終活情報ポータルサイトの「鎌倉新書」配当性向100%に 超過分はM&A活用
終活情報のポータルサイトを運営する鎌倉新書<6184>が、配当性向をこれまでの20%ほどから100%(または年20円配)に引き上げるとともに、配当後(年20円配当の場合)に発生する余剰資金をM&Aに振り向けることを決めた。
配当性向100%(または年20円配)は、2027年1月期を最終年とする3カ年の中期経営計画期間中の3年間に限定した措置で、同計画期間中に安心して投資できるように株主還元方針を見直した。
計画では2026年1月期、2027年1月期に、年20円を配当しても投資資金を確保できる見込みで、同社では「ITインフラや周辺領域事業のM&Aなどに積極的な投資を行う」としている。どんな企業を傘下に収めるのだろうか。
3年間で営業利益を3.06倍に
鎌倉新書は2025年1月期から2027年1月期までの3期の配当について、配当性向100%か、1株当たり20円のいずれか低い方を実施するとしている。
初年度の2025年1月期についてはすでに、前年度の年4円配から年20円配に引き上げることを決定し発表した。
その後の2026年1月期、2027年1月期についても、年20円配を予定しており、EPS(1株当たり純利益)が20円を超えた分の全てを、M&Aなどに振り向ける方針だ。
2025年1月期のEPSは20.4円と余剰資金が発生する余裕はないが、2026年1月期のEPSは29.8円、2027年1月期は46.6円を見込んでおり、2026年1月期は3億6000万円ほどを、2027年1月期は9億8000万円ほどをM&Aなどに投資することができる計算となる。
これまで同社は、成長戦略投資を優先し、配当性向は20%を堅持してきた。2024年1月期の現預金が19億9200万円に達しているほか、金融機関とのコミットメントライン(融資枠:12億円)も行使していないことから、配当を大幅に増やしてもM&Aなどの成長投資を継続できると判断した。
中期経営計画では顧客データベースの強化と効果的な活用を目指す「クロスユースの強化」、他社とのアライアンスによって顧客接点を強化する「集客チャネルの多様化」、終活市場の生前領域に関するサービスを拡充する「サービスの拡充」の三つを主要な取り組みとして、終活インフラを構築していく。
こうした取り組みで、最終年の2027年1月期には、売上高120億円(2024年1月期比2.04倍)、営業利益25億円(同3.06倍)、当期純利益17億2700万円(同3.25倍)を見込む。
介護分野に次ぐM&Aは
鎌倉新書が2015年の上場以来、適時開示したM&Aは1件で、2021年に1億2000万円を投じて、介護事業のエイジプラス(大阪市)から有料老人ホーム紹介・高齢者見守り事業を取得した。
これに先立つ2020年に老人ホームなど介護施設の紹介サービスに乗り出しており、介護分野でオンライン、オフライン両面で紹介プラットフォーム(基盤)を構築するのを狙いに、M&Aに踏み切った。
鎌倉新書は1984年に、仏壇仏具業界向け書籍の出版社として設立。2000年に葬儀相談依頼サイトの運用を始めたのに続き、2001年に供養業界のためのビジネス情報誌を創刊、2003年には、お墓に関するポータルサイトや仏壇・仏具に関するポータルサイトの事業を始めた。
その後も「相続手続きの無料相談」「おひとりさまのための終活サービス」「僧侶の手配サービス」などを手がけるなど供養事業から終活事業や周辺事業に業容を拡大してきた。
今後も「増え続ける社会課題に対応した新サービスを拡充していく」方針だ。次のM&Aも介護事業なのか、それとも社会課題に対応した新たな分野になるのか。3年以内に答えが出ることになる。
文:M&A Online記者 松本亮一
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