プレーオフ最終戦で松山英樹が“謎”の未発表ドライバーを投入! “紆余曲折”の歴代14本を振り返る

2024年のプレーオフ最終戦「ツアー選手権」で松山英樹(まつやま・ひでき)はスリクソンの未発表ドライバーを使用。あまりクラブをかえるタイプではない松山英樹ですが、これまでのキャリアを振り返るとドライバーはかなりかえています。

プロデビュー当時は小ぶりの「ZR30」

 8月29日からのPGAツアープレーオフ最終戦「ツアー選手権」で松山英樹が使ったドライバーは、同26日にR&Aのリストに登録されたばかりの新モデルです。ソールには「SRIXON ZXi LS」という表記が入っていました。R&Aのリストには4タイプのヘッドが登録されていましたが、おそらく松山が使ったのはロースピンタイプ。今年のエースドライバーだった「ZX5 MkII LS」の後継モデルでしょう。

プレーオフ最終戦でスリクソンの未発表ドライバーを実戦投入した松山英樹 写真:Getty Images

プレーオフ最終戦でスリクソンの未発表ドライバーを実戦投入した松山英樹 写真:Getty Images

 あまりクラブをかえない松山ですが、過去のドライバーを振り返ると、まったくドライバーをかえない時期と、よくドライバーをかえていた時期があることが分かります。

 松山が一躍有名になったのは、11年にアマチュアとして「マスターズ」に出場したとき。当時は08年モデルの「スリクソンZR30」を使っていました。12年に2度目のマスターズ出場を果たし、13年にプロ1年目で日本ツアーの賞金王を獲得。そして14年にPGAツアーで初優勝したときも「ZR30」でした。

 5年以上も「ZR30」を使っていましたが、16年10月から突然キャロウェイの「グレートビッグバーサ」(15年モデル)を使用。ヘッド体積は425ccから460ccになりました。同月、そのドライバーを使って「WGC HSBCチャンピオンズ」で優勝すると、「グレートビッグバーサ」は一気に注目を集めて中古ショップでは新品時よりも高くなる現象が起きました。

 17年も「グレートビッグバーサ」を使い続けて2月に「フェニックスオープン」、8月に「WGCブリヂストン招待」を制しました。

 約1年半「グレートビッグバーサ」を使っていましたが、18年5月からテーラーメイドの「M3 440」にスイッチしました。当時のPGAツアーではテーラーメイド契約のトップ選手がこぞって「M3シリーズ」を使っていました。

 ところが1カ月後の「全米オープン」ではピンの「G400 LST」を使用。同年は「M3 460」を試していた時期もあり、シーズン終盤には日本未発売のキャロウェイ「XRスピード」を使っていました。「XRスピード」はキャロウェイが欧州モデルとして発売されたドライバーで、米国・日本で発売された「XR16」と比較すると低価格帯のモデル。当時、キャロウェイの担当者も「複数のモデルをテストしていましたが、まさか使うとは思いませんでした」と驚いていました。18年は松山が最もたくさんのドライバーを使用したシーズンです。

 19年の序盤戦ではキャロウェイの「エピックフラッシュ」「エピックフラッシュ サブゼロ」を使っていましたが、シーズン途中からテーラーメイドの「M5ツアー」に落ち着き、同年は「M5ツアー」がエースでした。そして20年は「Mシリーズ」の後継になる「SIM MAX」を使っていました。

 ここまでを振り返ると、2011年から約6年間はスリクソンの「ZR30」を使い続けていたものの、2016年の後半からキャロウェイ、テーラーメイドのドライバーがエースドライバーになっていました。

「ZX5」からスリクソンに“復帰”

 しかし20年8月、約4年ぶりにスリクソンのドライバーを試合で使いました。それが「スリクソン ZX5」です。それ以降はスリクソン一筋。21年の「マスターズ」優勝も「スリクソン ZX5」です。同年の「ZOZOチャンピオンシップ」で優勝したときは、兄弟モデルの「スリクソン ZX7」でした。当時、PGAツアーで松山に帯同する宮野敏一氏に話を聞くと、次のように明かしてくれました。

「松山選手は顔、形状へのこだわりがすごく強いタイプの選手です。ドライバー選びの9割が顔と言っても過言ではありません。性能的にはロースピン系のドライバーは決して好みではありませんでした。もちろん飛距離は追求しますが、スピン量が2000回転前後になってしまうのは躊躇するタイプでした。ただ、“そのときにやりたいスイング”との兼ね合いでモデルを変えることもあります」

 22年の後半から「スリクソン ZX5 MkII LS」にスイッチすると、23年も引き続き使います。24年も「ZX5 MkII LS」でパリ五輪銅メダルを獲得し、プレーオフ初戦「フェデックス・セントジュード選手権」ではPGAツアー通算10勝目の快挙を達成しました。

 プレーオフ2戦目の「BMW選手権」を棄権して最終戦への出場も危ぶまれていたましたが、最終戦では予想外の新ドライバーを投入して4日間を戦い抜きました。

 最終戦は9位でしたが、25年シーズンを待たずに新ドライバーを実戦投入したということは、テスト段階からかなり手応えを感じていたのでしょう。今秋からはこのドライバーがエースとなりそうです。

 11年の「ZR30」から数えると、24年の「ZXi LS」は14本目となります。

2024 松山英樹の最新セッティング

1W:スリクソン プロトタイプ(シャフト/グラファイトデザイン ツアーAD DI 8 TX)
3W:テーラーメイド Qi10シリーズ(シャフト/グラファイトデザイン ツアーAD DI 9 TX)
5W:コブラ キング ラッドスピードツアー(シャフト/グラファイトデザイン ツアーAD DI 10TX)
4I-9I:スリクソン Z-フォージドII
AW、SW、LW:クリーブランドRTX4 フォージド(48度、52度、56度、60度)
パター:スコッティ・キャメロン CRAFTMAN スクエアバックSSS プロト
ボール:スリクソン Z-STAR シリーズ プロト

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