衝撃映像! マキロイのシャフトが折れるも“乱暴な扱い”で交換できず… 一方で規定に疑問符の“気の毒パターン”も発生

先週のPGAツアー「BMW選手権」の最終日、クラブが損傷したにもかかわらず、その取り替えができなかった(しなかった)事例が2件相次いで起きていました。

腹立ちまぎれの自覚があったため交換を申請せず

 ゴルフでは、規則4.1a(2)「ラウンド中に損傷したクラブの使用、修理、交換」の規定で、「適合クラブがラウンド中に損傷した場合、クラブを乱暴に扱った場合を除き、プレーヤーはそのクラブを修理するか、他のクラブに取り替えることができる」として、通常にプレーする過程で損傷したクラブは、基本的に他のクラブへの取り替えが認められています。ところが、先週のPGAツアー「BMW選手権」の最終日、クラブが損傷したにもかかわらず、その取り替えができなかった(しなかった)事例が2件相次いで起きていました。

「BMW選手権」最終日をプレーするローリー・マキロイ 写真:Getty Images

「BMW選手権」最終日をプレーするローリー・マキロイ 写真:Getty Images

 最初の事例はローリー・マキロイ

 9番ホールでマキロイはドライバーのティーショットを引っかけ、ボールはフェアウェイ左サイドを流れるクリークの方へ。幸いボールはクリークには落ちず、そのすぐ手前に止まっていました。しかし、次のストロークは、シューズを脱いで、素足で小川のなかの石の上にスタンスをとることになりました。

 問題は、そのティーショットの後でした。ショットをミスした彼はティーペッグを拾い上げる際、ドライバーを杖のようにして、それを支えに前傾。すると、直後にシャフトがバキッ! 途中で大きな音を立てて折れてしまったのです。この瞬間をとらえた“衝撃映像”はSNS等で世界的にバズっています。

 同じような光景は2020年の「全米プロゴルフ選手権」の初日7番ホールでもありました。怪力のブライソン・デシャンボーがやはりティーショットをドライバーで放ったあと、ティーペッグを拾い上げようとドライバーに体重を預けて前かがみになった瞬間、シャフトがネックの部分でポキリと折れてしまいました。

 このときはクラブを乱暴に扱ったためではないとして、デシャンボーにドライバーの取り替えが認められました。

 しかし、今回のマキロイは……?

 マキロイも、ドライバーを単に不安定な体の支えにしたのであれば、オフィシャルに取り替えを申請したはずです。ところが、彼はそれをしませんでした。メディアによれば、マキロイ本人に「(フラストレーションを募らせて)クラブを乱暴に扱った」結果という自覚があったから、とのことです。

 実はマキロイには怒りをクラブにぶつけ、体重を預けてシャフトを曲げた“前科”があります。

 13年の「全米オープン」の最終日。11番ホールでグリーンを狙うショットをミスすると、怒りの余り、手に持っていた9番アイアンを地面に立て、そこに全体重を乗せてグニャと曲げたことがありました。そのときは、次の出場試合で「イライラしてやってしまったことで、正しい行動ではなかった」と謝罪しています。

フェースの亀裂だけでは「著しい損傷」とは言えない

 もう一つの損傷の主はマット・フィッツパトリックです。

 最終日、彼は1番から3連続バーディー。大変好調なスタートを切りました。ところが、4番ホールをパーとしたあと、ドライバーに異変を感じ、確認したところフェースに亀裂が走っていることが分かりました。

 同じ組でプレーするスコッティ・シェフラーは「今日は最初からいつものパフォーマンスではなかった。いつもより80ヤードほど飛んでいなかった」と、フィッツパトリックのドライバーのパフォーマンスが落ちていたと証言しています。

 そこで、フィッツパトリックは8番ホールでルールオフィシャルを呼び、ドライバーの取り替えを申請します。ところが、クラブの損傷具合を調べたオフィシャルは、ツアーのローカルルールが定める「著しい損傷」の基準を満たしていないと判断。クラブの取り替えを認めなかったのです。

 PGAツアーが採用する「ローカルルールひな型 G-9」では、クラブの取り替えは「クラブが壊れた、または著しく損傷した場合にだけ」と制限。

 その「壊れた」「著しい損傷」とは、「次の場合にクラブが『壊れた、または著しく損傷した』ことになる」として、クラブフェースについては「クラブフェースのインパクトエリアが目に見えて変形している(クラブフェースに傷が入っている、亀裂が入っているだけの場合を除く)」と規定。ひびが入っているだけでは「壊れた」状態でも「著しい変形」でもない、とされています。

 これにフィッツパトリックは納得しなかったのですが、仕方ありません。以降のホールはドライバーの代わりに3番ウッドを使用。8番以降の11ホールを4バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの1オーバーでプレー。結果、28位タイの成績で終わり、フェデックスカップ・ランキング40位で最終戦のツアー選手権(ランキング30位までの選手が出場)には進めませんでした。

 それにしても、フェースの亀裂だけでは取り替えは認められないこのローカルルールはどうなのでしょうか。プレーヤーのパフォーマンスを十分に発揮させない規定は、誰にもメリットはない。別の言い方をすれば、そこで取り替えを認めても、誰に対してもアンフェアではないと思うのですが。

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