食生活でわかる、5つのタイプ別《健康になる食事》日本人の腸内細菌は昔の3分の1に!腸活で常在菌を増やし、腸内フローラのバランスを改善

(写真提供:Photo AC)
日本人の腸内細菌の数は、昔に比べてなんと3分の1に減っていると言います。だからこそ、今ある菌を大事に育て、活用したいもの。最新の知見をもとに腸内の状況の調べ方、効果的な食材のとり入れ方を紹介します(構成=島田ゆかり イラスト=福井彩乃)

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あなたの腸年齢はいくつ?腸年齢チェックシート

種類は変えられないが菌の数は増やせる

長寿社会の今、全身の健康を左右する腸にますます注目が集まっています。こちらの記事で腸活による主な効果を紹介したように、腸の働きは消化吸収だけではありません。私たちは、腸内細菌の力を借りて生きているとも言えるでしょう。

ただ、日本人の腸内細菌は、食生活や生活環境の変化にともない、年々悪化しています。人間の腸には1000種100兆個の腸内細菌が棲んでいると言われていましたが、それは昔の話。今では、300種類30兆個ほどに減ってしまっているのです。

そもそも、どれだけの種類の菌が腸内に棲みつくかは、3歳までに決定します。まず、産道を通る時に母親から菌を譲り受ける。

その後、かつての日本では、大家族だったり、動物が身近にいたり、野山など自然の中で遊んだりできる環境にあったため、多種多様なものと触れ合い、さまざまな菌を獲得することができました。

しかし近年、核家族化が進み、自然の少ない環境で育つ人が増えたことで、得られる菌の種類が減少してしまったのです。

加えて、食の欧米化も大きく影響しています。野菜や魚中心のバランスのとれた和食を食べていた昔の人は、多様な腸内細菌を持っていました。しかし高カロリー・高脂質の牛肉や豚肉、脂質や糖分が多くなりがちなファストフードなどを日常的に食べるようになったことで、日本人が受け継いできたいくつかの腸内細菌は消滅したという報告も。

多様性が失われたことは、メタボリックシンドロームやアトピー性皮膚炎、糖尿病、うつ病などが急増した一因になっています。

いずれにしても、3歳までに獲得して定着した腸内細菌(常在菌)の「種類」を変えることはできません。けれど、腸活によって常在菌の「数」を増やし、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを改善することはできるのです。

そのためには規則正しい生活を送り、運動習慣を身につけつつ、食事内容を見直すことが何よりも大切。まずは自身の腸内環境の状態を知り、それに即した腸活をしていきましょう。

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日本人は5つのタイプに分けられる

日々の食事の傾向から、腸内環境を大まかに知る方法があります。約1800人の便を遺伝子解析したところ、普段の食生活から、日本人は下記の「5つの腸内細菌」タイプに分類できることがわかりました。

驚いたことに、タイプによって病気の発症リスクに特徴がみられたのです。

健康な人が多く該当したのは、「タイプB」と「タイプE」の2つ。どちらも食事のバランスがよく、腸内細菌が多様でした。「タイプA」「タイプC」「タイプD」は腸内環境のバランスが乱れており、このまま放置すれば、将来さまざまな病気になる可能性が高いというデータも出ています。

また腸内細菌のバランスを検査する実験で、食事内容を見直せばタイプを変えられることがわかりました。たとえば、Aタイプの人が食事に食物繊維を増やしたところEタイプに、Dタイプの人が甘いものを控えたらBタイプになるなど、4週間ほどで効果が表れたのです。

自分が何に該当するかは、1ヵ月間の食事内容を思い返して、どのタイプの食事が多かったかを目安に判断します。

腸内環境を知る方法はほかにもいくつかありますが、便の状態をチェックすることもその一つです。硬くてうさぎの糞のような「コロコロ便」や、固形物をあまり含まない液体状の「水様便」などさまざまですが、腸内環境がいい状態の時の便は、表面が滑らかでやわらかいソーセージ状です。臭いもあまりありません。

