【競馬予想】秋華賞は上位人気馬に隙がないものの、元ジョッキーは「前残り」への注意を促す

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――3歳「牝馬三冠」の最終戦、GI秋華賞(京都・芝2000m)が10月13日に行なわれます。同レースではどういった点が見どころになるのでしょうか。

大西直宏(以下、大西)秋華賞は、3歳牝馬たちの"成長"が顕著に表われるレースです。ここ数年の勝ち馬の多くは、春のGIオークス(東京・芝2400m)時と比較して、馬体重が10kg以上増えています。夏の間にどれだけ成長できたか、馬のパワーアップが問われる一戦だと見ています。今年も、パドックで各馬がどんな姿を披露するのか、とても楽しみです。

――近年、オークスからの直行ローテがトレンドになっていますね。

大西 そうですね。これは、秋華賞だけでなく、近年のシーズン序盤のGI全般での傾向と言えます。先のGIスプリンターズSでも、春からの直行で挑んできたルガルが勝利しています。

 秋華賞でも、2018年のアーモンドアイを皮切りに、クロノジェネシス、デアリングタクト、リバティアイランドらが、オークスからの直行ローテで戴冠を遂げています。このローテーションの利点は明確で、余計な消耗を避けつつ、時間をかけてじっくりと仕上げられること。オークスから直行してくる馬は、前哨戦での疲れを引きずることなく、余力を持って本番に臨んでくるため、結果が出やすいのでしょう。

――今年もオークス(5月19日)の上位2頭、チェルヴィニア(牝3歳)とステレンボッシュ(牝3歳)が直行ローテで参戦し、注目度も高いです。両馬の力関係をどう見ていますか。

大西 オークスでの走りを見れば、やはりこの2頭が3歳牝馬世代で一歩リードした存在であることは間違いありません。

 まずチェルヴィニアですが、GI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)で13着と大敗したあと、オークスで見事に巻き返して快勝。特にクリストフ・ルメール騎手との相性は抜群で、その騎乗からも自信がうかがえます。チェルヴィニア自身、持久力と瞬発力を兼ね備えたタイプで、京都の内回りコースでもその強さを発揮できるはずです。

 一方のステレンボッシュも非常に安定感があって、オークスでは僅差の2着でした。しかも「(スタート直後に)落鉄していた」という情報があるので、それを踏まえれば、チェルヴィニアとの力関係はほぼ互角と見ていいでしょう。内回り向きの器用さという点では、ステレンボッシュがやや上かな、という印象です。

 いずれにしても、秋華賞ではどちらかが勝つ確率がかなり高いと思います。

――オークス組で、ほかに注目すべき馬はいますか。

大西 GIIローズS(9月15日/中京・芝2000m)を完勝したクイーンズウォーク(牝3歳)は要注目です。春には見られた気性の荒さが夏を越して解消され、レースでも折り合いがついて直線の伸び脚が抜群でした。

 京都の内回りは直線が短いため、いかに早い段階で好位置を取ってレースを運ぶかがカギになりますが、クイーンズウォークの瞬発力が生きる展開になれば、「2強」に割って入る可能性は大いにあります。

――オークス上位の有力馬たちには隙がないような感じですが、もし波乱が起こるとしたら、どんな展開が考えられますか。

大西 京都の内回り・芝2000mは、直線が短く、先行馬が有利になることが多いです。もし上位人気馬が後方で牽制し合う展開になれば、前にいる馬がそのまま残る、ということが考えられます。

 僕自身、2003年の秋華賞で人気薄のマイネサマンサに騎乗。強気に逃げる競馬で僅差の5着に食い込みました。結局、人気のスティルインラブが三冠を達成しましたが、同馬を慌てさせることができたのは、内回りコースをうまく生かしたからこその結果だと考えています。

 その経験からも、この舞台では常に逃げ・先行馬には注意が必要だと思っています。

――今年、逃げ・先行馬で気になる"穴馬"はいますか。

大西 今年のレースでは、セキトバイースト(牝3歳)が逃げて、クリスマスパレード(牝3歳)やコガネノソラ(牝3歳)らがそのあとに続く隊列を想定しています。この3頭が先行するなら、ハイペースになることは考えにくく、淡々とした流れになれば、前残りも十分に考えられます。


古馬相手の重賞を制して秋華賞に挑むコガネノソラ photo by Sankei Visual

 なかでも注目しているのは、コガネノソラです。小回り向きの機動力があり、立ち回りが非常に上手な馬。前走のGIIIクイーンS(7月28日/札幌・芝1800m)では斤量51kgという軽量を生かせたのもありますが、古馬の重賞馬たちを抑えての勝利は評価に値します。成長力を示した、と言ってもいいでしょう。

 また、鞍上の丹内祐次騎手は今年、キャリアハイと言える勢いで勝ち星を重ねています。21年目のベテランにしてこれまでにGI勝ちはありませんが、今回はGI初制覇のチャンスがあると思います。モチベーションは相当高いはずです。

 彼はここまで大きなケガなどによって長期離脱することなく、コンスタントに多くの騎乗をこなしてきた努力家。同期の津村明秀騎手がこの春、悲願のGI初制覇(ヴィクトリアマイルのテンハッピーローズ)を収めたばかり。「今度は自分だ」という意識が強いのではないでしょうか。

 そんな鞍上の勝負気配も含めて、秋華賞の「ヒモ穴」にはコガネノソラを指名したいと思います。

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