松山英樹が最終日4ホールで4打落とした“ケチの付き始め”!? ルール違反疑惑は何が問題とされたのか?

松山英樹(まつやま・ひでき)がプレーオフシリーズで初めて優勝し、PGAツアー通算10勝目となった「フェデックス・セントジュード選手権」。最終的に無事1位で終われたから良かったものの、12番からの4ホールで4打落とす大ピンチもあった薄氷の勝利でした。その“ケチの付き始め”と目されているのが、12番プレー中に競技委員から確認を受けた“ルール違反疑惑”です。いったい何が問題とされたのでしょうか?

松山がならしたピッチマークは「プレーの線上」?

 松山英樹がPGAツアーのプレーオフシリーズで初めて勝利した「フェデックス・セントジュード選手権」。最終日の松山は11番ホールまで危なげないプレーを続け、楽勝ペースでした。

 その雲行きが変わったのが12番です。そこから15番までの4ホールで瞬く間にスコアを4打も落とし、一時はトップの座を譲る展開になりました。

 ハラハラドキドキしながら見守るファンが「ケチの付き始め」と思ったのが、12番ホールのフェアウェイを歩く松山のもとに現れたオフィシャル(PGAツアーのチーフレフェリー、ゲイリー・ヤング氏)です。そこで話し合われたのは、7番ホールでの松山の処置にルール違反の疑いがあったこと。しかし、ビデオで確認した結果、違反はなかったと判断。そのうえで、本人に違反の意志がなかったことを確認に来たということでした。

 結局、松山は無事に勝利できたので「めでたし、めでたし」とはいえますが、違反が疑われた松山の処置とは?

最終日バックナインでの苦難があったからこそ喜びもひとしおだっただろう 写真:Getty Images

最終日バックナインでの苦難があったからこそ喜びもひとしおだっただろう 写真:Getty Images

 7番パー4、松山の第2打はグリーンをわずかに外れ、グリーン右横に大きなピッチマークを作った後、コレクションエリアに向って斜面をゆっくり下って止まりました。松山は、次の第3打アプローチの前に、グリーン手前に残ったピッチマークをならしたのですが、これが規則8.1a「ストロークに影響を及ぼす状態を改善するプレーヤーの行動」で禁止されている「プレーの線」の改善に当たるのでは? と疑念を持たれたのです。そして、ルールオフィシャルたちによるビデオ映像の検証が行われました。

 ゴルフには「コースはあるがままにプレー」という原則があり、プレーヤーは規則8.1で「次のストロークに影響を及ぼす状態」は保護される。逆にいえば、プレーヤーは次のストロークに影響するコースの状態を変えることはできないのです。

 オフィシャルの発表によれば、松山の処置に関して、さまざまなビデオ映像をチェックした結果、そのピッチマークは松山の「プレーの線」から右に3フィート(約90センチ)外れており、違反はなかったと判断したとのこと。

 一般アマチュアにとって、90センチは「プレーの線」の幅の中ですが、トッププロにとってはまったくの問題外でしょう。実際、そのときに松山の意図を確認したチーフレフェリーによれば、松山は「プレーの線に、まったく近くはなかった(Nowhere near)」と答えたそうです。そのため、松山はグリーン上のボールマークを修復するように、なんら躊躇することなく、そのピッチマークをならしたということです。

「プレーの線」の改善は原則禁止だが、ルール上可能なケースも

 上記、規則8.1では、そのプレーヤーの「プレーの線」の改善は、「止まっている球のライ」「意図するスタンス区域」「意図するスイング区域」、そして「球をドロップまたはプレースすることになる救済エリア」の改善とともに、原則的に禁止されています。

 ただし、プレーヤーのボールが止まったあとに、別の人や動物によって、(ストロークに影響を及ぼす状態が)悪化した場合は、プレーヤーは罰なしで元の状態に復元できます(規則8.1d)。プレーヤーは、ボールが止まったときのコース状態でプレーすることが規則で保護されているからです。

 松山のケースに即していえば、例えば松山の後にストロークした同伴プレーヤーのピッチマークが松山の「プレーの線上」に出来た場合、松山はその状態を修復できます。

 次のストロークの前から「プレーの線上」にあった不整地をならすことができるケースがもう一つ。

 プレーヤーがアゴの高いガードバンカー内から、ピン方向を狙わず、一旦後ろのバンカー外に出し、そこからバンカー越えでピン方向を狙うとき。このとき、プレーヤーは「プレーの線上」にあるガードバンカー内の砂をならすことができます。

 規則8.1b(9)、ならびに規則12.2b(3)で、「バンカーから球をプレーしてそのバンカー外に出した後でコース保護のために砂をならす」ことが認められているからです。プレーヤーの足跡やショット跡に限らず、コース保護のため、元からあった凸凹もならすことができます(R&Aのオフィシャルガイド 8.1b/5)。

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