NTTの研究開発成果の活用にM&Aが一役 NTTソノリティがBONXを子会社化
日本電信電話(NTT)<9432>子会社のNTTソノリティ(東京都新宿区)は、2023年12月に資本参加した音声コミュニケーションアプリなどを展開するBONX(東京都中央区)に追加出資し子会社化した。
NTTソノリティは、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した技術を用いて音響関連事業を行うことを目的に、NTTが2021年に設立した企業で、今回のBONXの子会社化で、建築土木や医療介護、小売流通、宿泊、飲食などの現場業務をDX(デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化する事業を拡大する。
すでに2024年4月にはNTTソノリティとBONXが共同開発したオープンイヤー型イヤホン「BONX intro knot」を発売しており、2024年内には、現場作業で利用できるコミュニケーションデバイス「BONX Stick」を投入するのをはじめ、その後もNTTソノリティの音響技術とNTTグループのさまざま知見を活用して事業を加速する予定。
NTTは研究開発の成果を社会課題の解決に役立てることを目標に掲げており、この目標達成にM&Aが一役買うことになりそうだ。
NTTのPSZ技術を活用したビジネス展開
NTTソノリティは、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した、ある音波(正相)に対し反転させた波形(逆位相)を重ねると音が消える原理を応用した「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」技術を活用して音響関連のビジネスの立ち上げに取り組んでいる。
PSZ技術を用いてBONXと共同開発した「BONX intro knot」は、耳をふさがないオープンイヤー型のイヤホンで、会話の内容が周囲に漏れることなく、耳をふさがないので周囲の音を聞くこともできる。
BONX子会社化後の第一弾となる「BONX Stick」は、詳細は不明だが現場作業者が働くあらゆる環境に対応できるコミュニケーションデバイスとなるという。
NEXCO東日本とセーフィーも参画
さらに今回のNTTソノリティの追加出資に合わせて、東日本高速道路(NEXCO東日本、東京都千代田区)と、クラウドカメラを手がけるセーフィー<4375>もBONXに出資しており、4社が持つそれぞれの経営資源を活用して現場DX事業を推進するという。
NEXCO東日本とは、同社が持つ高速道路の維持、管理、運営に関するノウハウを活用して、屋外や騒音などの現場環境に対応した問題解決のためのシステムを、セーフィーとは映像と音声を融合した機器やサービスなどを共同で開発する計画だ。
これら企業が持つ力を結集し、BONXは現場業務向けのデジタルソリューション事業で国内トップの座を目指すとともに、将来は海外にも展開する方針。
NTTは研究開発について、新しい技術の研究開発に取り組むとともに、NTTグループ企業やさまざまな分野の企業とともに、安全や防災、持続可能な開発などにかかわる問題を克服し、社会的課題の解決を目指すとしている。
今回のBONXの事例に留まらず、今後もNTTの研究開発成果の社会への還元にM&Aが関わる可能性は高そうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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