「ケリフ!」の大合唱…“性別騒動”乗り越え、女子ボクシング会場はホーム戦に【現地ルポ】
8月9日(現地時間)、パリ五輪女子ボクシング60キロ級の決勝が行われた。試合開始は23時前とあって、酒が入った観客も多かったのか、会場は大盛り上がりを見せていた。
22時半ごろ、スタジアムの扉を開けると、客席は満杯。女子60キロ級決勝の一つ前の試合が行われていた。
22時50分ごろ、いよいよ本日最後の試合である、女子60キロ級決勝が幕を開けた。誤審疑惑など、話題に事欠かない今大会において、最も物議を醸したのがこの種目だ。
「決勝に進出した、アルジェリア代表のイマネ・ケリフ選手の性別に関する問題が物議を醸しています。国際ボクシング連盟のクレムレフ会長が8月5日にオンラインで会見し、ケリフ選手のテストステロン値が男性並みに高いことから、『男性だ』と断言しているのです。
また、2023年の世界選手権では、詳細不明の性に関する検査で失格処分とされています。一方IOCは同選手を『女性』とし、判断が分かれている状態。2回戦では、イタリア代表のアンジェラ・カリニが開始46秒で棄権しました。『自分の命も守らなければならなかった』と棄権についてコメントしたことで、騒動に発展しました」(スポーツ記者)
多くの誹謗中傷が寄せられているケリフ。だが、選手入場のシーンになると、スタジアムは大歓声に包まれた。
「多くのアルジェリア人がパリまで駆けつけたようです。スタジアムのあちこちにアルジェリアの国旗が振られていましたから。ただ、歓声の中に少しだけブーイングが混じっているのも聞こえましたよ。
フランスとアルジェリアは、地中海を隔てた“お向かいさん”ですから、行き来がしやすい。だからか、会場はケリフへの応援一色になりました。試合中も『ケリ~フ!』の大合唱が響き渡っていた」(現地記者)
ケリフが対するは、中国代表の楊柳。終始ケリフが圧倒する試合運びで、3ラウンドが終了。判定でケリフの優勝が決まった。
レフリーがケリフの腕を掲げると会場は大盛り上がりを見せ、歓声で床が揺れるほどだった。
「対戦した中国人選手は、少しやりにくそうでした。あまりに会場が『ケリフのホーム』と化していたので……。競技によっては、勝敗が決した後に、両選手を讃える拍手が起こることもありますが、この試合ではそんなことはありませんでしたね」(現地記者)
騒動を乗り越えて掴み取った金メダル。ケリフの背中は、現地の観客が大きく押したのだ。
08/10 10:30
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