ドラフト“ロマン枠”候補9人を元ヤクルト編成部長が選ぶ…異色“二刀流”、巨人大勢、阪神伊藤将の“そっくりさん”、徳島に隠れていたもう一人の159キロ右腕

 いよいよ明日プロ野球ドラフト会議が開催される。関大の金丸夢斗投手、明大の宗山塁内野手ら大学ビッグ5と言われる5選手に人気が集まりそうだが、それ以外にも隠れた上位候補や可能性を秘めた異色の選手が目白押し。ファンの間で「ロマン枠」と呼ばれる指名すればおもしろい有力候補を“名将”野村克也氏の“参謀”として知られ、ヤクルトでは編成部長、阪神ではスカウトも務めた松井優典氏(74)に独自の情報と視点を元にリストアップしてもらった。

 アスリートタイプのスラッガー富士大の麦谷裕介も魅力

 大学ビッグ5や甲子園で活躍したスター候補だけではない。明日に迫ったドラフトでは、隠れた逸材や、異色の個性派候補が運命の瞬間を待っている。元ヤクルトの編成部長としてドラフトの指揮を執った松井氏がリストアップした「ロマン枠」候補は9人だ。
 松井氏が真っ先に名前をあげたのは、福岡大大濠高の“二刀流”柴田獅子。1m86、85kgの大型右腕で最速は149キロを誇り、4種類のスライダーを操る。同校OBであるオリックスの山下舜平大、阪神の浜地真澄と比較しても潜在能力はヒケを取らない。その一方で打者としても通算19発。大谷翔平を追う“二刀流”がプロでは成功していないが、その可能性を秘めた逸材だ。
「本人はプロでは投手1本で行くことを口にしているそうだが、スケール感で考えると左のスラッガーとしてのセンス、長打力に魅力を感じている。ドラフト上位で消えるだろう。入団する球団によるだろうが、どこまでやれるか二刀流に挑んでもらいたい」
 プロの世界で結果を残している選手の“そっくりさん”もいる。
 巨人のクローザー、大勢に投球フォームも球筋も瓜二つなのが、四国アイランドリーグPlusの徳島インディゴソックスに所属している右腕、中込陽翔だ。山梨学院高ー山梨学院大を経て今季から徳島でプレーしている変則のサイドハンド。最速は150キロで、今季43試合に登板しリリーバーながら8勝2敗2セーブで最多勝、防御率1.97の成績を残した。松井氏は「打者がタイミングをとり辛い。まだ20歳と若いが投球術を知っていてストレートとスライダーで三振が取れる。中継ぎですぐに使えそう。面白い存在」と評価。59回3分の1の投球回数を超える77三振を奪っている。
 独特のフォームで2021年、2023年と2桁勝利をあげた阪神の左腕、伊藤将司に似た“幻惑投法”でスカウトの注目を集めているのが富士大の左腕、佐藤柳之介だ。
 最速は148キロ。大学侍ジャパンの強化合宿にも呼ばれた。
「阪神の伊藤にフォームだけではなくストレートが動くところまで似ている。リリースポイントが見えにくいしピッチングのペースを知っている」と松井氏。
 そして今やドラフト候補の輩出大学のひとつとなったその富士大には、アスリートタイプの左のスラッガーの麦谷裕介がいる。1m80、83kgの大型外野手で昨年は広島のドラ1常廣羽也斗と阪神のドラ1下村海翔からホームランを打った。
 大学では通算44盗塁で、俊足&強肩&強打と3拍子揃い、松井氏は「身体能力が高い。逆方向にも打球が飛ぶのが魅力。総合力では青学大の佐々木泰よりも上」と評価した。
 野手で松井氏が、即戦力評価しているのが、早大の吉納翼。180m、87kgの右投げ左打ちのロマンあふれる長距離砲だ。東邦高では中日の石川昂弥の1年後輩で全国制覇。通算44本を打ち、早大でも通算13本で、特に今秋急成長して4本。9月29日の法大戦では、元中日、ロッテで活躍した吉鶴憲治を父に持つ同じくドラフト候補である吉鶴翔瑛のストレートを逆方向のレフトスタンドに運んだ。

 

 

 松井氏が評価するのは対応力だ。
「変化球待ちでストレートについていける。プロで成功する選手の条件の対応力がある。センター、逆方向に打球が飛ぶのもいい。肩が強くライトもできる。青学大の西川史礁を競合で逃したチームが外れ1位で指名するのではと見ている」
 将来が楽しみな素材型では豊川高のモイセエフ・ニキータの名前があがる。   1m82、87kgの左の外野手。超高校級のスイングスピードに加えてミート力もある。松井氏は「将来クリーンナップを任せる可能性のある素材。私がスカウトなら早実の宇野真仁朗、花咲徳栄の石塚裕惺よりもニキータを指名したい」と語るほど買っている。
 そして今ドラフトのもう一人の“最速男”も徳島インディゴソックスに隠れていた。大学ビッグ5の一人である愛工大の中村優斗の159キロが、今回のドラフト候補の中での最速とされているが、徳島の工藤泰成も今年8月に159キロを弾きだした。東京国際大では指名漏れしたが、徳島の1年でさらにパワーアップして課題の制球力もつき、今季は先発、救援でフル稼働、8勝1敗でリーグの最多勝を獲得している。「制球にバラつきはあるが、馬力は魅力。球威に関しては、阪神に昨年2位指名された椎葉剛より上。下位か育成で指名しておきたい」と松井氏。
 投手の隠れ1位候補としてリストアップした右腕は2人。日体大の1m86、85Kgの大型右腕、寺西成騎と、国学院大の1m80、80kgの同じく大型右腕、坂口翔颯の2人だ。寺西は最速153キロで縦スラ、フォークが武器。大学侍ジャパンにも選ばれている。
「バランスが抜群で大荒れしない。ストレートは糸を引く質。落ちるボールも制球できる」と松井氏。
 報徳学園出身の坂口は、国学院大では西武で今季10勝をマークし新人王の最有力候補となっている武内夏暉と共に1年の秋から主戦投手として起用された。最速は153キロでツーシーム、チェンジアップ、カットボール、スライダー、カーブと変化球も多彩。
「総合力では大学でナンバーワン。右肩を入れてくるので打者は見辛いし、カーブが大きくて緩急もつけられる」と松井氏。松井氏は、そこに素材型のロマン枠として神戸引陵高の最速153キロを投げる右腕の村上泰斗を付け加えた。
 果たして松井氏がリストアップした「ロマン枠」の9人は、どのチームから指名を受けるのだろうか。

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