Appleのモバイルブラウザに対する制限は革新を制限しiPhoneユーザーに利益をもたらす可能性のある新機能を妨げていると英国CMAが報告
イギリスの競争市場庁(CMA)が、モバイルブラウザに対するAppleの制限により、開発者のイノベーションが制限され、iPhoneユーザーに利益をもたらすはずだった機能の開発が妨げられているとの報告書を提出しました。CMAはAppleを調査することを検討しています。
CMA publishes provisional findings in Mobile Browsers and Cloud Gaming market investigation - GOV.UK
https://www.gov.uk/government/news/cma-publishes-provisional-findings-in-mobile-browsers-and-cloud-gaming-market-investigation
UK watchdog says Apple’s rules restrict iOS browser competition
https://www.engadget.com/big-tech/uk-watchdog-says-apples-rules-restrict-ios-browser-competition-201106359.html
報告書によると、CMAの独立調査グループによる調査の結果、Appleが設けているルールが理由でモバイルブラウザのイノベーションが制限されていることが判明したとのこと。具体的には、小規模なアプリ開発者の多くが「アプリストアを通じてアプリをダウンロードすることなくモバイルユーザーにアプリを提供する代替手段、プログレッシブウェブアプリ」を使いたいと考えているのにできないこと、他のブラウザ開発者が「iPhoneでウェブページを読み込みんだときに高速化する機能」等を提供したいと考えているのにできないことなどが挙げられています。
また、GoogleとAppleの間に収益分配協定が結ばれているせいでiOS上でのモバイルブラウザ市場で競争するための金銭的インセンティブが大幅に減少していること、GoogleとAppleがブラウザの選択肢をユーザーに表示する方法を操作し、自社の製品を最も明確または簡単なオプションとして表示できるようにしていることなども指摘されています。こうした大企業による慣行のために、小規模な開発者が不利な立場に置かれ、イノベーションも妨げられているとCMAは指摘しました。
今回の調査は、AppleとGoogleがモバイル端末のOS、アプリストア、ウェブブラウザなどを実質的に独占していることを明らかにした、2021年の市場調査を受けて行われたものです。今回の調査では「クラウドゲーム」についても調査され、AppleがクラウドゲームをApp Storeで提供することを一切認めていないことが懸念事項として浮かび上がりましたが、調査の過程でAppleがこの制約を緩めたため、CMAは「現状、当局が介入する必要はない」と暫定的に結論づけています。
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CMAの調査グループは、2025年に施行される新しいデジタル市場競争規則に基づき、CMA理事会がAppleとGoogleを優先的に調査するよう勧告すると暫定的に決定。CMAには、デジタル活動に関連した戦略的市場地位を有する企業を指定し、適切な介入を行う権限が与えられていますが、企業を指定するにはCMAが正式な調査を行わなければなりません。仮に調査グループの勧告を元にCMAが正式な調査を実施し、介入が成された場合、指定された企業は何らかの改善を行わなければなりません。
調査グループは「正式な調査の結果、指定と適切な介入が行われた場合、競争状況が改善され、より幅広い企業が投資、革新、成長できます。何百万人もの消費者が、より高速で安全なモバイルブラウザにアクセスできるようになります」と指摘。調査グループのマーゴット・ダリー委員長は、「ライバル企業が開発を進め、消費者に革新的な選択肢をもたらすことができれば、市場は最もうまく機能します」と述べました。
CMAは2024年12月13日まで暫定調査結果に対するコメントを募集しており、2025年3月に最終決定を下す予定です。
11/26 08:00
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