大阪は起業しやすい街「大阪産業局スタートアップ支援事業部」松出晶子次長に聞いた
大阪府の大阪産業振興機構と、大阪市の大阪市都市型産業振興センターが合併して誕生した公益財団法人大阪産業局(大阪市)は、2024年4月に設立から5年を迎えた。
大阪の中小企業の経営力強化や創業などを後押しすることで、大阪経済の発展に寄与することを目的に、これまでさまざまな事業を展開してきた。
中でもスタートアップに関しては、同局のスタートアップ支援事業部が一手に引き受け、学生向けから上場を目指す1歩手前の企業まで幅広い支援を行っている。
そこで、大阪産業局スタートアップ支援事業部の松出晶子次長に現状と将来展望をお聞きした。
経営者の意識が高まる取り組み
―どのようなスタートアップ支援策を用意されているのでしょうか
起業したい方には、起業に向けたサポートを、起業された方には、どんどんスケールアップ(成長)していくためのサポートを行っています。
学生に向けたプログラムから、シード期、アーリー期、そしてミドル期以上の方に参加いただくプログラムまで、途切れのない支援をしています。
―ミドル期の企業を対象にした取り組みは他の自治体ではあまりないようですが…
ミドル期の方を対象にしたプログラムとして、RISING! (ライジング)という取り組みがあり、これまでに5年間(5回)実施し、ユニコーン企業や、IPO(新規株式公開)を目指す経営者の方々のサポートをしてきました。
確かに、こうしたプログラムは少ないのではないでしょうか。ステージが上がってくるとVC(ベンチャーキャピタル)さんが入られますので、行政機関が支援するポイントがあまりないからです。
ただ、それでもミドル期の方も課題がたくさんありますので、我々ができるサポートをさせていただいています。
―具体的にはどのような内容ですか
RISING!では、ネットワーク作りや、先輩経営者によるメンタリング(助言)、上場を果たした経営者の方との面談などの支援を行っています。
例えば、これまでVCから資金調達をしたことがないが、これから急成長するためにVCを使って資金を調達したいという考えの方もおられます。
そういった方には、上場を果たした方がメンター(助言者)になることで、経営者の方の意識がどんどん上を向いていきます。経営者の方の意識を高めていく点でも、RISING!は重要なプログラムだと考えています。
―過去5回のRISING!について、どのように評価されていますか
参加される経営者の方の中には、同じような悩みを抱えている方がおられますので、お互いに参加者同士の悩みを共有しながら、次のステップに向けて頑張っていこうという状況になっています。
この5年間でIPOを目指されている方々のコミュニティーをきちんと作ることができたと感じています。
また、こうした経営者の方のコミュニティーができたことで、ミドル期の経営者の方に、アーリー期やシード期のスタートアップの方々に対するサポートにも関心を持っていただけるようになり、いいスタートアップエコシステム(公的機関や研究機関などが支援してスタートアップの成長を促すシステム)ができたと思っています。
プログラムを超えたネットワークを強化
―2024年6月末まで、6回目のRISING!に参加するスタートアップを募集されています。今年はこれまでとは何か違いがありますか
我々はRISING!のほかにも、いろんなスタートアップ支援プログラムを運営してきています。アーリー期であればOSAP、シード期であればSIOといったようにそれぞれのプログラムに卒業生の方がたくさんおられます。
これまでプログラム内のコミュニティーはありましたが、今年はプログラムを超えた、こうした卒業生の方々とのネットワークをさらに強めていこうと考えています。
ステージの高いところにおられる方が、若い方のサポートに回っていくようなエコシステムがもっとうまく循環する仕組みを強化したいと思っています。
―スタートアップが誕生し成長していくうえで、大阪の強みとなるのは何でしょうか
大阪・関西には大学の数が多く、起業の環境が整っていると思っています。モノづくり企業も多いところですので、腰を据えて開発するには、いい環境です。
我々もしっかりとサポートさせていただいておりますので、ぜひ大阪に注目していただければと思っています。
松出晶子(まついで・あきこ)さん
2000年 関西大学卒
2004年、大阪市都市型産業振興センター入職
2015年、i-RooBO Network Forum事務局長
2022年、大阪産業局スタートアップ支援事業部次長
大阪府出身。
文:M&A Online
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