便が臭うのは、悪用菌が増えている証拠。日によって便の状態が異なるのは腸内環境が日々変化しているからですが、前日に食べた食物繊維の量に比例すると言われています。週3回、滑らかな便が出ていれば腸内環境が良好なサインです。

より厳密に知りたい方は、最近注目されている、少量の便を検査機関に送って調べる「腸内フローラ検査」をするといいでしょう。検査機関によって調査項目に差異はありますが、多くは有用菌と悪用菌のバランス、腸内フローラのタイプ、太りやすい体質かどうか、将来の病気リスクとの関連性などがわかります。費用は1万5000円~2万円台が主流です。

また、私が考案した「腸年齢チェック」も今の腸の状態を知る目安になりますので、ぜひ試してみてください。

あなたの食生活はどれに当てはまりますか?

【A】たんぱく質・脂質のとりすぎ

【A】たんぱく質・脂質のとりすぎ メニュー

【A】たんぱく質・脂質のとりすぎ

牛肉や豚肉など動物性たんぱく質をよく食べ、調理法は脂質が増えやすい揚げ物が多い。

また、野菜の摂取量が少ないのが特徴です。便の臭いが強い人は、このタイプかもしれません。

たんぱく質は豆や魚、鶏肉に置き換え、野菜や漬けものなど発酵食品をプラスしましょう。

●病気のリスクが──
 ・高血圧……約11倍
 ・糖尿病……約12倍
 ・心疾患……約14倍
 ※Eタイプを1とした場合の比率

【B】洋食バランス型

【B】洋食バランス型 メニュー

【B】洋食バランス型

主菜に肉類が多くても、主食は米で、サラダ、デザートにヨーグルトやフルーツなどと、炭水化物、脂質、たんぱく質の三大栄養素に加え、食物繊維のバランスがとれているケースです。

腸内細菌の種類が5つの中で最も豊富で、脂肪の吸収を抑える〈ヤセ菌〉や、炎症を抑える腸内細菌が多いのも特徴。

主菜は、「揚げる」以外の調理法がベターです。

【C】炭水化物のとりすぎ

【C】炭水化物のとりすぎ メニュー

【C】炭水化物のとりすぎ

野菜などの副菜をあまり食べず、おにぎり、うどん、パスタ、丼ものなど、炭水化物過多の食事が多い人はこのタイプ。

食物繊維が圧倒的に足りないため、腸内環境は悪化の一途です。

納豆やきんぴらごぼう、お浸し、サラダなどを加えて、食物繊維や発酵食品を意識して。

●病気のリスクが──
 ・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)……約12倍

【D】たんぱく質・脂質・ ショ糖のとりすぎ

【D】たんぱく質・脂質・ショ糖のとりすぎ メニュー

【D】たんぱく質・脂質・ショ糖のとりすぎ

ファストフードやお菓子、ジュースをよく口にしている場合が当てはまります。

腸内フローラが乱れていると、甘いものを欲するようになるという研究結果も。

動物性たんぱく質を控え、甘いものが食べたくなったら和菓子や果物に、ジュースは選ばずお茶に変更しましょう。

●病気のリスクが──
 ・炎症性腸疾患……約27倍
 ・機能性胃腸症(胃もたれや胃痛など)……約15倍
 ・糖尿病……約12倍

【E】和食バランス型

【E】和食バランス型 メニュー

【E】和食バランス型

ごはん、味噌汁、焼き魚、お浸しなど、和食の定番ともいえる献立は動物性脂質の摂取量が少なく、栄養バランスに優れた食事です。

納豆や豆腐、根菜、海藻類など、発酵食品や食物繊維をたっぷりとれる昔ながらの日本の食卓は、腸にとって理想のかたち。

ただし、献立に肉が増えるとAタイプに近づくので注意が必要です。

後編:有用菌を増やす食材はこちら

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