「三菱ケミカル」1年で3事業から撤退 今後は売却と買収が入り混じるか

化学最大手の三菱ケミカルグループ<4188>が、子会社や事業の売却を加速している。

2023年8月に医薬品カプセル製造子会社のクオリカプスの譲渡を発表したあと、同年12月にインドネシアでの高純度テレフタル酸事業を、2024年9月にはトリアセテート繊維事業を譲渡することを決めた。

事業に注力するのか撤退するのかの判断材料となる事業ポートフォリオ(事業構成)の見直しの一環で、この1年ほどの間に3件の事業を手放すことになった。

さらに2024年9月9日の、子会社である田辺三菱製薬<4508>の売却報道に対し「ファーマ事業を含めた全ての事業を対象に、グループ全体の事業ポートフォリオのあるべき姿に関して継続的に検討をしており、売却を含めたあらゆる選択肢を念頭に置いてポートフォリオ改革を推進しております」とのコメントを発表し、売却報道を否定しなかった。

その一方で、2023年2月に見直しを行った2026年3月期を最終年とする3カ年の経営方針「Forging the future 未来を拓く」では、事業ポートフォリオの見直しとともに戦略投資としてM&Aなどに2500億円を投じる計画を公表している。

今後はさらに子会社や事業の売却が進むとともに、成長加速のための買収も入り混じる可能性がありそうだ。

ベストオーナーに事業成長を託す

三菱ケミカルグループは2023年8月に、医薬品カプセルを製造する子会社のクオリカプス(奈良県大和郡山市)の全株式を、ヘルスケア関連製品のフランスのロケットに譲渡することを決めた。

2013年に医薬関連事業の強化を目的にクオリカプスを傘下に収めたが、経営方針「Forging the future 未来を拓く」に基づき、同社の成長のためには、植物由来の原材料や医薬品添加剤などの世界的メーカーであるロケットに経営を託すことが最善と判断した。

さらに同年12月には、インドネシアで高純度テレフタル酸(PTA)事業を手がけるPT Mitsubishi Chemical Indonesia(ジャカルタ)を、現地のPT Lintas Citra Pratamaに譲渡することを決めた。

また2024年9月9日には、トリアセテート繊維事業をGSIクレオス<8101>に譲渡すると発表した。同繊維は、天然パルプ由来の植物繊維を化学的に処理して生産する半合成繊維で、国内外のアパレルメーカー向けの需要の伸びが期待できるため、ベストオーナーのもとで事業を成長させていくことが最善だと判断したという。

他方、2024年8月には事業ポートフォリオ見直し一つとしてカーブアウト(事業の一部を切り出し、新会社として独立させること)の方針だった炭素事業を、生産規模を縮小するとともに、追加の合理化策を実施し、市況変動に左右されない事業構造へ転換することも決めた。

続く子会社数の減少

同経営方針では2026年3月期のグループ会社数を2022年3月期に比べ25%削減するとしている。

同社の有価証券報告書によると2022年3月期の子会社数は466社で、2024年3月期の子会社数は405社まで減少しているものの、25%減までは届いていない。

事業ポートフォリオの見直しによる子会社や事業の売却はもうしばらく続くと見てよさそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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