意外と説明できない!? “全英女子”の舞台「リンクス」って具体的にはどういうコース?

米女子ツアーのメジャー最終戦「AIG女子オープン(全英女子)」が、8月22日より開幕します。舞台となる「セントアンドリュース・オールドコース」はリンクスコースで知られていますが、「リンクス」とは具体的にどんなコースなのでしょうか。

本当の意味を知っている人は少ない?

 8月22日からスコットランドで行われる「AIG女子オープン(全英女子)」。開催地の「セントアンドリュース・オールドコース」は「ゴルフの聖地」と呼ばれ、リンクスコースの代表格として知られています。

「AIG全英女子オープン」に出場する渋野日向子。開催地の「セントアンドリュース・オールドコース」にて 写真:Getty Images

「AIG全英女子オープン」に出場する渋野日向子。開催地の「セントアンドリュース・オールドコース」にて 写真:Getty Images

 リンクスコースについて、なんとなくはイメージできていても、いざ「リンクスって何?」と聞かれると、正確には答えられないかもしれません。では、リンクスとは具体的にどのようなゴルフ場を指すのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「リンクスは競技ゴルフ発祥の地であるイギリス・スコットランド地方に多く見られる形態のゴルフ場に端を発しています。木々がほとんど生えておらず、全体的に開けているのが特徴です。しかし、ただ単純に『木があまりないコース』をリンクスと呼ぶのではなく、海に面していて住宅地はもちろん農地にも使えないような、荒涼とした砂地を活用したコースを指します」

「『リンク”link”』を辞書で引くと『つなぐ』と出てきますが、その名の通り内陸部と海岸沿いをつなぐように分布する干渉地帯にあるのが、由緒正しいリンクスコースということができます」

「また、日本で一般的なゴルフ場はアンジュレーションなどの一部が重機によって人工的に造成されているのに対し、リンクスは元々あった地形を最大限そのままの状態にしながら造られています。そのため、長年にわたって雨や風の浸食を受けてできた起伏に芝の種を直にまいたり、バンカーも『羊が風よけで掘った穴』という起源になるべく近い形状(ポットバンカー)をしています」

 スコットランドの沿岸部は非常に風が強いことから、風の抵抗を受けやすい高木にとっては生存が難しい環境です。リンクスには木が「全くない」わけではありませんが、基本的に「ヒース」や「ハリエニシダ」といった低木のみが生育しています。

 また、ラフには「フェスキュー」と呼ばれる独特な品種の芝が使われており、細くて長い葉は一度ボールが入り込むと、打つことはおろかボールを見つけ出すのも困難を極めるといわれています。

「セントアンドリュース・オールドコース」でもフェスキューが用いられていますが、リンクスならではの洗礼を受ける選手が後を絶たないそうです。

 ほかにも、池がほとんどない代わりに、河口に近いことからクリーク(小川)が流れているのも大きな特徴です。このように正真正銘のリンクスと呼ばれるには、いくつかの条件を満たしている必要があるのです。

日本にあるリンクスはリンクスとは呼べない?

 一方で、日本にも東京の「若洲ゴルフリンクス」のように「リンクス」と名の付いたゴルフ場がありますが、本来の定義から考えるとこれらは「正真正銘のリンクス」ではないはずです。

 では、どうして「〇〇リンクス」というゴルフ場が日本でも存在するのでしょうか。飯島氏は以下のように話します。

「国内にも、静岡県の『川奈ホテルゴルフコース』のように、海のすぐ近くに造られているゴルフ場があります。しかし、あくまでも『古いコース』に限定されており、特に開発規制が強まって以降は、沿岸のすぐ近くでゴルフ場を建設するのが難しくなりました」

「また、若洲ゴルフリンクスも元々はゴミの最終処分場として埋め立てられた土地に造られたため、周りを海に囲まれていますが、本来の意味でのリンクスとは呼べません」

「海沿いにあるゴルフ場を『リンクス』と呼ぶと聞こえが良く、おしゃれなイメージも演出できるので、なかにはリンクスではないけれども『〇〇リンクス』と名付けたゴルフ場があるのではと思います」

 宮崎県の「フェニックスカントリークラブ」も海沿いにありますが、こちらは元々防風林として植えられた松林を切り開いて造られたもの。「高木が生えている」「人の手が加えられた要素が多い」といった点から見るとリンクスとはいえず、「シーサイドコース」に分類されます。

 スコットランドには古くから「風が吹いている日こそラウンドに出るべき」という考え方があります。風の強さや向きに応じてクラブの番手や弾道の高さを柔軟に変え、自然に真正面からぶつかってプレーすることこそが、ゴルフの一番の醍醐味だとされているからです。

 リンクスをはじめとした、風が強い海沿いのコースに苦手意識を持つゴルファーも多いでしょう。しかし、一度スコアを無視してチャレンジしてみると、自然に挑むことの面白さを実感できるかもしれません。

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