年間賃料「5000万円」!? ゴルフ場の知られざる“借地事情”を調べてみたら運営に感謝の念が湧いてきた

ゴルフ場は、丘陵や山間部を切り開いた広大な土地につくられています。敷地は全てが私有地というわけではなく、周りの地権者から借り入れてコースに仕立てている区域も存在します。

地権者側の事情で土地を買わせてもらえないことがある

 ゴルフ場は丘陵や山間部を切り開いた広大な土地につくられており、非常に莫大な費用と手間をかけてコースが配置されています。また、実はゴルフ場の敷地はすべて運営会社が所有しているわけではなく、周りの地権者から借り入れている区域もあります。

多くのゴルフ場は借地と私有地が混在している 写真:PIXTA

多くのゴルフ場は借地と私有地が混在している 写真:PIXTA

 どうしてゴルフ場は敷地をすべて購入せず、借地としている場合があるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「ゴルフ場が建設される土地は、田畑や山林など人が居住していない場所全般が候補に挙がります。その中でも、ゴルフをプレーするのにちょうどいい広さや高低差に富んでいるか、高速道路の出入り口や鉄道の駅が近くアクセスが良好かなども加味されます」

「たとえば最終的に残った候補地が広大な牧場の跡地であれば、その土地をそっくりそのまま譲り受けることができます。一方、日本にある農地は所有者ごとに細かく区分されていることが多く、土地の譲渡に向けた交渉が随時実施され、了承を得た場所から順番に購入して開発を進めていきます」

「中には先祖代々にわたり、非常に長い間その土地を守り続けている地主も存在します。そこで、ゴルフ場はその土地の所有者の意向に従って『買う』のではなく『借りる』こととして開発の許可をもらい、私有地とつなげるような形でコースを造成していくのです」

「土地を買えないなら、該当する区域の開発を諦めるという選択肢も考えられます。しかし既にコース全体の設計が決まってしまっている場合は、土地の境界線に沿ってドッグレッグのホールをつくる、パー5を予定していたホールを急きょ短縮してパー3に改める、といった練り直しをする必要が出てきます」

 明らかに無理やり計画変更したことが分かるホールでは、コース戦略の幅もなくなって、結果的にゴルファーからの評価も下がってしまう恐れがあります。利用者に満足してもらえるゴルフ場をつくるには、賃料を支払ってでも十分な土地を確保しておきたいという思惑もあるようです。

 なかにはすべて自前で土地を持っているゴルフ場もありますが、借りている土地がある場合、1コース当たりの借地の割合は敷地全体の10〜20%であることが多いそうです。また、河川敷は国土交通省などが所有する「国有地」であるため、河川敷コースはほぼ100%借地で営業していることになります。

 都心に近ければ近いほど地割は細分化されていくので、山間部のゴルフ場よりも市街地から好アクセスのゴルフ場の方が、借地の割合が高くなるとされます。

借地を維持したり新たに獲得するのは一筋縄ではいかない

 さらに飯島氏は「ゴルフ場の敷地の中に借地が含まれていることで弊害が生じる場合もある」と話します。

「借地の割合が増えれば増えるほど地権者へ払う賃料は高くつくので、そのぶんゴルフ場側も集客力をアップさせたりコストを抑えたりしなければなりません。ゴルフ場が位置する場所や交渉結果にもよりますが、だいたい年間で5000万円前後は支払っているケースが多いでしょう」

「また交渉のタイミングによって土地を貸してくれるかどうかや賃料も変わってきます。たとえばゴルフ場の建設ラッシュとなったバブル期は土地の値段が高騰したものの、ゴルフ場側にもそれなりの財力がありました。地権者もゴルフ場開発を快く受け入れ、多額の収入を得ていました」

「時代が変わったことで、新しいゴルフ場が計画されるとしても借地交渉がかつてのようにスムーズにいく可能性は低いと思います」

 なかには地権者が何十人もいて、毎年のように全員と契約の更新などに関する会合をしなければならないゴルフ場もあるそうです。

 ラウンド中に私有地と借地の区別はほとんどつきませんが、多くのゴルフ場には誰かから「借りている土地」が存在します。ゴルファーにはあまり馴染みがない話ですが、快適なプレーの裏には、開発前から繰り返されてきた、ゴルフ場と地権者との話し合いの歴史があるのです。

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