火災報知設備大手の「能美防災」2022年以来3社目の企業買収を実施
火災報知設備などの大手である能美防災<6744>は、積極的なM&Aを目標に掲げた「中長期ビジョン2028」を策定した2022年以来、3件目となる企業買収に踏み切った。
同社は2024年10月1日に東北地方を拠点とする電気通信工事会社のシステムズ(仙台市)の全株式を取得し子会社化した。
これは2022年4月の大分県を拠点とする消防施設工事・保守点検会社の日昭設備工業(大分市、現・大分ノーミ)の子会社化と、2022年7月の札幌を拠点とする電気設備工事会社である坂本電設(札幌市)の子会社化に続くものだ。
「中長期ビジョン2028」では、2023年3月期から2025年3月期までの3年間に、M&Aなどからなる未来投資計画として300億円の投資枠を設けるとともに、M&Aなどの成長投資によって、最終年に売上高1330億円を目指すとしている。
同社が2024年5月に発表した2024年3月期決算では、2025年3月期の売上高は1208億円(前年度比1.9%増)を予想しており、目標(1330億円)には届かない見込み。
計画期間終了までには半年ほどしかないが、目標達成に向けた第4弾のM&Aの可能性もありそうだ。
高品質なサービスを提供
システムズは、電気通信工事のほか、消防施設工事なども手がけており、1974年の設立以来、東北地域で実績を積み、地域内では高いブランド力を持つという。2024年7月期の売上高は26億9600万円だった。
能美防災は、システムズの専門技術と信頼性を活かし、両社で高品質なサービスの提供を目指す。
システムズは2024年問題(猶予されていた時間外労働の上限規制の適用が2024年4月1日に期限を迎えたことで発生する労働力不足などの問題)や、労働人口減少による採用難などの課題を抱えており、「経営の安定化、事業拡大、雇用継続、シナジー効果などの成長戦略についての検討を進め、能美防災グループへ仲間入りすることとなった」としている。
日昭設備工業も大分県内で高い存在感と施工力を有しており、坂本電設も札幌地区で長い業歴を有する。
適時開示M&Aは1件のみ
能美防災は1916年に、大阪市内で能美商会を創立したのが始まりで、1924年に自動火災報知機による防災事業を始めた。
現在はオフィスビルをはじめ、アメニティ空間やプラント、トンネル、文化財、船舶、住宅など幅広い分野の施設に防災システムを提供している。
これまでに防火防排煙システムや、LNG(液化天然ガス)基地防災システム、コンピューター室防災システム、光LAN(構内情報通信網)を使った火災報知設備など数多くのシステムを開発してきた。
一方、M&Aに関しては実績が少ない。同社が2010年以降に適時開示したM&Aは、空港施設関連の防災設備保守点検業務などを手がけるJALテクノサービス(東京都大田区)の関東地区防災事業を取得(2010年)した1件に留まっている。
積極的なM&Aを掲げ3件の企業買収を実現した「中長期ビジョン2028」は、2028年度のありたい姿と、その実現に向けた施策をまとめたもので、2025年3月を最終年とする現計画の次のステージとなる2026年3月期から2029年3月期までの3年間では、最終年に1700億円の売り上げ目標を掲げている。
次のステージでもM&Aの出番はあるかもしれない。
文:M&A Online記者 松本亮一
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10/08 06:30
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