ハワイアンズ、シーガイア、ハウステンボス…なぜ国内大型リゾートは外資に買われるのか

1966年に開業した総合レジャー・リゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」を運営する常磐興産<9675>が米投資会社フォートレス・インベストメント・グループによるTOB(株式公開買い付け)を受け入れた。そのほかにもシーガイア、トマムなど国内の大型リゾート施設が相次いで外資に買収されている。なぜか?

外資が手を伸ばすバブル期の大型リゾート

TOBによる買い付け総額は最大で約139億円。フォートレスは2024年5月にも大型リゾートの「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(宮崎市)をセガサミーホールディングス<6460>から買収(金額非公表)したばかり。

国内では2024年7月に中国フォースングループ(復星集団、上海市)傘下の上海豫園旅游商城が2015年に取得した大型スキーリゾートの星野リゾートトマム(北海道占冠村)をYCH16(東京都港区)に約408億円で、2022年9月にはエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>が大型テーマパークのハウステンボスを香港のPAGに総額約1000億円で、それぞれ売却するなど2年ほどの間に大型案件が続いている。

こうした大型リゾート施設売却の背景にあるのは施設の老朽化だ。ハワイアンズは1990年に50億円をかけて大型屋内温浴施設「スプリングパーク」をオープンするなど大規模なリニューアルを実施した。

トマムも前身の「アルファリゾート・トマム」時代の1983年から1992年にかけて大型投資が相次いだ。ハウステンボスは1992年、シーガイアは1993年にオープンした。つまり、現在の施設は運用開始から30年以上が経過しているわけだ。

常磐興産はTOBを受け入れる理由について「施設の老朽化が進んでおり、集客の拡大・収益の最大化を実現するためには多額の設備投資が必要となることが想定されている」と説明している。

株式売却後もトマムの運営を続けている星野リゾートも、この20年余りで世界のスキーリゾートは大きな進化を遂げており、オープンから40年が経過したトマムがキャッチアップするための投資資金が必要だったため売却したと報じられた。

コロナ禍、カジノも売却の契機に

シーガイアも施設の老朽化に苦しんだ。2012年に4億円で買収したセガサミーは目玉施設だった開閉式の屋根を持つ全天候型プール「オーシャンドーム」の運用を諦め、2014年に解体を決めた。

問題は老朽化だけではない。ハウステンボスは2010年にHISが買収して以来、リニューアル投資を繰り返してきた。しかし、HISがコロナ禍で本業の旅行代理店事業が苦境に陥り、ハウステンボスを手放さざるを得なかった。ただHISの出資額は20億円で、持ち分株の売却で667億円のリターンがあったことになる。投資としては大成功だったと言えるだろう。

カジノを含む統合リゾート(IR)構想も絡んでいる。セガサミーはシーガイアでのカジノ開設に期待していたが、宮崎県がIR誘致をしなかったことや同社が韓国に開設したカジノなどのIR施設「パラダイスシティ」の経営が思わしくないことが、フォートレスへの売却を後押ししたとの見方もある。シーガイアは2023年3月期に黒字転換を果たすなど経営再建が軌道に乗っており、ここに来ての売却は不自然だったからだ。

実はハウステンボスにもIRが関係している。長崎県は2022年4月にハウステンボスの敷地内にカジノを含むIR誘致を申請したが、国は2023年12月に「資金調達の確実性を裏付ける根拠が十分ではない」と認定しなかった。PAGが高額でハウステンボスを買収した背景にはIR誘致があり、これが実現しない場合は売却に踏み切る可能性もありそうだ。もしそうなれば、ハウステンボスにとっては4度目の売却となる。

カジノ誘致の頓挫でハウステンボスが再び売却される可能性も…

カジノ誘致の頓挫でハウステンボスが再び売却される可能性も…(Photo By CarolBlog/Shutterstock.com)

文:糸永正行編集委員

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック

ジャンルで探す