ゼレンスキー氏、トランプ氏と会談 再選シナリオに備え〝綱渡り外交〟終える

【ワシントン=渡辺浩生】11月の米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が27日、ニューヨークのトランプタワーで会談した。26日に民主党候補のハリス副大統領と会談したゼレンスキー氏は、トランプ氏にもロシアの侵略に対する「戦勝計画」を説明し協力を求めた。

トランプ氏はプーチン露大統領との早期の停戦交渉による戦争終結を主張するが、ウクライナに領土の一部放棄など譲歩を強いる恐れがある。ゼレンスキー氏としては、バイデン現政権を踏襲しウクライナ支援の継続を訴えるハリス氏とは異なる「トランプ氏再選後のシナリオ」にも早急な備えを迫られた格好だ。

会談の冒頭、ゼレンスキー氏は記者団を前に、「われわれには戦争を終わらせ、ウクライナが勝利しなければならないという共通の認識がある」と強調。トランプ氏は自身がゼレンスキー氏とプーチン氏双方と「良好な関係にある」と述べ、再選すれば戦争を「すぐに解決できる」と訴えた。

終了後、ゼレンスキー氏はFOXニュースとのインタビューで、将来の交渉には「米国が指導者になる」と述べ、仲介に意欲をみせるトランプ氏への配慮をにじませた。

ゼレンスキー氏は今回、「米国の超党派支援が極めて重要」と国連総会の出席を兼ねて訪米。しかし、大統領選の激戦州、東部ペンシルベニア州にある弾薬工場を民主党のシャピロ州知事の案内で訪問し、「民主党を助ける党派的活動」と共和党のジョンソン下院議長から批判を浴びた。

トランプ氏からも、多額の支援を引き出す「地球で最も偉大なセールスマン」と揶揄(やゆ)されるなど、ゼレンスキー氏は党派対立に巻き込まれ、トランプ氏との会談も一時は実現が危ぶまれた。

訪米日程を終えたゼレンスキー氏はX(旧ツイッター)に、米側に示した戦勝計画を着実に実行し対露戦で優位に立つことが「平和への近道」と投稿。今後も大統領選をにらみながらの困難なかじ取りが求められそうだ。

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