維・国、広がる政権との距離 旧文通費、トリガー条項…自民と交渉も「見返り」なく

「政治とカネ」の問題などを巡って与野党が攻防を繰り広げた先の通常国会は、中小規模の野党の立ち位置の難しさが改めて浮き彫りになった国会でもあった。日本維新の会と国民民主党は、それぞれ看板政策の推進を図り自民党との交渉に臨んだが、いずれも頓挫した。折に触れて連立政権入りが取り沙汰されてきた両野党だが、通常国会で生じた不信感の高まりは今後も尾を引きそうだ。

払った代償大きく

維新は、国会議員に月額100万円が支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や残金返納の制度化を目指し、馬場伸幸代表が5月31日、岸田文雄首相(自民総裁)と合意文書を交わした。維新は通常国会中に立法措置に向けた結論を得ることを狙ったが、自民側にその認識は共有されておらず、国会最終盤の今月17日に事実上の決裂となった。

一方、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」凍結解除実現を掲げてきた国民民主は、自民、公明両党との間で政策協議を行った。国民民主は凍結解除のための法整備を昨年度中に行うべきだと訴え、首相に早期の決断を要求してきたが、2月6日の衆院予算委員会で首相が明言を避けたことから、玉木雄一郎代表が協議離脱を表明した。

維新と国民民主が払った代償は決して小さくない。

党首間合意の実現を背景に、維新は今月6日、自民提出の政治資金規正法改正案の衆院採決で賛成に回った。国民民主は、首相が凍結解除に関し自公国3党間で検討すると表明したことを受け、昨年11月24日、令和5年度補正予算案の衆院採決で賛成した。看板政策の推進という「見返り」を得られなかった以上、政権と対峙(たいじ)する立場にある野党としては大きな失点だ。

地に落ちた信頼感

国会対応を巡る協議は、与野党の第一党による「筆頭間」で行われることが多く、筆頭以外の野党が出る幕は限られている。維新と国民民主が、政策実現のためには政府・与党との協調も辞さない路線をとってきたのは、こうした力学を踏まえれば当然ともいえる。

両党と自民の関係が今後改善に向かう余地も否定はできないが、少なくとも「岸田自民」への信頼感は地に落ちている。

「万策が尽きている。もはやこれまで。内閣総辞職し、責任を持って仕事ができる総理にバトンを渡してほしい」

馬場氏は今月19日の党首討論で、首相に対して強い口調で「退場」を促した。(松本学)

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