トランプ氏「PGAツアーとリブゴルフの交渉を15分で解決できる」 “シンパ”デシャンボーだけでなくマキロイも「彼ならできるかも」!?
ドナルド・トランプ前大統領の返り咲きという結果に終わった米大統領選。多くのコースを所有する不動産王であり熱心なゴルファーでもあるだけに、欧米ゴルフ界は、これからどんな影響が現れるのか、固唾をのんで見守っている。
投開票直前にPGAツアーとリブゴルフについて問われ…
米大統領選はドナルド・トランプ勝利という結果になり、第2次トランプ政権発足を控えた米国には大きな期待と不安が混在している様子である。
そんな中、米ゴルフ界では投開票が行われた11月5日以前から「もしもトランプが勝ったら、ゴルフ界にはどんな影響がもたらされるだろうか?」という“もしトラ”話が、あちらこちらで取り沙汰されていた。
そして、投開票直前の3日には、まだ“出馬中の大統領候補者”だったトランプが、あるポッドキャストに出演し、分断が続いているPGAツアーとリブゴルフに関する質問に答えて、こんなことを語った。
「私ならPGAツアーとリブゴルフの交渉を15分で解決できる。でも、正直なところ、私はそれ以外のことに取り組もうと思っている。なぜなら、ゴルフよりもっと大きな問題が多々あるからだ」
ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢をはじめ、米国の大統領として取り組むべき問題や課題が山積していることは、どこからどう見ても明らかである。
しかし、そうは言っても、ゴルフと深いかかわりを持ち、ゴルフをこよなく愛するトランプゆえに、ゴルフ界に何かしらの影響をもたらすのではないかという見方や期待は、選挙前も選挙後も存在し続けている。
2023年6月にPGAツアーのジェイ・モナハン会長とPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)のヤセル・ルマイヤン会長が電撃的に「統合合意」を発表した際、トランプは「素晴らしい合意、素晴らしい発表だ。ゴルフ界が一つになることは素晴らしい」と喜んでいた。
そして今回、大統領選の投開票前にポッドキャストに出演し、「PGAツアーとリブゴルフの交渉を15分で解決できる」と豪語した際も、「ゴルフのツアーは一つであるべきだ。そして、そのツアーは世界のベストプレーヤーを擁するべきだ」と語っていた。
そんなトランプの頭の中には、もしかしたら、ゴルフ界やゴルフツアーの理想像がすでに描かれているのかもしれないと感じさせられた。
勝利演説で名前を呼ばれるほど共鳴するデシャンボー
大統領選の勝利確定後の11月6日、トランプは地元フロリダ州のパームビーチ・コンベンションセンターで勝利演説を行なった。
そして演説の途上でトランプが突然、一人のプロゴルファーの名前を口にし始めた。
「ブライソン・デシャンボーはどこだ? まだ球を打っているのか? ここへ向かっている途中なのか? ブライソンはどうした? どこにいる?」
勝利演説でいきなりプロゴルファーの名前が口にされたことにまず驚かされたが、演説会場に駆けつけていた大勢の群衆の中からハンチング帽を被ったデシャンボーが実際に現れたことにはさらに驚かされた。
トランプはデシャンボーを壇上に呼び寄せ、こう紹介した。
「みなさん、ブライソン・デシャンボーです。素晴らしいゴルファー、全米オープンチャンピオンです。私より、ほんの少しだけ飛ばすプレーヤーだ。ほんの少しだけ、だけどね」
フロリダ在住の有名ゴルファーには、タイガー・ウッズを筆頭にたくさんの選手がいる。だが、その中でなぜデシャンボーが記念すべき勝利演説の場に呼ばれたのか。
米ゴルフウイークによると、トランプは今年の夏、デシャンボーが主宰するユーチューブ・チャンネルのチャリティー企画に参加し、ともにラウンドしたとのこと。番組の再生回数は瞬く間に1170万回を超え(11月11日現在では1300万回超)、集められた寄付金25万ドルは「負傷兵プロジェクト」に贈られた。以来、2人は親交を深め、デシャンボーはトランプの最大級のサポーターになっているのだそうだ。
ゴルフ界で最もパワフルなロングヒッターと、奇跡のごとく大統領再選を果たしたトランプが“大の仲良し”になっていることは、ゴルフ界としては興味深い事実である。2人が今後も手を取り合えば、ゴルフ界にもたらす影響も最大級になりそうな予感が自ずと沸き上がってくる。
デシャンボーのリブゴルフへの移籍料は1億~1億2500万ドル前後だったと推定されている。そして、リブゴルフ移籍後の今年、全米オープンを制してメジャー覇者となったことで、リブゴルフにおけるデシャンボーの存在感や重要性は、これまで以上に高まっている。
そんなデシャンボーがリブゴルフあるいはPIFのアンバサダーとなって、PGAツアーとの交渉をまとめることをトランプに依頼する可能性もないとは言えない。
だからこそ、ゴルフ界はトランプ次期政権発足を目前に控えた今、一層、混沌としているのではないだろうか。
「大統領は、ゴルフよりもっと大きなことに集中しなければならない」
ところで、トランプ勝利がゴルフ界にもたらす影響は、もちろん欧州でも大いに取り沙汰されている。
先週のDPワールドツアー、アブダビHSBC選手権に出場したローリー・マキロイは、「私ならPGAツアーとリブゴルフの交渉を15分で解決できる」と言い放ったトランプ発言に対する自身の意見を英テレグラフにこう語っていた。
「トランプなら、そうできるかもしれないね。トランプの傍らにはイーロン・マスクも付いている。トランプ同様、世界で最も賢いマスクも加われば、きっと何かが変わるんじゃないかな」
しかしマキロイは、そう言った上で、「15分」というスピード解決を豪語したトランプ発言に、少しだけ釘を刺すこんな言葉も付け加えた。
「PGAツアーとリブゴルフの交渉は、外部から見れば大して複雑ではないように見えるのだろう」
それは、実際は複雑きわまりない交渉に直接的あるいは間接的に関わってきているマキロイの「コトは、そんなに簡単ではない。それだけは強調しておきたい」という本音だったのではないだろうか。
「でも、トランプはサウジアラビアともゴルフともグレートな関係を持っている。そして何より、トランプはゴルフを愛している。だから、たぶん彼ならできるんじゃないかなと思うけど、答えは誰にも分からない」
さらにマキロイは、トランプ自身の言葉を受けて、念を押すかのようにこうも付け加えていた。
「大統領は、ゴルフよりもっと大きなことに集中しなければならない」
その通り、大統領にはまずやるべきことが多々あるはずである。だが、トランプ次期大統領が公言通り、さまざまな問題を「2分」や「24時間」でスピード解決していくことができたら、もしかしたら、その先でゴルフ界のために時間を捻り出し、PGAツアーとリブゴルフの統合交渉を「15分で解決」することが、あるかもしれないし、ないかもしれない。
米ゴルフ界にも世界のゴルフ界にも、そんな期待と不安が入り混じり、今は混沌としている。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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