【9月M＆Aサマリー】前年比38件増の115件｜外食産業でM＆A活発化

2024年9月のM＆A件数（適時開示ベース）は115件と前年の77件を大幅に上回り、9月単月では過去10年で最多となった。取引金額は案件が積み重なり、前年同月比2.27倍の7538億円まで伸びた。外食・フードサービスで例月以上に案件を重ねた。

上場企業に義務付けられている適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM＆A（グループ内再編は除く）について、M＆A Onlineが集計した。

好調の前年を上回るペースで推移

1-9月の累計件数は885件で前年同期比で138件増となり、16年ぶりに1000件の大台を越した前年を大きく上回るペースで推移している。

海外企業が絡むクロスボーダー案件も好調で、1-9月累計は165件。このうち、日系企業が外資から買収するアウトバウンドが117件（前年同期94件）で積極的に海外進出を図る日系企業の姿が浮かぶ。外資が日系企業を買収するインバウンドは48件（同49件）だった。

携帯電話販売業で再編鮮明に、物流も以前活発

金額トップは不動産開発を手がけるヒューリックが同業のレーサムをTOBで子会社化する案件。TOB（株式公開買い付け）を含む一連の買収総額は約1735億円。レーサム株を約64％所有する香港投資会社のオアシス・マネジメントにヒューリックが接触し、TOBへと発展した。

ヒューリックはリノベーション、リニューアル、用途変更などで不動産価値の向上を図るバリューアッド事業に注力。旧イトーヨーカドー鶴見店をショッピングセンター「LICOPA鶴見」として改装するなど多様な案件を手がけている。ヒューリックと異なる多様なアセットクラス（住宅、商業施設などの資産区分）に対応可能なバリューアッドのノウハウを持つレーサムを傘下に迎えて、同事業の強化を図る。

2位は米投資会社のベインキャピタルが携帯電話販売事業の大手ティーガイアにTOBを実施する案件。TOBを含む一連の取引総額は1392億円。

ティーガイアの筆頭株主、住友商事が事業ポートフォリオ見直しを行いTOBに発展。住商は人的支援などを行ってきたが、携帯電話の販売奨励金の制限、買い替えサイクルの長期化など、取り巻く経営環境が激変、企業価値向上が限定的であると判断して株式譲渡を決断した。

携帯電話販売業では昨年大きな動きがあり、3月に家電量販のノジマが伊藤忠傘下のコネクシオを子会社化、10月にはビックカメラがデンソー傘下のTDモバイルから同事業を取得。業界大手のティーガイアのTOB案件が続く形となり、業界再編の動きが改めて鮮明になった。

3位もベインが関わる。総合物流のトランコムがベインと組んでMBO（経営陣による買収）を実施する。TOBを含む一連の取引総額は約909億円。背景にあるのはドライバーの長時間労働が制限された2024年問題。ドライバー不足とそれに伴う人件費の上昇が見込まれるほか、足元では荷主自身がサプライチェーンを見直し始めており、株式非公開化を行い事業の再構築を進める道を選んだ。

物流は2024年問題を背景にM＆Aが活発に行われている。今年5月にエスライングループ本社が同様の理由でMBOを選択したほか、SGホールディングスによるC＆Fロジホールディングスの買収やロジスティードによるアルプス物流の買収など多数の案件が発表されている。

外食業界でM＆Aが活発化

9月の案件で注目されるのは外食・フードサービス。すかいらーくホールディングス、クリエイトレストランホールディングス、コメダホールディングス、ワイエスフード、鉄人化計画と続けざまに買収案件を発表。1-9月の累計は23件に到達し、早くも昨年合計の24件に迫った。

外食・フードサービスは、コロナ禍を境にM＆Aの件数も内容も大きく変化。2019年に31件、2020年に19件、2021年に18件と落ち込み、コロナ禍では大手による不採算子会社・事業売却の動きが広がった。2024年は大手による買収が活発化。事業拡大を目指した攻めの動きが鮮明になっている。

◎9月取引金額上位15案件

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