340万再生されたUSGAのルール解説動画とは!? 決して“ズル”じゃないお得な救済方法に目からウロコ
全米ゴルフ協会(USGA)が先月インスタグラムに投稿した、あるルールの解説動画がおよそ半月で再生回数340万回を超える大きな反響を呼んでいます。レジャーゴルファーの多くが知らないであろう、考えもしなかったであろう、その救済のルールを紹介。
左打ちが合理的なプレーの選択ならば、その場合に発生する「障害」からは救済可能
全米ゴルフ協会(USGA)が先月インスタグラムに投稿した、あるルールの解説動画がおよそ半月で再生回数340万回を超える大きな反響を呼んでいます。レジャーゴルファーの多くが知らないであろう、考えもしなかったであろう、その救済のルールを紹介。
そのルールというのは、規則16.1 「異常なコース状態(動かせない障害物を含む)」からの救済。
この救済は、腕前に関係なく、誰もがときどきお世話になっているはず。多くはカート道や「一時的な水」「修理地」からの救済ですが、「異常なコース状態」(ペナルティーエリアを除く)にボールが触れている、またはその状態の中や上にあるとき。もしくは、その状態がプレーヤーの意図するスタンス区域や意図するスイング区域の物理的な障害となるとき、プレーヤーは無罰の救済を受けることができます。
ただし、後者においては、プレーヤーが「明らかに不合理なクラブ、スタンスやスイングの種類、プレーの方向を選択することによってのみ、その障害が生じる場合」は救済の対象になりません。普通に考えて不合理、不自然なクラブの使用、スタンス、スイングの種類、プレーの方向を選択したとき、障害が発生するという場合は救済を受けることはできません。
しかし、逆にいえば、通常は異常なスイングやスタンス、プレーの方向でも、その状況では「明らかに不合理」ではない場合は救済が認められる、ということです。
そこで、冒頭に触れた全米ゴルフ協会のルール解説動画です。
そこでは、プレーヤー(右打ち)のボールが大きな木のすぐ右横に止まってしまいます。そこでプレーヤーは、左打ちで前に進めることを選択しますが、その場合、スタンスが横を走るカート道路にかかります。
この状況では、左打ちは「明らかに不合理」ではないので、プレーヤーはカート道路、つまり「動かせない障害物」からの救済を受けることができます。そのため、プレーヤーは左打ちのストロークが可能な「完全な救済のニヤレストポイントポイント」を決定し、同ポイントを基点に1クラブレングスの救済エリアに救済のドロップ。その結果、インプレーになったボールが右打ち可能であれば、そうすることができる、というルールが紹介、解説されています。
なお、このケースで「自分の腕前では、左打ちは無理で、右打ちで後方の広いスペースに出したい。でも、その場合、やはりスタンスがカート道路にかかる」というときも、それが合理的な選択であれば、同じく救済を受けることができます。
2023年の「アーノルド・パーマー招待」でJ・スピースが同様の救済
これと似た救済処置が2023年3月のPGAツアー競技「アーノルド・パーマー招待」の第2ラウンドで行われました。
救済を受けたのは人気プレーヤーのジョーダン・スピース。スピースは18番ホールのティーショットを大きく左に引っかけてしまいました。ボールはOBの「境界物」であるフェンスのすぐ手前に止まっていました。「境界物」はルール上の「障害物」ではなく、プレーの邪魔になっても無罰の救済を受けることはできません。
そこでスピースが選択したのは左打ちでした。ところが、その場合、スタンスは手前を走るカート道路にかかってしまいます。
そのため、スピースがルールオフィシャルを呼んで、救済を求めたところ、オフィシャルはそこでの左打ちは「明らかに不合理なストロークではない」と判断。カート道路の障害が避けられる救済エリアへのドロップを認めたのです。
結果、スピースはカート道路の手前(フェアウェイ側)に「完全な救済のニヤレストポイント」を決定し、ドロップ。そして、インプレーとなったボールを、次に右打ちでストロークしたのです。
この救済についてアメリカのゴルフメディアは、「問題は、カート道路がなかったら、プレーヤーはどのようにストロークするか、ということです。その状況では、カート道路がなかったとしても、左打ちを選択するのが妥当ならば、無罰の救済を受けることができます。そして、その結果による新しい状況では、プレーヤーは適切な方法でストロークすることができます」と解説しています。
R&A発行の「規則のオフィシャルガイド」の解説
スピースのケースと酷似した例がR&A発行の「規則のオフィシャルガイド」に書かれてあります。
「16.1a(3)/1 異常なストローク方法で障害物が障害となるときにも救済を受けることができる場合がある」という項目で、そこでは、
「例えば、ジェネラルエリアで、右利きのプレーヤーの球がホールの左側の境界物の近くにあったので、そのプレーヤーはホールに向けてプレーするために左打ちのスイングを行わなければならなかった。その左打ちのスイングを行うとき、動かせない障害物がそのプレーヤーのスタンスの障害となっていた。
この状況において、左打ちのスイングを用いることは明らかに不合理ではないので、そのプレーヤーはその動かせない障害物からの救済が認められる。
その左打ちのスイングについての救済処置が終わった後で、そのプレーヤーは次のストロークで通常の右打ちのスイングを用いることができる」と解説。
さらに続けて、
「その動かせない障害物がその右打ちのスイングについて障害となる場合、そのプレーヤーは規則16.1bに基づいてその右打ちのスイングについて救済を受けることができるし、あるいはその球をあるがままにプレーすることもできる」と記されています。
つまり、左打ちで行った救済のボールは右打ちでストロークできるし、その右打ちの際に再度、カート道路が障害になるときは、改めて救済を選択することもできるというわけです。
そこまでになるケースは滅多にないでしょうけど、その前段の処置=左打ちが合理的な選択であれば、そこで発生する「障害」からは基本的に救済を受けられる、ということは頭に入れて置くと良いでしょう。
11/08 10:10
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