お金でスコアは買えるのか!? 1本100万円超えもある“超高級パター”は何が違うの? クラフトマンに聞いてみた

「パターゴルフ」というアクティビティーがあるように、パターはゴルフの経験がない人にも比較的なじみ深いクラブといえます。しかし、なかには1本で数十万円もするような「高級パター」も存在するようです。

“職人の手作業”で作られる高級パターの世界

 パターはグリーン上でボールを転がすように打つことに特化したクラブで、飛距離を稼ぐためのウッドや残り距離に応じて複数の種類を使い分けるアイアンとは、全く異なる特徴を持っています。

1本100万円超え“超高級パター”の良さって? 写真:PIXTA

1本100万円超え“超高級パター”の良さって? 写真:PIXTA

 遊園地や公園などでも「パターゴルフ」と題したアクティビティーがあるためゴルフ経験がない人にもなじみ深く、ほかのクラブと比べて扱いが簡単に見えるかもしれません。しかし、なかには1本10万円以上という価格で売られている「高級パター」も存在します。

 では、ゴルフ用品店に普通に並んでいるパターと、手に入れること自体が困難なこともある高級パターには、どのような違いがあるのでしょうか。クラフトマン兼レッスンプロの関浩太郎氏は、以下のように話します。

「パターのヘッドには、ステンレスやアルミ合金などさまざまな種類の素材が使われています。高級クラスに分類されるパターには『ソフトステンレス』や『ジャーマンステンレス』と呼ばれる、あまり一般的ではない特殊な金属が用いられていることが多いです」

「一般的なパターは大量生産やコストカットを実現するため、ヘッド全体をかたどった型の中に溶かした金属を一気に流し込めば、ほとんど完成します。一方、フェース面に『ミーリング』という溝を掘る加工を施す高級パターは非常に手間がかかり、値段が跳ね上がる一因になっています」

「ゴルファーの中には、インパクトでボールが当たったときの感触である『打感』を重要視する人が多いです。フェース面にミーリングが施されているとボールとの接地面積が狭くなり、結果として軽く押し出しただけでボールが前に進んでくれるような、軟らかい打感で打つことができます。インパクト音も小気味良いので、見た目の美しさだけでなく、触覚や聴覚など五感で楽しめるのも特徴といえるでしょう」

 さらに、高級パターは「3D旋盤機」で1つの金属の塊(かたまり)から生み出されており、仕上げ作業まで全て職人の手によって作られています。ヘッド1つを削り出すだけでも5〜6時間を要し、細部の彫刻や組み立て、メッキ加工や塗装なども含めると、1本を完成させるのに1カ月かかることもあるといわれています。

高級だからといって、全ゴルファーにとってベストとは限らない?

 一般的に、1本5万円を超えるパターは「高級パター」と呼ばれています。その中でも、最高級として知られるパターブランド「スコッティ・キャメロン」は、高い品質と性能面から多くのプロゴルファーに支持され、100万円を超えるパターも存在しています。

 なお、関氏自身もクラフトマンとしてオリジナルパターを制作しており、およそ12万円で販売しているそうです。その一方で関氏は「高級だからといって、すべてのプレーヤーの要求に完璧に応えてくれるとは限らない」と話します。

「自分はレッスン生に『少なくともパターは3年、ウェッジは2年、ボールは1年同じものを使うように』と指導しています。パターやウェッジは自分でスイングの幅やボールの強さを調整しなければならないクラブです。要するに、自らの感触を頼りに打つ部分が大きいので、あまり違う性能のものをコロコロと乗り替えていると、感覚が狂って上達が難しくなります」

「特にパターは、打感・打音の好みが千差万別です。高級だからといって全てのプレーヤーにハマる訳ではなく、たとえ安物であったとしても、自分にとって最も打感・打音が良いと思ったものを使うのがオススメです」

 パターは決して「安かろう悪かろう」ではなく、本当に自分にフィットしたものを選ぶのが、スコアアップへの近道だといえるでしょう。

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