【アインHD】インテリア・雑貨「フランフラン」買収へ、調剤最大手が新たな一手

調剤薬局最大手のアインホールディングス(HD)が500億円を投じ、インテリア・雑貨のFrancfranc(フランフラン。東京都港区)を傘下に収める。経営の第2の柱とするリテール(小売り)事業の強化が狙いだ。アインはこれまで調剤薬局の買収を重ねてきたが、今回は舞台を変え、同社として過去最大のM&Aに踏み切った。

Francfranc、MBOで上場廃止も経験

Francfrancは商品の企画から生産、販売までをトータルに手がけるSPA(製造小売り)型で家具、キッチン雑貨、インテリア・ファッション雑貨、家電・照明などを取り扱う。都会的で洗練されたライフスタイルの提案で20~30代の女性を中心に人気を集める。2023年8月期は売上高394億円、営業利益26億円。国内152店舗、海外は香港9店舗を展開する。

アインHDはFrancfrancの全株式を8月20日に取得する予定。Francfrancには現在、国内投資ファンドの日本成長投資アライアンス(東京都港区)がおよそ60%を出資し、資本業務提携先のセブン&アイ・ホールディングスも14.9%の株式を保有する。

Francfrancは1990年にバルス(2017年から現社名)として設立。2012年に創業者の高島郁夫社長が主導してMBO(経営陣による買収)を行い、東証1部への上場を廃止。その後、セブン&アイの傘下に入り、2021年に日本成長投資アライアンスに経営権が移った。

「フランフラン」青山店(東京・南青山)

「アインズ&トルペ」との相性は?

アインHDはファーマシー事業とリテール事業を経営の両輪とする。ファーマシー事業はアイン薬局を中心とした調剤薬局を全国に1231店舗(4月末)を展開し、業界トップに立つ。

リテール事業ではコスメ(化粧品)主体のドラッグストア「アインズ&トルペ」を札幌と首都圏を中心に83店舗を展開。店頭に並ぶ商品の9割はビューティーケア、ヘアケアなどのコスメ関連で、医薬品・サニタリーから食品、日用品までを幅広く扱う一般的なドラッグストアと差別化し、若年女性の支持を集めている。

「アインズ&トルペ」と「Francfranc」は出店エリア、顧客層、価値観などの類似性がある一方、商品カテゴリーが異なるという補完関係があり、双方の強みを生かせると判断。大規模物件への共同出店なども進める方針だ。

アインHDが展開する「アインズ&トルペ」(写真は東京・新宿の店舗)

リテール事業、売上高700億円超え

アインHDの2024年4月期の売上高は3998億円で、この9割をファーマシー事業が占める。リテール事業の売上高は311億円と1割に満たないが、営業利益率は9.8%とファーマシー事業(7.4%)をしのぐ。

調剤薬局の経営をめぐっては調剤報酬と薬価の改定で収益が左右されるうえ、ドラッグストアにおける調剤併設が増え、競争が激化しており、調剤に続く事業の幹を太くすることが求められている。

今回、Francfrancが加わることで、リテール事業の売上高は700億円を超える規模となる。目標とする1000億円ラインへの道筋も次第に見えてきそうだ。

※25年3月期予想は6月上旬発表時点

調剤、M&Aをテコに全国網に

アインHDは北海道発祥で、現在も札幌市に本社を置く。1969年に臨床検査の受託を目的に設立された第一臨床検査センターを母体とする。今日に至る調剤薬局事業の礎を築いたのが現社長の大谷喜一氏で、同氏が実質的な創業者として経営を指揮してきた。

株式を店頭登録した1994年に調剤薬局名を「アイン薬局」に統一。1996年に道外初のアイン薬局を山形県米沢市に出店した。また、2002年にはドラックストアの新業態として「アインズ&トルペ」の1号店を札幌市内にオープンし、リテール事業の本格展開に着手した。

アインHDを業界トップに押し上げる原動力になったのはほかでもない積極的なM&Aだ。全国各地で調剤薬局の買収にアクセルを踏み込んだのは2000年代以降。

2002年に調剤薬局44店舗とドラッグストア12店舗を運営する今川薬局(茨城県つくば市)を合併したのを手始めに、その数は15社以上に及ぶ。現在1200店舗を超える調剤ネットワークのほぼ半数はM&Aによる。

