日立ハイテク、米「Nabsys」子会社に がんを恐れることのない社会に向け
日立ハイテク(東京都港区)が、ヒトゲノム(ヒトの全遺伝情報)の構造多型(個人間のゲノムの違いのうち50塩基対以上の長さの変異)情報を取得する装置などを製造する米国のNabsys(ロードアイランド州)の子会社化に踏み切った。
同社は2019年にNabsysに出資し、連携して分子診断事業の拡大に取り組んできたが、傘下に収めることで同事業を一層強化し「がんを恐れることのない社会」の実現を目指すという。
ヒトゲノム構造多型情報は、がん克服にどのように役立つのだろうか。
装置の開発、生産体制を増強
がんや、原因や診断方法が解明できていない未診断疾患の研究では、ヒトゲノム構造多型解析が新しい手法として注目を集めているという。
Nabsysは、2005年にブラウン大学発の2社のスタートアップが合併し誕生した企業で、ヒトゲノム構造多型解析に必要なヒトのゲノムマップデータ(ゲノムの中の特定の塩基配列を検出し、印をつけたデータ)を取得する装置を開発している。
同社では正確で安価なゲノム構造多型解析が可能になれば、疾患の原因究明や診断法の研究が進むほか、患者のアウトカム(医師による評価ではなく、患者自身による主観的な評価や症状の訴え)の改善にもつながるとしている。
今後は日立ハイテクの傘下で、ゲノムマップデータを取得する測定装置の開発、生産体制を増強するとともに、日立ハイテクのデータ解析技術とのかけ合わせにより、がんや未診断疾患の研究を支援する。
ゲノムマップ関連事業の立ち上げを加速
日立ハイテクは1947年の設立で、2020年にTOB(株式公開買い付け)などによって日立製作所の完全子会社となり、同年に上場廃止となった。
計測、分析技術をベースに、医用分析装置、バイオ関連製品、放射線治療システム、半導体製造装置などの製造、販売を行っている。
今回のM&Aは、同社が公表している沿革によると、日立製作所の完全子会社になった2020年5月以降では、光通信システムとフォトニック集積回路を手がけるスペインのVLC Photonics, S.L.を子会社化した2020年8月以来となる。
日立ハイテクの2024年3月期の売上高は前年度比0.56%減の6704億4900万円、EBIT(税引き前利益に支払利息を足し、受取利息を引いたもの)は同17.3%減の685億1100万円と、減収減益だった。
日立ハイテクではNabsysの子会社化によって、ゲノムマップ関連事業の立ち上げを加速するとともに、「両社の持つ人財・知見・技術などを最大限に活用し、ゲノムマップ関連事業をグローバルに拡大する」としている。
Nabsysが連結対象となる2025年3月期は、増収増益に転じることはできるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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08/07 06:30
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