「トータル飛距離」だけ見ていてもダメ!? 「飛距離アップ」するための弾道測定データの基本的活用法

ヘッドスピードや腕前に関わらず弾道の高さに悩むゴルファーの中には、弾道計測器のデータの中身を正しく理解していない人も少なくありません。弾道測定器で表示される数値の中で、今回は「打出角」「スピン量」の項目に注目。その正しい読み取り方の基本をインドアゴルフレンジKz亀戸店・筒康博ヘッドコーチにレクチャーしてもらいました。

低打ち出し&低スピンで飛ばない人は入射角とインパクトロフトを確認

 高く遠くへドライバーショットを飛ばすためには、速いヘッドスピードでフェースの芯に当て、ボールの「初速」を上げればいい、ということは感覚的に分かっていることでしょう。

 そして、より飛ぶ弾道を得るためには、主に弾道高に影響を与える「打出角」と「スピン量」を最適化することも大切です。この点に関しては誤解しているゴルファーが多くいます。

弾道の「高い」「低い」を調整する際には、「入射角」「インパクトロフト」「スピンロフト」を理解しないと改善はできない

弾道の「高い」「低い」を調整する際には、「入射角」「インパクトロフト」「スピンロフト」を理解しないと改善はできない

 それもそのはずで、目視では弾道の「高い」「低い」くらいしか確認できず、そのショットが最適弾道で伸びのある球筋なのか分かりづらいからです。

 見えない部分を知るために、弾道計測器を練習時から使う習慣がプロ・アマを問わず定着してきたともいえます。今回は複合的な弾道解析ではなく「基本」を理解するために「弾道高」に重点を絞ってみたいと思います(左右の曲がりの要素は考えません)。

 弾道測定器で表示される「打出角」と「スピン量」は、「入射角」と「インパクトロフト」の項目の組み合わせによる「スピンロフト」に基づいた弾道法則の計算式によって出されます。弾道測定の方法にはメーカーによって「カメラ式」「レーダー式」などがありますが、基本的な弾道法則は同じです。

 ボールに当たる時のヘッドの「入射角」はアッパーになるほど「スピン量」は少なくなり、インパクト時の「ロフト」は少なくなるほど「打出角」が低くなります。

アイアンの飛距離が出る飛ばし屋は、低打ち出し&低スピン弾道がアッパーブローな「入射角」なのか、「インパクトロフト」が少ないのか、別々にチェックする必要がある

アイアンの飛距離が出る飛ばし屋は、低打ち出し&低スピン弾道がアッパーブローな「入射角」なのか、「インパクトロフト」が少ないのか、別々にチェックする必要がある

「入射角」と「インパクトロフト」の組み合わせ「スピンロフト」によって、打ち出されたボールにスピンがどれぐらいかかるのかが決まります。

 ハンドファーストインパクトで入射角が浅いショートアイアンがすごく飛ぶゴルファーに多いのが、ドライバーの弾道がイメージよりも上がらない症状。ドライバーであっても、ハンドファーストにインパクトするほど「ロフト」が少なくなり、アッパーブローの「入射角」になるほど「低スピン」弾道になってしまいます。つまりボールスピードの割に低い弾道になるわけです。

 弾道測定器の「最高到達点」や着弾までの「時間(秒)」をチェックしてみると、ゴルファーが求める最適なインパクトのために必要なスイングやクラブが見つけやすくなります。

3番ウッドより5番ウッドが飛ぶ人は「インパクトロフト」に原因あり

 ドライバーと同様に、フェアウェイウッドやユーティリティーで「3番よりも5番の方が飛ぶ」というアマチュアも多いと思います。

 基本的には、クラブが長くてロフトが少ないほどヘッドスピードがアップするため、番手による飛距離の逆転現象は「ないはず」です。

同じ「入射角」のインパクトでも、インパクトロフトが大きいほど「打出角」が大きくなり、「スピンロフト」も大きくなる

同じ「入射角」のインパクトでも、インパクトロフトが大きいほど「打出角」が大きくなり、「スピンロフト」も大きくなる

 ところが「インパクトロフト」が少なすぎるとキャリーに必要な「打出角」が得られないため、「5番の方が飛ぶ」というゴルファーが出現してしまうのです。

 例えば3番ウッドと5番ウッドはクラブ長さで「0.5インチ」、ロフトで「3度」ほどの違いしかありません。ヘッドスピードの違いよりもキャリーに必要な「インパクトロフト」が大きいクラブの方が現実的に「高く上がって飛ぶ」要素になります。

 パー5のセカンドショットで距離を稼ぎたい場合、ライや状況の見極めをして「ちゃんとボールが上がるか?」を考えてから番手を選んでみてください。

「入射角」を調整したいならインパクト直前のヘッドの高さに注目

「打出角」はクラブのロフトやハンドファーストの度合いで自ら調整することもきますが、「入射角」の調整をスイングで行うのは簡単ではありません。

 弾道測定器の存在理由でもありますが、「タメを作ってダウンブロー」や「右に体重を残してアッパーブロー」といったスイングの形と「ボールとヘッドの当たり方」を混同してしまうのは危険です。

「入射角」はインパクト直前のヘッドの高さで決まる。低い位置から当たるほどアッパーブローになり、高い位置から来るほどダウンブローになる

「入射角」はインパクト直前のヘッドの高さで決まる。低い位置から当たるほどアッパーブローになり、高い位置から来るほどダウンブローになる

 もし弾道計測のデータを見ながら「入射角」を調整するなら、スイングの形ではなくボールに当たる直前でのヘッドの高さに着目してみてください。

 例えばアッパーブローが強すぎてスピン量が少ないなら、「右足の前」あたりを通過する時にボールと同じ高さで「ヘッドが通るイメージ」を持つ。それだけでレベルブロー寄りに調整することができます。

 弾道計測は「ボールに聞いたヘッドの動き」でしかありません。スイングの形を気にする前に、まず自分のショットがどんな傾向なのかを確認してみるをオススメします。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

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