スタートアップの創出から成長へ「兵庫県」の支援事業について聞いた

兵庫県は「ひょうご神戸スタートアップファンド」「ひょうごオープンイノベーションチャレンジ」「スタートアップチャレンジ甲子園」など、数多くのスタートアップ支援事業に取り組んでいる。

関西には大阪府や京都府などスタートアップの支援に力を入れている自治体が多い中で、兵庫県としてどのような特徴を出そうとしているのか。

兵庫県産業労働部新産業課新産業創造班の足立公志主任に、支援の内容や経緯、これまでの成果、さらに今後の目標などを聞いた。

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三井住友銀行と一体運営

―さまざまな支援策がありますが、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。

兵庫県のスタートアップ支援は、創業する企業を増やすことを狙いに、創業、起業する方の初期費用を支援する起業家支援事業からスタートしました。2013年のことです。この取り組みを数年間続けていく中で、全国的にも早い2017年に、創業支援拠点「起業プラザひょうご」を開設しました。この時点では、スタートアップというよりは、個人事業主を含めた起業支援を中心としていました。

2020年ごろ、スタートアップと言われるような、急成長を目指す企業が注目され始めたこともあり、そうした企業や個人に集まってもらえる拠点として、現在の三井住友銀行神戸本部ビルの2階に「起業プラザひょうご」をリニューアルオープンしました。ここでさまざまな支援を行っており、現在、会員数は200ほどになっています。

―どのような支援をしているのですか。

起業プラザひょうごは、三井住友銀行のオープンイノベーション拠点「hoops link kobe」と一体運営の形を取っています。同行は、会員スタートアップの壁打ち(自身の考えや悩みについて相談し、それに対して意見をもらうこと)や、事業計画のブラッシュアップ、経営相談会などを実施しており、三井住友銀行の顧客企業と繋ぐ、マッチングなどにも協力していただいています。

兵庫県は、この場所でイベントやアクセラレーションプログラムなどを行っています。基本的にはスタートアップや県内企業向けの取り組みで、その中には会員以外の外部の方が参加できるものもあります。

起業プラザひょうご

起業プラザひょうご

―他にもさまざまな施策がありますね。

そうですね。2020年に、内閣府のスタートアップエコシステム(企業などのさまざまな組織がリソースを共有しながらスタートアップの創出と成長を支援する仕組み)のグローバル拠点都市として、京阪神が選定されたのを機に、いろいろと拡充しています。例えば「SDGsチャレンジ」はスタートアップの海外展開を支援するプログラムで、「ひょうごオープンイノベーションチャレンジ」は共創を目的に、県内企業とスタートアップのマッチングの場を提供しています。

「ひょうごTECHノベーションプロジェクト」は、県内市町の社会課題や地域課題に対して、スタートアップに課題解決案を提案していただき、実証実験をしようという取り組みです。

また「スタートアップチャレンジ甲子園」は、いわゆるビジネスプランコンテストです。2022年に大阪府と共同で始めた事業で、社会課題やSDGsをテーマに、中高生と、大学生から30歳までの年齢別の二つの分野で、グループや個人を対象にビジネスプランを募集しています。この取り組みでは金融機関や企業に、サポーターになってもらい、応援したい学生らを継続して支援しています。

スターとアップが160社増加し200社に

―こうした支援策の成果についてはどのように評価していますか。

2020年からの4年間で、おおむね設立10年以内のスタートアップの企業数が40から160程度増え200超になりました。神戸市や神戸大学、さらに民間機関でも、スタートアップ支援を行っていますので、さまざまなエコシステムプレイヤーが連携した取り組みの成果だと思っています。

スタートアップエコシステムのグローバル拠点都市に選ばれる中で、いくつかの目標を定めましたが、その一つがスタートアップの数でした。その点で進捗は順調だと言えます。

次はユニコーンのような、いわゆる高さを出していく必要があると思っています。数が増えても、地域の経済にどれだけ影響があるのかというと、やはり限定的なところもありますので、外貨を稼げるような世界に通用する企業を生み出すことも重要です。

ユニコーンを時価総額が1000億円を超える企業とするなら、現在は100億円超のスタートアップが県内には4社あります。これら企業にさらに成長してもらい、これら企業に続くスタートアップを支援していきたいと考えています。

モノづくりスタートアップを支援

―今後のスタートアップ支援策について、どのような取り組みを計画していますか。

集中的に支援をするような仕組みを考えています。成長が見込めそうなスタートアップを選び、メンター(支援者、助言者)や我々行政職員も一緒になって、資金調達や販路開拓などの集中的な支援をしていくことを検討しています。

また、兵庫県は他の都道府県に比べて製造業の割合が高い水準にあります。全国的にスタートアップは、サービス系が多いですが、兵庫県ではモノ作りのスタートアップの支援を強化することで、県内の製造業企業と、スタートアップが一緒に成長していけるような形を築いていきたいと思っています。

さらに兵庫県は、大学を卒業して就職のタイミングで、他府県に転出するケースが少なくありません。県内で活動してもらうために、アントレプレナーシップ(起業家精神)教育などに力を入れていますが、ビジネスプランを考えて終わりというケースも少なからずあります。このため、アクションをもう一つ起こしてもらえるような支援策として、企業の協力を得ながら、起業前にビジネスプランの実証実験を行えるような仕組みづくりも考えています。

文:M&A Online記者 松本亮一

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