となる『ベース料金』が設定されており、大型連休など利用者が増加しやすい期間には割増価格として『ハイトップシーズン料金』が、反対に気温が最も高くなる8月や最も低くなる2月前後は利用者が減少するので、割引価格として『オフシーズン料金』が適用されていました。要するに、以前のプレー料金は時期に応じて3種類の価格を使い分けていたのです」

「しかし、近年はインターネットの普及とともに予約サイトを見ればどこが1番安いのかがひと目で分かるようになったので、ゴルファーはより安いプランを探しやすくなりました。また、平日と休日でもゴルフ場の需要は変化しますが、繁忙期ではないからといって平日も休日もベース料金のままで同じ価格だと、平日にラウンドしたいと思っているゴルファーにとってはメリットを感じにくくなってしまいます。そこで、宿泊業界や航空業界などと同じくゴルフ場でも『ダイナミックプライシング』の制度を導入し、特定の期間に関係なくニーズの多さによって料金を柔軟に変え、より収益性をアップできるようにしています」

 基本的に、ダイナミックプライシングを導入したゴルフ場ではプレー料金が、1日~数日単位で変動しますが、『人気のスタート時間』と『不人気のスタート時間』の差が大きければ、1日の中でも料金が変わる場合もあります。場合によっては日や曜日によって2万円以上の差になることもあるようです。

料金の調整は「ゴルフ場の将来」にも関わる?

 また、飯島氏は「料金の設定は、ゴルフ場の今後の運営方針にも大きく関わってくる」といいます。「最近はずっと円安の状態が続いていますが、ゴルフ業界においてもその影響は非常に大きくなっています」。

「例えば、コース管理に必要な機械が以前は数千万円で購入できたのに、今では1億円近くなっているということも決して珍しくはありません。さらに燃料費や人件費の高騰、半導体不足も相まって、コース管理費は1.5倍くらいまで上がっています」

「また、バブル期に建てられたクラブハウスは、その多くがリニューアルや大規模修繕の時期に差し掛かっていますが、木材をはじめとした資材価格の上昇や資材の加工・建築に当たる職人の手配にも難が出てきています」

「そのため、今まで以上に効率的な収益アップの方法を模索しなければ資金を調達できず、クラブハウスやコースの修繕が追いつかなくなって、『時代遅れ』とか『施設がボロボロ』といわれてしまう可能性もあるでしょう。サステナブルなゴルフ場運営という観点から見ても、ダイナミックプライシングの導入にはそれなりの意味があるのではと思います」

 なお、運営に関わる費用の増大だけでなく、クラブやボールの進化、さらにはゴルファーのトレンドの変化によっても売上や評価に違いが出てくるそうです。

 例えば、ギアの技術革新で飛距離が伸びたりコントロール性が上がったりしても、コース側に「ヤーデージが短い」「ショットバリューが少ない」といった課題があれば、ゴルファーにとっては飽きやすくつまらないコースとして敬遠されがちになるでしょう。

 プレー料金をどのように設定するかは、ゴルフ場としての総合力にもかかってくるといえるのかもしれません。

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