旧文通費改革 維新が「2段階方式」提唱 国会閉会中の前進狙う

日本維新の会が、看板政策である調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革を巡る戦略の見直しを迫られている。先の通常国会中に立法措置に向けた結論を得ることを目指していたが、自民党との交渉が不調に終わり、実現に至らなかったためだ。改革の2本柱と位置づける使途公開と残金返納の制度化を目指し、前者を国会閉会中に先行して実現する「2段階方式」を想定して与野党への働きかけを図る。

国会閉会中に議運委での決定を提唱

維新は、国会議員に月額100万円が支給される旧文通費の改革を目指し、馬場伸幸代表が5月31日、岸田文雄首相(自民総裁)と合意文書を交わした。しかし、通常国会中に立法措置の結論を得るという認識は自民側に共有されておらず、国会最終盤の6月17日に交渉は事実上決裂した。

通常国会中の取り組みが頓挫したことを受け、維新は新たな手順案をまとめ、遠藤敬国対委員長が山口俊一衆院議院運営委員長(自民)に提案した。

維新によると、使途公開に関しては、歳費などの支給規程を改める手法をとれば、本会議での採決を経ることなく実現できる。このため、国会閉会中に議運委員会での決定によって先行して実施することを提唱した。残金返納については次期国会で歳費法改正によって対処するとしている。

ただし、思い描く通りに事が進むとはかぎらない。

自民と立民にそっぽ向かれたら…

使途を明示する必要のない旧文通費は国会議員にとって使い勝手がよく、「第二の歳費」とも称される。とりわけ自民内に改革への慎重論が根強く、野党第一党・立憲民主党の一部にも後ろ向きな声がくすぶる。

国会対応を巡る協議は与野党の第一党による「筆頭間」で行われることが多いため、自民と立民にそっぽを向かれたら進展は期待できないのが実相だ。

手順案を示す相手として山口氏を選んだのは、旧文通費改革に向けた有識者意見聴取などを受け持つ立場にあることを踏まえたものだが、別の背景もある。山口氏は、通常国会会期中の関連法改正に意欲を示すなど、維新に寄り添った発信を重ねてきた経緯がある。

提案後、遠藤氏は「山口氏の思いは分かっている。ちょっと頭の体操でもしていただけたら」とあえて淡々と記者団に語り、強硬に検討を迫る雰囲気を抑えた。交渉の頓挫によって生じたわだかまりの解消を待ち、旧文通費改革を再び強く打ち出すタイミングを探る。(松本学)

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