JAXAの宇宙開発ファンドが本格スタート、その先の未来は?

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙戦略基金」が本格的に動き出した。企業や大学に最大で費用の100%を補助する研究開発型ファンドで、宇宙スタートアップの成長に貢献すると期待されている。JAXAの山川宏理事長は「スタートアップとの協業ではすでに成果があがっている」と話す。今後のスタートアップ支援の展開は?

スタートアップの宇宙ビジネスに投資

JAXAは6月14日、初めてベンチャーキャピタル(VC)が組成したファンドに出資したと発表した。出資先はFrontier Innovations(東京都中央区)の「Frontier Innovations 1号投資事業有限責任組合」で、運用期間は15年間。同ファンドにはJAXAのほか三井住友銀行、三井不動産、日本政策投資銀行、三井住友海上火災保険などがLP(有限責任)出資する。JAXAは1億円の出資を予定している。

JAXAは「宇宙産業エコシステムの構築や幅広いオープンイノベーションの促進が期待できるとして出資を決めた」(石井康夫副理事長)という。

山川理事長は日本記者クラブ(東京都千代田区)の記者会見で、JAXAのファンド機能である宇宙戦略基金について「研究開発、(ロケット打ち上げ、運用などの)実施機関、(産学官や海外パートナーとの)ハブと並ぶJAXAの機能の一つ」としており、ファンド機能を駆使して国内宇宙産業の振興に力を入れていく方針を示した。

現在の宇宙スタートアップを取り巻く状況については「日本では(宇宙スタートアップが)100社ぐらいあると言われており、世界の中でも頑張っていると思う。(宇宙スタートアップに)出資する個人投資家や金融機関も多く、調達額はここ5年から10年で急成長している」と指摘する。

売り上げにつながる宇宙ビジネスを積極支援

その一方で、「お金を集めるところまでは非常にうまくいっているが、それをちゃんとした売り上げにどう繋げていくのかが問われる。JAXAのファンドも、そこを支援のポイントにしている」と、宇宙スタートアップ側に収益が上がるビジネスプランを求めた。

さらに「宇宙ビジネスは継続的な成長が重要。JAXAはスタートアップだけではなく、大企業の宇宙関連の既存技術や新規事業も重視している。スタートアップから大企業まで、日本の宇宙産業全体の規模を上げていきたい」と意欲を燃やす。

JAXAの将来像については「H2Aロケットを三菱重工業へ移管したように、民間企業でできるものはどんどんやっていただく。ただ、研究開発やロケットの打ち上げと運用、そして今年から加わったファンディング事業は、選択と集中を図りつつも残っていく」と話している。

JAXAが民間へ移管したH2Aロケット

JAXAが民間へ移管したH2Aロケット(jo9/Shutterstock.com)

宇宙戦略基金は内閣府、経済産業省、文部省、総務省が基金を拠出し、JAXAが運用する。総額1兆円規模の支援を実施し、2030年代早期に宇宙関連市場を現在の4兆円から8兆円へ倍増させるのが狙いだ。

文:糸永正行編集委員

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