“最後のZOZO”は“最後の日本開催”にならずに済むか!? 円安で苦戦するスポンサー探しの見通しと囁かれた“リブ絡み”の噂とは?
日本で開催される唯一のPGAツアーの大会「ZOZOチャンピオンシップ」が閉幕。今年が契約最終年ということで、次のスポンサーはどこになるのか、果たして日本開催は継続されるのかに注目が集まっている。そんななか、囁かれる噂話には、思わず仰天してしまうものも……。
「グレッグ・ノーマンが習志野に来る!」という噂
日本で開催される唯一のPGAツアーの大会「ZOZOチャンピオンシップ」は、タイトルスポンサーのZOZOとPGAツアーとの6年契約が満了した今年が「最後のZOZO」となった。
来年以降、ZOZOチャンピオンシップに続く「ネクストPGAツアー大会」が開催されるのかどうか。開催されるとすれば、どのゴルフ場が舞台となるのか。
PGAツアーからの公式発表は現状では何もなく、発表がない分、ZOZOチャンピオンシップ会場のアコーディア・ゴルフ習志野CCでは「次の大会は神奈川方面のゴルフ場が内定している」「大会スポンサー候補は2~3社ある」「1社による冠は厳しそうだ」「不動産関係の会社が最有力」等々、さまざまな情報が飛び交っていた。
そんな中、大会関係者の間では、こんな噂も囁かれていた。
「グレッグ・ノーマンが習志野に来る!」
リブゴルフCEOを務めるノーマンが、いったい何の目的でPGAツアーの会場である習志野CCにやってくるというのか。
ある情報によると「ZOZOチャンピオンシップにブースを出しているアパレルメーカーとのつながりで習志野に来る」と言われていた。だが、それは表向きで「本当の目的は別にあるのでは?」とも言われていた。
結局、ノーマンの来日はドタキャンとなったそうだが、予定されていた来日の本当の目的は何だったのか。
リブゴルフと日本ツアー(JGTO)が「すでにコンタクトを取っている」「JGTO上層部の一部や選手会の一部が、ノーマンあるいはリブゴルフ上層部とリモートでミーティングを行っている」という情報もあり、今回はリモートではなく対面で日本ツアー関係者とのリアル交渉を行うつもりだったのではないかという見方もあるが、あくまでも現段階では複数の情報に基づく推測である。
参考までに、こんな仮定の話がすでに漏れ聞こえていることも、ご紹介しておきたいと思う。
もしもリブゴルフと日本ツアー(JGTO)がアライアンスを組んだら、どういうことになるのか。
現在、リブゴルフには4名1組のチームが13チームあるが、そこに日本人選手4名で構成される「チーム・ジャパン」が1チームだけ創設される話が、すでに具体化しているという。
リブゴルフのチームはいずれもフランチャイズ制で、各々が独自の施策を行って収益を上げることが前提とされているのだが、もしもチーム・ジャパンが創設されるのであれば、そこに投資しようと名乗りを上げている日本の投資家がすでにいるというあたりは、一体どうやってそうした情報を入手しているのか。やっぱり「蛇の道は蛇」なのだと感心させられる。
それにしても、リブゴルフは創設当初は「4名1組×12チーム=48名」という体制でキックオフしたのだが、昨年末にジョン・ラームが移籍し、「ラームのチーム」を新たに創設する必要性に迫られたことで、現在はチーム数が「13」に増えている。
そうなったことで、チームに属さない「遊軍」も増えるなど、創設当初より複雑な体制になりつつある。
そんな中、さらにチーム・ジャパンを作ったら、チーム数は「14」になってしまうのだが、ノーマンがすでに15チームまで増やすことを明言しているという情報もある。
どんどんチーム数が増え、リブゴルフの本来のシステムやフォーマットを変更していくことが、リブゴルフにとってプラスなのかマイナスなのかは、現段階では判断は難しい。だが、「ゴルフ大国」日本の選手を招き入れ、チーム・ジャパンが生まれることは、世界各国へのさらなるアピールという意味で、リブゴルフにとっては大きなメリットがありそうである。
「次なる大会に関する発表を近いうちにできたら……」
それでは、リブゴルフと日本ツアーがアライアンスを組んだら、それは日本ツアーの選手にとっては、どんなメリットがあると考えられるのか。
チーム・ジャパンに入ってリブゴルフで戦うことができるのは最大4名ということになり、日本ツアーのそれ以外の選手の戦う環境が今後どうなるのかが、とても気になる。
これも複数の関係者の証言に基づく仮定の話だが、おそらく日本ツアーの年間20数試合(今年は24試合)のうちの8試合前後が、リブゴルフの下部ツアーに位置付けられているアジアンツアーのインターナショナルシリーズに組み込まれ、日本ツアーの選手は、JGTO独自の大会とアジアンツアーに組み込まれたインターナショナルシリーズの大会の双方で戦っていくことになるのではないかと見られている。
近年、JGTOの試合数は減少傾向にあり、来年以降、さらに減る可能性も高いと言われている。そうなったときに、アジアで戦える大会が用意されていれば、日本ツアーの選手にとっては戦って賞金を稼げる場と機会が日本以外にも得られ、これは大きなメリットとなる。
だが、考えられるデメリットも、もちろんある。日本ツアーがリブゴルフと手を組み、直接的なアライアンスをアジアンツアーと組めば、日本ツアーからDPワールドツアーへ、そこからさらにPGAツアーへと昇っていくルート、つまり久常涼が通った道は途絶えることになり、ひいてはメジャー4大会へ出場するチャンスもほぼなくなると言っていい。
そして、日本ツアーの選手が海外で戦う場所はアジアンツアーとなる。その先で、わずか1枠を射止めてリブゴルフへ昇格できれば、その選手にとって世界における最終目的地はリブゴルフということになり、現状が大きく変化しない限りは、それ以上の広がりは期待できないだろう。
日本ツアーは試合数が減少傾向にあり、ギャラリーも激減しているが、リブゴルフもTV中継の視聴率は惨憺たるもので、そのあたりの苦境をどうやって打開すべきかと思案に暮れており、何かに苦戦しているという点はどちらにも共通している。
PGAツアーはどうかと言えば、多くのスター選手をリブゴルフに奪われたことで、近年はやはりTV中継の視聴率が低下しており、長年、ラスベガスの大会を支えてきたシュライナーズ・チルドレンズ・ホスピタルもタイトルスポンサー降板を発表したばかりだ。
「日本における唯一のPGAツアーの大会」だったZOZOチャンピオンシップも、次なるタイトルスポンサー探しに四苦八苦している様子で、PGAツアー・ジャパンのクリス・リー社長は「円安による影響にも対応していかなければ……」と表情は険しい。
それでも「次なる大会に関する発表を近いうちにできたら……」と切なる想いを口にしており、リブゴルフと日本ツアーの接近には、気を留めている様子も言及もない。
世界のゴルフ界は混沌としており、誰もがサバイバル合戦に勝って生き残ることに必死なのだ。
JGTOのみならず、日本のゴルフ界全体がこれまで以上に危機感を持って、世界のゴルフ界の現状と今後の可能性にしっかりと目を向けるべきときである。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
10/29 09:10
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