フォートレス買収で「スパリゾートハワイアンズ」はどう変わるか

米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループは、関連企業傘下のOntario合同会社(東京都港区)を通じて、映画「フラガール」で知られる福島県の総合レジャー・リゾート施設「スパリゾートハワイアンズ」や「ホテルハワイアンズ」「スパリゾートハワイアンズ・ゴルフコース」などを運営する常磐興産<9675>をTOB(株式公開買い付け)で子会社化する。

コロナ禍の影響などで、常磐興産の財政状態が悪化し、老朽化が進んでいるスパリゾートハワイアンズをはじめとする施設への設備投資が難しいことから、ホテル事業やゴルフ事業に数多く投資してきた実績を持つフォートレスが傘下に収め、企業価値を向上させることになった。

フォートレスによる買収後は、常磐興産の東京証券取引所への上場は廃止となるものの、社名や「スパリゾートハワイアンズ」などのブランドの変更は行わず、従業員の雇用も維持するという。「スパリゾートハワイアンズ」はどのように変わるのだろうか。

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ファミリー層に代わって若い層の取り組みに注力

フォートレスは、運用資産額が約490億ドル(約7兆188億円、2024年6月30日時点)に達する投資運用会社で、2017年12月にソフトバンクグループが子会社化したあと、2024年5月にアラブ首長国連邦の政府系ファンドのムバダラ・キャピタルの傘下に入った。

日本では、ホテル運営会社のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京都港区)や、国内最大手のゴルフ場運営会社のアコーディア・ゴルフ(東京都品川区)をはじめ、約3800件の不動産などへの投資、運営を行っている。

こうした実績を踏まえフォートレスが示した改革案は7項目に上る。まずは、「スパリゾートハワイアンズ」などの施設に大規模な投資を行い、これまでとは異なる客層に幅広くアプローチできる魅力のある施設づくりを目指すという。

併せて割引プランの料金見直しや年間パスの廃止などにより、平均単価を引き上げるほか、リストバンド決済システムを導入し、さまざまなサービスの円滑な利用を可能にし、売り上げアップや業務の効率化を進める。

また大阪の「空庭温泉」で成功を収めた、若い層に向けたイベントの企画力や SNS(インターネット上で登録者同士が交流できるサービス) での発信力を活用して、減少が見込まれるメインターゲットであるファミリー層に代わって、若い層の取り込みに力を入れる。

ゴルフコースはアコーディアが運営

「ホテルハワイアンズ」と「スパリゾートハワイアンズ・ゴルフコース」では、閑散期や繁忙期にそれぞれの需要に合った、きめ細かい価格設定とパッケージ設定を行うのをはじめ、「スパリゾートハワイアンズ・ゴルフコース」では、アコーディアが運営を受託し、ゴルフ場運営のノウハウを活用するとともに、集中購買によりコストを削減する。

「ホテルハワイアンズ」などでは、マイステイズの本社料飲チームによるメニュー開発や、集中購買により、顧客満足度と収益性の双方を改善する、といった内容だ。

こうした施策が実現すれば「スパリゾートハワイアンズ」では、しゃれた雰囲気の中、リストバンドを着けた多くの若者が行き来するようになりそうだ。

2025年3月期は上方修正

常磐興産は「スパリゾートハワイアンズ」などの「観光事業」のほか、石炭や石油などを販売する「燃料商事事業」、機械や鋳物を製造する「製造関連事業」、陸運、海運の「運輸業」、農作物の生産を行う「アグリ事業」、温泉の揚湯や給湯業を行う「その他事業」を手がけている。

コロナ禍の影響で2021年3月期に営業赤字に転落し、翌2022 年3月期も2期連増の営業赤字陥ったが、2023年3月期には営業黒字に転換し、2024年3月期も黒字を確保した。

フォートレスがTOBを発表した同じ2024年9月9日に、2025年3月期の業績予想を上方修正し、売上高を161億円(前年度比8.1%増)に、営業利益を17億4000万円(同31.5%増)に引き上げている。

常磐興産の業績推移

2025年3月期は予想

文:M&A Online記者 松本亮一

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