2024年上期の上場企業による子会社・事業売却は162件、2年連続で増加

2024年上期の上場企業による子会社・事業の売却件数(適時開示ベース)は前年同期より22件多い162件で、2年連続で増加したことが分かった。M&A Onlineが集計した。

件数は過去10年で2番目の高水準に

2015年以降の10年間では2021年上期(168件)に次ぐ2番目の件数となった。取引金額は6490億円で前年同期より2倍強に膨らんだが、2021年上期の3分の1ほどに留まり、過去10年間では4番目の水準となった。

コロナ禍の影響が薄れ、2023年同様に案件が小型化しているものの、中核事業に集中する動きが件数を押し上げたものとみられる。また、金額の上位の案件の中には譲渡先企業と共同で事業の運営や、新規事業の開発に取り組む案件なども散見された。

譲渡の対象となった子会社の業種を見ると、その他サービスが26件で最も多く、次いでIT・ソフトウエアの25件、その他金融の10件の順となった。

一方、子会社や事業を手放した企業の業種は、IT・ソフトウエア(23件)、その他サービス(17件)の順となり、対象企業の業種と上位2位までは変わらないが、3位に商社(16件)、4位に化学(12件)が入り、対象企業の業種の3位だったその他金融は5件に留まった。

対象が外国企業だったのは32件で、全体の19.7%を占めた。また買い手が外国企業であった案件は27件で、全体の16.6%だった。

金額の1位はオリックスの792億円

金額1位は帝人が電子コミック配信サイト「めちゃコミック」を運営するインフォコムの株式を売却する案件で、譲渡価格は2757億円。

米大手投資ファンドのブラックストーンが、傘下の投資ファンドであるビー・エックス・ジェイ・シー・ツー・ホールディング(東京都港区)を通じて、インフォコムをTOB(株式公開買い付け)で子会社化するため、インフォコムが実施する自社株買いに応じて全保有株を手放すことにした。

帝人は自動車部品事業が伸び悩み、医薬品事業も主力製品の特許切れなどで業績が低迷。本業との関わりが薄いインフォコムを売却し、売却益をアラミド繊維などの主力製品の強化に投入する。

金額2位はオリックスが、個人向けローンや信用保証事業などを手がけるオリックス・クレジット(東京都港区)の株式66%を、NTTドコモ(東京都千代田区)に譲渡することを決めた案件で、譲渡価格は792億円だった。

オリックスは引き続き株式の34%を所有し、新たなローン商品の共同開発や販売、両社のデータ活用、新規事業の開発・販売に向けた協業を進める。

金額の3位はNTTデータグループが、米国でデータセンター事業を展開するNTT Global Data Centers CH, LLC(デラウェア州)を、東京センチュリーの米国子会社TC Global Investments Americas LLC(TCGIA、ニューヨーク州)に譲渡した案件で、譲渡価格は693億円。東京センチュリーはNTTデータグループと共同でシカゴのデータセンター事業を運営する。

上場企業による子会社・事業の売却金額上位10件(2024年1-6月)

文:M&A Online記者 松本亮一

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