人気シャフト「ベンタス」シリーズ全6モデルの違いを解説 初代「ブルー」はカタログから外れる予定だった?

いま大人気のドライバーシャフトといえば「ベンタス」シリーズでしょう。しかし、種類が多いためどのモデルが自分に合うのか分からない人も多いと思います。今回は現在、国内で販売されているベンタスシリーズの違いを人気フィッターの石井建嗣(いしい・たけし)さんに聞きました。

 国内外問わず多くの男子プロが使用しているフジクラの大人気シャフトといえば「ベンタス」でしょう。ツアープレーヤーの厳しい要求に応えるために生まれたシャフトで、飛距離性能とコントロール性能が非常に高いレベルで共存しています。国内においては2020年発売の初代ベンタスブルーを皮切りに現状6種類のベンタスシリーズが発売されています。種類が多いため、どのモデルが自分に合うのか分からない人も多いと思います。今回は現在、国内で販売されているベンタスシリーズの違いを説明します。

初代「ベンタスブルー」はアマチュアに最も適したシャフト

ベンタスシリーズ (※初代「ブルー」以外)

ベンタスシリーズ (※初代「ブルー」以外)

 まず、ベンタスシリーズの歴史と種類ですが冒頭で話した通り、国内では20年に初代の「ベンタスブルー」が発売されました。翌21年に「ベンタスブラック」が、さらに22年に「ベンタスTRブルー」が発売されています。23年はやや変則的ですが「ベンタスTRレッド」と「ベンタスTRブラック」が同時に発売され、海外先行で展開するベンタスのTRシリーズが国内でもフルラインアップされました。そして今年、24年に「24ベンタスブルー」が発売され、現在は以上の6機種となっています。

 ここからは個々のシャフトについて話していきます。まず初代の「ベンタスブルー」はアマチュアゴルファーに最も適したシャフトと言えます。というのも60g台のSシャフト(以下6S)で振動数は259CPMと決して高すぎる数値ではなく、ほどよく手元がしなる中元調子は多くのゴルファーに好まれました。先端の剛性は高めのシャフトですが、この後に登場してくるベンタスTRレッドを除けば、全てそれ以上の先端剛性を持っているので、ベンタスシリーズで言えば決して捕まらないシャフトというイメージではありません。

 次に「ベンタスブラック」ですが、振動数は6Sで273CPMと先程のブルーと比べるとかなりハードな仕上がりとなっています。一般的なシャフトの6Xが275CPM前後なので、振動数だけで見ればX相当の硬さがあります。またカタログ表記は元調子と書いていますが手元も決して軟らかくなく、ほぼ“棒状”のシャフトと言えます。ハードヒッターかつ、スイング中にシャフトが動くのを嫌うゴルファーに好まれるシャフトです。

 続いて「ベンタスTRブルー」ですが、こちらは6Sの振動数が267CPMと前述したブルーとブラックの中間に位置するシャフトです。先端剛性はかなり高い仕様ですが、手元は比較的軟らかめに作られた中元調子のシャフトで、初代ベンタスブルーを全体的に硬くしたイメージです。

最新モデルが「24ベンタスブルー」

 次の「ベンタスTRレッド」と「ベンタスTRブラック」はどちらも振動数が272CPMとベンタスブラック同様、かなり硬めの仕上がりになっています。まずベンタスTRレッドですが、カタログ表記は先中調子ですが決して先端が軟らかいシャフトではありません。勘違いしてはいけないのが、あくまでもベンタスシリーズの中で最も先端が軟らかいというだけで一般的な先系のシャフトと比較すれば違いは歴然です。ちなみに手元部分の剛性はこのTRレッドが最も硬いので手元が硬いシャフトを好むハードヒッターが好んで使うイメージです。逆にTRブラックは中間から先端剛性がベンタスシリーズで最も硬く、とにかく左を嫌うゴルファーに向くシャフトと言えるでしょう。

 そして、今年発売されたのが「24ベンタスブルー」です。実はちょっとした裏話ですが、本当はこのシャフトの登場と同時に初代「ベンタスブルー」はカタログから外れる予定だったそうです。ただ、未だに初代のベンタスブルーを欲しいというゴルファーが多いことからカタログから外せずに、結果的に最新作は24年に発売された“24”ベンタスブルーというネーミングになったそうです。

 振動数は259CPMとまさに初代と同じ数値で、調子の中元という表記も初代と変わっていません。強いて変わったのは先端の硬さで、ここは初代よりも硬くしています。これは近年流行の高慣性モーメントヘッドに装着しても当たり負けや振り遅れを防ぐ設計で、分かりやすく言うと初代のブルーを現代版にアップデートしたシャフトといえます。初代がアマチュアゴルファーに最も適したシャフトといいましたが、近年の重めで高慣性モーメントヘッドを使用しているゴルファーはこちらのシャフトに移行する事でより結果を求められるでしょう。

 以上のことからも分かると思いますが、ベンタスシリーズは基本的にハードヒッター向けに作られています。また調子の表記なども鵜呑みに出来ないのが難しい点です。国内外問わず多くの男子プロが使っているからと安易に手を出すと、ただただ硬いシャフトという印象になる可能性もゼロではありません。それぞれの違いを知り、自分にとって最適なベンタスを見つけて欲しいですね。

【解説】石井 建嗣(いしい・たけし)

香川県丸亀市で「ゴルフショップイシイ」を営むクラブフィッター。フィッター界の第一人者である浅谷理氏に師事し、クラブ&パターフィッター、TPIインストラクター、ゴルフラボ公認エンジニアの資格を持つ。ゴルフはHDCP「9.9」の腕前だが、自身のプレーより他人のクラブを“診る”ことに喜びを感じる職人肌。出演するYouTubeチャンネル「ズバババGOLF」では軽快なトークで人気を集める。

ジャンルで探す