ドジャースvsパドレスで起きた「投げ入れ事件」に喝!【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第135回
事件はつい先日、白熱を極めるMLBのポストシーズンで起きました。
ドジャース対パドレス。ドジャースの1勝で迎えたナショナルリーグ地区シリーズの第2戦は、初戦と同じくドジャースの本拠地・ロサンゼルスで行なわれました。この日、パドレスはダルビッシュ有投手が先発。ドジャース大谷翔平選手との大舞台での対決を楽しみにされていた方も多かったと思います。
日本人選手が多く在籍していることもあり、国内外の注目を集めたこの対戦は、同じナショナルリーグの西部地区に所属する、言わば同地区のライバル対決でもありました。ここ数年、ポストシーズンでも激しくやり合う両チーム。ライバル関係は年々熱を帯び、それに伴ってファンもヒートアップしている印象があったのですが、今年はついに大荒れ模様となってしまいました。
ことの発端は初回でした。パドレスがタティスJr.選手のホームランで先制したその裏。レフトを守るパドレスのプロファー選手がホームラン性の打球をキャッチします。グラブはスタンドの中にあり、ファンの手が交錯する中でスーパープレーを見せたプロファー選手は、一瞬捕球していないかのような素振りを見せます。しかし実はキャッチしていて、その後、飛び跳ねるような仕草で喜びをあらわにします。
6回、パドレスの攻撃。ドジャース先発のフラハティ投手としては、3対1と僅差のビハインド。ましてや何が起こるかわからないポストシーズン、先頭は絶対に出したくありませんでしたが、先頭打者のタティスJr.選手への3球目はデッドボール。
初回のホームランのあとツーベースを打ち、さらに4回にはランニングキャッチを見せ、攻守ともにポストシーズンで輝く"ミスター・オクトーバー"へのデッドボールでしたから、ベンチにはただならぬムードが立ち込めます。
故意なのか、故意ではないのか。人によって解釈は分かれるかもしれませんが、試合のキーマンへの1球により、試合はますます不穏さを増していきました。
その裏、守備についたパドレスの三塁手で、チームリーダー的存在でもあるマチャド選手がダグアウトにボールを投げ込んだことがさらに波紋を呼びます。ドジャースのロバーツ監督も臨戦態勢です。
ヒリヒリした10月のさなか、私ごとですが28歳になりました。みなさまいつもありがとうございます!
続く7回。初回にホームラン性の打球をキャッチしたパドレスのプロファー選手が、スタンドのドジャースファンにボールを渡します。それに対してドジャースファンは「要らない!」と言わんばかりに、グラウンドへボールを投げ返します。
これが引き金となり、あらゆる場所からボールが次々と投げ込まれ、球場は騒然。試合は10分ほど中断され、スコアブックを片手に中継にかじりついていた私も、思わず「もう......」とため息まじりに頭を抱えました。
ただ、異様な空気とも言えるなか、7回1失点見事なピッチングを見せ続けたダルビッシュ投手の集中力が強く印象に残りました。
中断のあいだ、日本のプロ野球でもたびたび起きる「投げ入れ事件」に思いを馳せていました。
1996年。王貞治さん率いる福岡ダイエーホークスは開幕から低調が続き、過激なヤジや横断幕が掲げられました。5月に行なわれた試合中には、なんとグラウンドに発煙筒が投げ込まれます。敗戦後には選手が乗るバスがファンに囲まれ、今度は生卵が飛んできました。かの有名な「生卵事件」です。
バスの中にいた王さんは、この非紳士的行為に対し、「球場にわざわざ生卵を持ってきて投げるなんてこんなに熱心なファンはいない。将来優勝したときに一番喜んでくれるのはああいう人たちなんだ。彼らのために野球をしよう」と選手に向かって話したとか。王さんの器の大きさには、どのエピソードを見聞きしても毎回驚かされますね。
「アニキ」「鉄人」の異名を持つレジェンド・金本知憲さんは、カープ時代に広島市民球場で外野を守っていると、スタンドからBB弾で打たれたとか。番組でご一緒していた小早川毅彦さんによると、この球場は虫が多かったり、ロッカーが狭かったり、内外野の芝がガタガタだったりと、選手には過酷な環境だったようですが、まさかスタンドにスナイパーがいたとは衝撃でした。
話は戻りますが、タティスJr.選手はボールを投げ込まれたことについて、「これがMLBのショーだ。ドジャースファンは俺たちが勝ってることで少し苛立っていてみたいだけどね。これはMLBのプレーオフ。すべての瞬間を楽しんでいるよ」と、王さん顔負けの貫禄コメントを残します。
激しいヤジを受けながらも、結果を残し続け、どこか楽しんでいる様子まで見せた25歳は、まさにスーパースター。これからも目が離せない選手です。
とはいえ、グラウンドに物を投げ込むなどの行為は、選手やスタッフの安全が脅かされてしまうので絶対にやめましょう。ポストシーズンは選手だけでなく、球場に訪れるファンの盛り上がりも見どころのひとつ。そのファンの熱さこそ、私がメジャーリーグを好きになったきっかけでもあるだけに、今回の一線を越えた行為にはとても悲しくなりました。
熱くなる気持ちはすごくわかる!けれど、燃やすのは闘争心だけであってほしいなと願うのでした。それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
10/11 12:00
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