East Ventures、ストライクと京都に共同オフィス開設

M&A(合併・買収)仲介大手のストライクと独立系ベンチャーキャピタル(VC)のEast Ventures(イーストベンチャーズ)は共同で、2024年6月10日に京都・四条烏丸にスタートアップ支援を目的としたオフィスを開設した。学生や若手起業家の活動拠点とするほか、スタートアップと事業会社の結節点として活用する。

名称はストライク側が「京都イノベーションオフィス」、East Ventures側は「Hive Kyoto」。メルカリ、グノシーなどに出資したことで知られるEast Venturesにとって、東京以外でスタートアップ支援施設を開設するのは初めて。M&A仲介とVCの共同拠点は極めて珍しく、同社の金子剛士パートナーは「こうしたVCとM&A仲介の連携は前例がないのではないか」と話す。

「京都をスタートアップの聖地に」相次ぐ拠点開設

「京都は伝統と新しい技術が融合し、世界に出て行く企業が生まれる素地がある。スタートアップの聖地にふさわしいと考えた」。10日のオープニングセレモニーで、ストライクの荒井邦彦社長は意義について語った。

京都イノベーションオフィス外観

京都イノベーションオフィスが入居する第15長谷ビル(京都市下京区)

M&A仲介は後継者不在に悩む中小企業の「事業承継型M&A」を主力にしているが、近年はスタートアップが事業会社と結びつくことで大きな成長を目指す「イノベーション型M&A」にも力を入れる。スタートアップのイグジット(出口)戦略として、新規上場(IPO)に加えM&Aという選択肢の普及を目指す。

East Venturesは京都を中心とした関西の学生や若手起業家へ、投資を進める。オフィスには初日の段階で、入居する投資先3社が決まっている。面積は約80平方メートルで、最大10社ほどが入居できるスペースがある。シード期(起業の初期段階)にあるスタートアップ同士で競い合い、事業が軌道にのれば数年で退去する、いい意味で新陳代謝が激しい環境を目指す。金子氏は「(入居する)第15長谷ビルを、スタートアップの聖地にしたい」と意気込む。

京都イノベーションオフィスの開設式

京都イノベーションオフィスの開設式で話すEast Ventures金子剛士パートナー(右)とストライク荒井邦彦社長(右から2番目)

ここ数年、京都にはシード期のスタートアップに投資するVCの進出が相次いでいる。グローバル・ブレイン(東京都渋谷区)は島津製作所や京セラといった大企業とファンドを設立するなど、京都での活動を活発化。同じくVCのSkyland Ventures(スカイランドベンチャーズ)も、B Dash Ventures(ビーダッシュベンチャーズ)と共同で、京都大学吉田キャンパス近くにオフィスを開設している。

首都圏に流出するイノベーション人材

京都市の資料によると、2022年度時点で市内には36の大学・短大があり、学生数は人口の1割を超える約15万人。18歳人口が減少し、大学進学率が横ばいの中、京都市の学生はむしろ増加傾向にある。一方で、首都圏に比べ就職先は限られ、京都府内の大学生が府内で就職する率は2割程度と若年層が定着しないことが課題となっている。

特にスタートアップについては、拠点となる施設や投資家、そして情報の多くが首都圏に一極集中している。京都にスタートアップ拠点を設けることで、京都だけでなく関西を拠点とする学生にとって、起業へのハードルを下げたい、という狙いもある。

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