ハイライトは2007年。埼玉県を地盤に86店舗を展開するあさひ調剤(さいたま市)を80億円で子会社化した。当時のアインHDが手がける最も規模の大きい買収だった。

その後、2015年に静岡県沼津市を本拠とするメディオ薬局(52店舗、現アインファーマシーズ)を60億円で、四国を地盤とするNPホールディングス(41店舗、現西日本ファーマシー。高松市)を56億円で子会社化した。

2016年には葵調剤(仙台市、現アインファーマシーズ)を54億円で子会社化し、一度に115店舗を取り込んだ。コロナ禍の影響が残る2022年にも約100店舗を展開するファーマシィホールディングス(現ファーマシィ、広島県福山市)をグループに収めた(買収金額は非公表)。

一方、リテール事業はどうか。2015年に資生堂傘下で「アユーラ」ブランドの化粧品を展開するアユーララボラトリーズ(東京都渋谷区)を子会社化し、2019年には別の企業からアイメイクを中心とするメイクアップブランド「DAZZSHOP」事業を取得した。

以降、M&Aから遠ざかっていたが、満を持す形で繰り出したのが今回のFrancfranc買収だったのだ。

香港オアシスとの攻防も注目

アインHDをめぐってはもう一つ、7月末に開かれる定時株主総会が関心を呼んでいる。物言う株主として知られる香港投資ファンドのオアシス・マネジメントとの激突の場になるからだ。

オアシスによるアインHD株の9.6%に上る新規保有が明らかになったのは3月初め。オアシスは持ち株比率を現在15%弱まで高め、筆頭株主になった。オアシスは4人の社外取締役選任、2人の社外取締役解任など4つの議案を株主提案し、これに反対する会社側と対立が深まっている。

アインHDの後ろ盾となっているのが2008年に資本業務提携したセブン&アイ。同社は安定株主としてアイン株の約7.8%を保有する。今後、オアシスの動き次第では調剤薬局業界の再編の火種になる可能性もあるだけに、セブン&アイの出方と合わせて、要ウオッチとなりそうだ。

◎アインホールディングスの歩み

主な出来事
1969 受託臨床検査を目的に札幌市に第一臨床検査センターを設立
1989 ドラッグストア経営のオータニから6店舗を引き継ぐ
1993 旭川市に調剤薬局「第一薬局」(現アイン薬局豊岡店)を開局
1994 株式を店頭登録
調剤薬局名を「アイン薬局」に統一
1996 山形県米沢市に道外初の調剤薬局「アイン薬局 米沢駅前店」を開局
ドラッグストアの店舗名を「アインズ」に統一
1998 臨床検査部門を譲渡
アインファーマシーズに社名変更
2002 札幌市内に新業態のコスメ&ドラッグストア「アインズ&トルペ」を出店
調剤薬局とドラッグストアの今川薬局(茨城県つくば市)と合併
2004 調剤薬局とドラッグストアのナイスドラッグ(名古屋市、現アインファーマシーズ)を子会社化
2005 調剤薬局経営のリジョイス(東京都中央区、現アインファーマシーズ)を子会社化
調剤薬局経営のリジョイス薬局(京都市、現アインファーマシーズ)を子会社化
2007 調剤薬局のタイチク(新潟市)を子会社化
調剤薬局のあさひ調剤(さいたま市)を子会社化
調剤薬局のサンウッド(富山市、現アインファーマシーズ)を子会社化
2008 セブン&アイ・ホールディングスと資本業務提携
2010 東証1部上場(2022年、東証プライム市場に移行)
2015 調剤薬局のメディオ薬局(静岡県沼津市、現アインファーマシーズ)を子会社化
持ち株会社制移行に伴い、アインホールディングスに社名変更
調剤薬局のNPホールディングス(現西日本ファーマシー、高松市)を子会社化
資生堂傘下で化粧品「アユーラ」展開のアユーララボラトリーズ(東京都渋谷区)を子会社化
2016 調剤薬局の葵調剤(仙台市、現アインファーマシーズ)を子会社化
2018 調剤薬局のコム・メディカル(新潟市)を子会社化
2019 調剤薬局の土屋薬局(現アイン信州、長野市)を子会社化
メイクアップコスメブランド「DAZZSHOP」事業を取得
2020 病院内など施設内売店運営のシダックスアイ(東京都調布市)を合併
2022 調剤薬局のファーマシィホールディングス(現ファーマシィ、広島県福山市)を子会社化
2024 8月、インテリア・雑貨のFrancfranc(東京都港区)を子会社化へ

文:M&A Online

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