国産ギター「フェルナンデス」破産、ブランドを維持する手段は?

国産エレキギターメーカーのフェルナンデス(埼玉県戸田市)が7月11日までに事業を停止し、「事業の継続が不可能な状況」として破産手続きに入ったことが明らかになった。同13日に同社ホームページで経営破綻したことを公表している。国内外のギタリストに愛された老舗ブランドの倒産だけに業界に与える影響は大きい。

秀逸なコピーギターでエレキギターに参入

同社は1969年にクラッシックギターを販売する斉藤楽器として創業。1972年、フェルナンデスに社名変更してエレキギターの販売に乗り出す。当初は米国のフェンダーやギブソンといった海外メーカーのコピーギターを手がけていた。

その頃はコピーギターが横行していたが、フェルナンデスは他社製品とは一線を画した本格的な設計でギター愛好家から支持を得るようになる。プロミュージシャンでも柳ジョージや布袋寅泰、U2のジ・エッジ、キング・クリムゾンのロバート・フリップといった錚々(そうそう)たるギタリストが愛用したことで知られる。

フェルナンデスは商品企画と設計、販売を手がけていた。今でいう「ファブレス企業」であり、自社工場を持たずにカワイ楽器や東海楽器、ヘッドウェイ(現 ディバイザー)、鈴木バイオリンなどからOEM(相手先ブランド生産)供給を受けている。

東京商工リサーチによると、中古市場の拡大や競争激化で業績が悪化。2022年1月期の業績は売上高がピークだった1999年1月期の約40億円から1億6608万円にまで縮小し、2414万円の最終赤字を計上。ついに資金繰りに行き詰まった。

事業再生型M&Aが楽器ブランド存続のカギに

楽器メーカーの経営破綻は珍しいことではない。2017年に1947年創業のマリンバやビブラフォンといった鍵盤打楽器を手がける斉藤楽器製作所が破産。翌2018年に1925年創業のドラムメーカー、サカエリズム楽器が債務整理に入った。

同年にはフェルナンデスのコピー元だったギブソンが、安価な中国製ギターとの競争激化で経営破綻している。同社は2010年代前半に経営立て直しのためティアックやオンキョーといった日本の音響機器メーカーとのM&Aや資本提携で多角化を図ろうとしたが業績は回復しなかった。

こうした名門楽器ブランドの経営破綻を回避するために有効な手段はM&Aだが、2009年以降の15年間で国内楽器関連のM&Aは6件しかない。フェルナンデスの負債総額は4億3389万円と、それほど巨額ではなかった。固定客がついている名門楽器ブランドについては、M&Aによる事業再生に期待したい。

楽器関連のM&A一覧

公表日スキーム取引価額内容
2009年2月27日 株式譲渡 2億8000万円 アーティストハウスホールディングス<3716>、楽器販売のミュージックランドをMBOで譲渡
2012年11月30日 事業譲渡 5億9000万円 新星堂<7415>、楽器事業を山野楽器に譲渡
2013年2月20日 株式交換 1億500万円 バナーズ<3011>、楽器販売の日本ダブルリードと経営統合
2013年12月20日 株式譲渡 非公表 ヤマハ<7951>、米楽器・音響メーカーLine 6を買収
2022年3月15日 株式譲渡 28億900万円 ズーム<6694>、楽器・音響機器販売代理店のドイツSound-Serviceを子会社化
2022年9月12日 株式譲渡 92億5000万円 ローランド<7944>、米国の楽器メーカーDrum Workshopを子会社化

文:糸永正行編集委員

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