ティーイングエリアの「KG」「BG」ってどういう意味? 知っておきたい日本の気候と芝種の関係

2グリーンの両ベント芝化やワングリーン化が進んでいましたが、最近の異常な酷暑の影響からコウライ芝を残すゴルフ場も増えてきているといいます。

コウライグリーンはボールが転がる感触が違う

 ゴルフ歴5年以上、年間ラウンド数20~30回の知人と話しているとき、こんな話題になりました。

「ボクは今までいろんなゴルフ場でラウンドしてきましたが、コウライグリーンでプレーしたことが一度もなかったみたいです。この前、コウライグリーンでプレーしたら、タワシの上でボールを転がしているみたいでした。ベントグリーンと全然違いますね」

 コウライグリーンはコウライ芝という日本由来の芝種を使ったグリーンのことです。芝には夏芝と冬芝があり、日本の多くのゴルフ場で採用されているベントグリーンのベント芝が冬芝であるのに対し、コウライ芝は夏芝です。

年々変化する気候とゴルフ場の芝種には密接な関係がある 写真:PIXTA

年々変化する気候とゴルフ場の芝種には密接な関係がある 写真:PIXTA

 葉っぱが太いのでボールを転がしたときにザラザラするような感触があります。その感触を「タワシの上でボールを転がしているみたい」と表現したわけです。

 コウライグリーンはボールと芝生の摩擦が大きいので、上りのパットは強くヒットしないとカップに届きません。ボールは直線的に転がりますが、カップに近づいて勢いが弱まると、傾斜に沿って急激に曲がります。

 ベントグリーンのように傾斜どおりに転がるイメージではないため、プロもコウライグリーンに苦手意識を持っている選手が多いです。

 そのようなグリーンをなぜ使用しているかというと、日本の夏の暑さに強いからです。日本のゴルフは英国から伝わっていますから、同じ芝種を使いたいと当時の日本のゴルフ場関係者は考えました。ところがベント芝は西洋由来の冬芝なので、冬と春と秋は元気に育つのですが、日本の夏の暑さには耐えられませんでした。

 ゴルフ場関係者たちは悩んだ末、ベント芝の使用を諦めるケースもあれば、夏用のグリーンと冬用のグリーンを造るという苦肉の策を講じるケースもありました。これが1つのホールにグリーンが2つずつある2グリーンの由来です。1950年代ごろから1980年代ごろまで2グリーンのゴルフ場が数多く造られました。

 開場当初はメイングリーンがベント芝、サブグリーンがコウライ芝でしたが、1990年以降は品種改良によって日本の夏の暑さにも耐えられるベント芝が開発されました。それにともなって1グリーンに改造するゴルフ場や、2グリーンともベント芝に張り替えるゴルフ場が増えました。

 2つのグリーンをAG(Aグリーン)、BG(Bグリーン)と表記しているコースは両方ともベントグリーンです。BG(ベントグリーン)、KG(コウライグリーン)と表記しているコースはベントとコウライの2グリーンです。

 ですから現在は2グリーンのゴルフ場の夏用グリーンがコウライ芝とは限りません。知人は夏でも変わらぬペースでラウンドに行くゴルファーですが、偶然にも今までコウライグリーンを使用しているゴルフ場でプレーしたことがなかったようです。

コウライグリーンはスピンがほどけやすい

 パットの感触の違いだけではなく、アプローチの感触の違いも話題になりました。

「ゴルフが上手な人たちは『アプローチでスピンがほどける』といっていました。ボクは普段からスピンを利かせて止めるアプローチなんて打ちませんから、全然気になりませんでしたけど」

 これもコウライグリーンの特徴で、葉っぱが太いということは根も太いので、グリーンが硬くなります。グリーンが硬いとスピンがほどけやすくなります。

 ただ、近年はコウライグリーンのデメリットを感じさせないコンディションを実現しているゴルフ場もあります。男子トーナメント開催コースの芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)はコウライグリーンが見違えるようによくなったと評判ですし、女子トーナメント開催コースの川奈ホテルゴルフコース富士コース(静岡県)と宮崎カントリークラブ(宮崎県)もコウライグリーンをトーナメント仕様の高速グリーンに仕上げています。

 今の日本の暑さを考慮すると、コウライグリーンの使用期間を長くしてベントグリーンの使用期間を短くするコースや、両方ともベントにした2グリーンをベントとコウライに戻すコースが出てくるかもしれません。

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