「外食・フードサービス」のM&Aが活発化、コロナ禍以降の最多更新か

外食・フードサービス業を対象とするM&Aが活発化している。9月に入り、すかいらーくホールディングス(HD)、コメダホールディングス、クリエイト・レストランツ・ホールディングスによる買収の発表が相次ぎ、今年の件数は21件(9月11日時点、適時開示ベース)となった。年内3カ月以上を残すことから、前年の年間24件を超え、2年連続でコロナ禍以降の最多を更新する見通しだ。

金額首位は日本KFCの非公開化

上場企業に義務付けられている適時開示情報をもとに、M&A Onlineが調べた。

取引金額はここまで1755億円(公表分を集計)で、2年連続で1000億円台(前年は2342億円)に乗せている。その大部分を占めるのが日本KFCホールディングスの非公開化。米投資ファンドのカーライル・グループがTOB(株式公開買い付け)などを通じて日本KFCを完全子会社化するもので、買収総額は約1340億円に上った。

外食・フードサービス業を対象とするM&Aは2018年に28件、19年に31件を数え、ピークを迎えた。ところが、コロナ禍が始まった2020年に18件、21年には13件まで落ち込み、内容的にも大手の外食企業による不採算子会社・事業の売却の動きが広がった。

その後は2022年に19件、23年には24件まで持ち直し、金額もゼンショーホールディングスが北米・英国で持ち帰りすし店を約3000店舗展開するスノーフォックス・トップコを870億で買収する大型案件があった。

※2024年9月11日時点

すかいらーく、再上場後初の買収

日本KFCを別格として、現時点で金額2位は外食大手のすかいらーくHDがうどん店チェーンの「資(すけ)さんうどん」を運営する資さん(北九州市)を買収する案件。約240億円を投じて、10月に国内投資ファンドのユニゾン・キャピタルから全株式を取得する。

すかいらーくHDとして2014年に株式を再上場後、初の買収となる。同社がMBO(経営陣による買収)で上場を廃止したのは2006年のことだった。

すかいらーくHDは「ガスト」「バーミアン」「ジョナサン」「夢庵」などのファミリーレストランをはじめ、から揚げ、とんかつ、イタリアン、飲茶などさまざまな業態で30を超えるブランドの店舗を展開する。地方ロードサイド(幹線道路の沿線)では、自社の似た店舗同士の競合を解消するため、業態転換が可能な集客力のある有力ブランドの獲得を課題としていた。

資さんうどんは1980年に北九州市で創業。福岡県を中心に九州、山口、岡山、兵庫の各県、大阪府に約70店舗を運営。2024年8月期業績見込みは売上高152億円、営業利益3億6000万円。2018年にユニゾン・キャピタルの傘下に入り、出店を加速。昨年から関西に出店を始め、今年は関東進出を予定する。

コメダ、シンガポール企業を傘下に

9月6日には、すかいらーくHDのほか、コメダHD、クリエイト・レストランツ・HDによる買収発表が重なった。

コメダHDはカフェ・タイ料理レストランを経営するシンガポール企業のプーン・リソーシズを子会社化する。買収金額は18億5400万円。株式70%を10月1日付で取得する。主力のフルサービス型喫茶店「コメダ珈琲店」の東南アジアでの展開加速につなげる狙いだ。

クリエイト、ラーメンとベーカリーを取り込み

一方、クリエイト・レストランツ・HDはラーメン店「えびそば一幻」を運営する一幻フードカンパニー(札幌市)の全株式を取得し、10月に子会社化する運びとなった。外食ブランドの強化の一環。

「えびそば一幻」の店舗(東京・新宿)

一幻は2001年設立で、甘エビのうまみと風味を凝縮したスープを特徴とする「えびそば一幻」を札幌総本店、新千歳空港店をはじめ、東京都内、台湾、香港に計11店舗展開する。

クリエイト・レストランツ・HDは今年8月には約42億円を投じて、米国でベーカリーレストラン事業の買収を発表したばかり。同社はベーカリー事業を育成中で、2022年にはJT(日本たばこ産業)傘下のサンジェルマン(横浜市)を子会社化した。

文:M&A Online

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