「HIS」近づくM&A再開の日 好調な業績が後押し

旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)<9603>が企業買収を再開する日が近づいてきたようだ。

同社はコロナ禍の中、業績悪化に伴って2022年に大型リゾート施設「ハウステンボス」など3社を売却し業容を縮小していたが、2023年10月期に4期ぶりに営業黒字に転換したのを機に、2026年10月期を最終年とする3カ年の中期経営計画を策定し、この中でM&Aを再開する方針を打ち出していた。

中期経営計画初年度の2024年10月期は、インバウンド(訪日旅行客)をはじめとする旅行需要の高まりに伴って、これまで2度、業績予想を上方修正しており、こうした好調な業績が新たなM&Aを後押しすることが見込まれる。

同社ではM&Aの対象として、旅行関連領域では既存事業の補完となる事業を、非旅行領域では将来性のある新しい時代の事業を検討しているという。

HISはいつどのようなM&Aを行うのだろうか。

2四半期連続で上方修正

HISの中期経営計画では、2024年10月期に売上高3500億円(前年度比39.0%増)、営業利益90億円(同6.44倍)を目標に掲げた。

同第一四半期では、「初夢フェア 2024」が好調に推移したほか、日本発海外旅行や、インバウンドが好調に推移し、ホテル事業でも客室単価の上昇などによる収益性の改善が進み、営業利益を当初より10億円多い100億円に引き上げた。

同第二四半期でも、状況は変わらず、好調さが維持されたため、2四半期連続で営業利益を10億円引き上げ、110億円とするとともに、売上高も100億円多い3600億円に引き上げた。

中期経営計画では2026年10月期に売上高4300億円、営業利益180億円を目標とするが、このままインバウンドなどの好調さが続けば、前倒し達成の可能性もあり、これに伴ってM&Aについても早めの実施が見込まれる。

候補は非旅行領域の新規分野

HISの2010年以降のM&Aを見ると、2010年に経営再建中のハウステンボスを子会社したのを手始めに、2012年に九州産業交通ホールディングスを子会社化。

2014年にはトヨタ自動車出資の第三セクターからテーマパーク「ラグーナ蒲郡」を、2016年にはカナダの旅行持ち株会社Merit Holdingsをそれぞれ取得。

2017年には一気に、台湾のホテル運営会社Green World Hotels、中国のツアーオペレーター会社Group MIKI Holdings Limited、カナダのツアーオペレーター会社Jonview Canadaの3社を子会社化し、業容を拡大した。

ところがコロナ禍で業績が悪化。2022年には電力小売子会社のHTBエナジー、ハウステンボス、バイオマス発電子会社のH.I.S.SUPER電力の3社を売却。その後ここ2年ほどはM&Aに関する動きはない。

同社はコロナ禍の中でも、新規事業への挑戦を続けており、今後も「持続的な成長のため、ポートフォリオの再構築を目指す」としている。

攻勢に転じるM&Aの第一弾は、非旅行領域の新規事業の可能性が高いといえそうだが…。

文:M&A Online記者 松本亮一

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