規正法改正案成立見通しも後手後手の自民 ガバナンス能力に不安露呈

自民党が提出した派閥のパーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法改正案は19日、成立する見通しだ。ただ、日本維新の会の賛同を得るための「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)をめぐる交渉は実らず、公明党との調整も難航。政権与党の迷走ぶりはガバナンス能力に大きな不安を残した。

岸田文雄首相(自民総裁)は18日の参院政治改革特別委員会で、維新が求める国会議員に月額100万円が支給される旧文通費の改革について「早期に前に進めるという私の強い思いに偽りはない」と訴えた。ただ、維新は信頼するに足りないと判断し、衆院とは一転、改正案に反対することを決定。自民が目指した「与野党の幅広い合意」は土壇場で頓挫した。

自民と維新は5月31日の党首会談で、「旧文通費の使途公開と残金返納を義務付ける立法措置を講ずる」との合意文書を交わした。ただ、期日を明記しなかったため、「日程的に厳しい」(国対幹部)として今国会中の実現に消極姿勢を示した自民に対し、維新が「噓つき内閣」(馬場伸幸代表)などと反発を強めていた。

自民の森山裕総務会長と渡海紀三朗政調会長が水面下で維新幹部と接触し、「令和8年1月1日までの実現」を約束する案も提示した。ただ、維新側は「今国会中の実現」を譲らず、首相の18日の訴えもむなしく交渉は破談した。

党首同士の合意が覆される事態は極めて異例で、自民の閣僚経験者は「わが党も維新もガバナンスがめちゃくちゃだ」とぼやく。党務を預かる茂木敏充幹事長が矢面に立とうとした形跡はみられず、首相の党内基盤のもろさが露呈したとも言える。

自民は連立を組む公明との協議でも、パーティー券購入者の公開基準額引き下げなどをめぐって意見が対立した。首相が最終局面で公明の主張の〝丸飲み〟を決めたことで落着したものの、本来は党幹部間で解決すべき課題だった。

改正案をめぐる維新や公明とのドタバタ劇は首相の「応援団不在」を浮き彫りにした。自民幹部は「首相を何が何でも支えようとしてきた人が離れ始めている。まずい」とつぶやいた。(竹之内秀介)

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